TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

一番星のキミに恋するほどに切なくて

一覧ページ

「一番星のキミに恋するほどに切なくて」のメインビジュアル

一番星のキミに恋するほどに切なくて

1 - 一番星のキミに恋するほどに切なくて

♥

108

2023年06月05日

シェアするシェアする
報告する

亮平

ある日の夕方、夕飯を作ろうと冷蔵庫を
開けると……。

亮平

「…………」

亮平

買い出し、し忘れちゃったなぁ……。
やけに見通しのいい、空っぽな冷蔵庫。
これは、買い出しに行かねば今日のご飯
が……。
開けた冷蔵庫を苦笑いで閉めて、昼から
眠っていた涼太さんを起こす。

亮平

「涼太さん!買い出しに行ってくるね」

涼太

「……俺も行く……。ひとりで行くな」

亮平

亮平

涼太さんはまだ寝ぼけているのか、壁に
ドカドカとぶつかりながら着替え始めた
大丈夫……なのかな、涼太さん。
僕も着替えをパッと済ませて、買い出し
リストを作る。

亮平

「……マヨネーズ……豚肉、卵……」

亮平

必要なものを紙に書き出していると涼太
さんがうしろから僕の手もとをのぞきこ
んできた。

わっ!!
涼太さん、近いよーっ!!

涼太

「……お前……そんな子供みたいな顔
して、案外しっかりしてるんだな」

亮平

僕の心の叫びには気づかずに、感心した
ようにつぶやく涼太さんに、僕は笑顔を
向ける。

亮平

「辰哉さんも照お兄ちゃんも料理が壊滅
的にダメで、必然的にね。
今だって涼太さんの食生活が心配だか
ら、条件反射で!」

亮平

そう言うと、涼太さんはバツが悪そうな
顔をした。

涼太

「まぁ、そうなるか」

亮平

どうやら思い当たる節があるらしい。

亮平

「涼太さんの健康は僕が守るからね」

亮平

笑顔で拳を握る僕を、涼太さんは困った
ような笑みで見つめていた。

涼太

「本当……俺のおふくろか」

亮平

困った顔の涼太さんに、僕は笑顔を向け
る。

亮平

「そのようなモノです」

涼太

「そこは、もっと他にあるだろ」

亮平

涼太さんは期待するような目で僕を見る

亮平

他に……他にってまさか!!

亮平

「お、およ……お嫁さん、とか……」

亮平

言っててはずかしくなり、涼太さんから
目をそらした。

涼太

「合格」

亮平

すると、涼太さんはそう言って、僕の頭
をポンポンとなでた。

え、ええっ!!
今のって、どういうこと?
僕が……お、お嫁さんになってもいいっ
てこと!?
もんもんしているうちに、涼太さんは
さっさと玄関に歩いていってしまう。
その答えは聞けなかった。

それから、涼太さんのうしろに乗せて
もらって近くのスーパーへ向かった。

亮平

「涼太さん、涼太さん!!」

亮平

着くと、棒立ちの涼太さんの腕を引いて
スーパーを回る。
僕には今、2つの使命がある。
無事に今日の買い物リストを買いおえる
ことと、涼太さんを守ることだ。
本当なら涼太さんを連れていきたくなか
ったけど……。
僕がひとりになるのを、心配するから。

おば様

「あの人、カッコイイわぁ」

おば様

「あの堅物(かたぶつ)そうな顔がいいわ
よねぇ」

亮平

き、きた!!
ワラワラと僕たちの周りに人だかりが
できる。
あぁ……やっぱり……。
おば様たちに涼太さんが狙われてる!!
涼太さんはというと……。

涼太

「くぁぁっ……眠い」

亮平

あくびをしながら僕についてくる。
……自覚なし?
これだけの好奇の目線に気がつかない
の?
あなたの身が危ないんですよ!!

亮平

「……涼太さんのバカァ」

涼太

「なんだ?」

亮平

涼太さんは「どうした」と言わんばかりに
僕を見つめる。

亮平

「さぁわ 、頑張って買い物するぞ!!」

涼太

「やけに気合い入ってるな……」

亮平

色んな意味で気合を入れる僕を、涼太
さんは不思議そうに見つめていた。

亮平

「……はぁ……」

亮平

買い物を終えた頃には、僕の体力は尽き
かけていた。
ため息をついて、涼太さんからヘルメッ
トを受け取る。

涼太

「疲れたか?」

亮平

涼太さんは心配そうに僕を見ている。
うん、色んな意味で疲れました。

亮平

「はは……」

亮平

苦笑いを浮かべて先ほどのことを思い出
す。
まるでハンターのような鋭い目線で、今
にも飛びかかろうとするおば様たちを
牽制(けんせい)するのは、どれだけ大変
だったことか……。
今日はよく寝られそうだなぁ。

涼太

「このあとちょっと倉庫に寄ろうと思う
のだが、体調が悪いならやめとくか?」

亮平

心配する涼太さんに、僕は首を振って笑
みを浮かべた。

亮平

「ぼくも……みんなに会いたい!」

亮平

すると、安心したのか、涼太さんも笑み
を浮かべる。

涼太

「……なら行くぞ」

亮平

そして、また涼太さんのバイクのうしろ
にまたがって、倉庫へと向かうことにな
った。

倉庫に着くと、ジェシーさん含め狼牙の
みんなが歓迎してくれた。

なんだろう……みんなといると、なんだ
か落ち着く。
辰哉さんや照お兄ちゃんとすごしたあの
空間も、僕は好きだった。
だけどその反面、どこかさびしさを感じ
ていた。
僕は本当の子供じゃないし、心の中では
僕を嫌っているんじゃないか……。
そんなことを考えていた自分がいた。
そんなこと、あるはずないのにね。

涼太

「……亮平、どうした」

亮平

ボーッとしていたせいか、涼太さんが
すぐ隣に座っていることに今気づいた。

亮平

「あ……涼太さんに、あらためて感謝
していたところなんだよ」

涼太

「なんだ、突然」

亮平

「僕……今すごく幸せ」

亮平

「涼太さんたちに出会えてよかったって
……そう思ったの」

亮平

涼太さんが、真っ暗だった暗闇から引き
ずりだしてくれた。
そして、僕にたくさんの幸せをくれる。

亮平

「僕、涼太さんに見つけてもらえて……」

亮平

「よかった……」

亮平

泣きそうになるのをこらえて笑うと、
涼太さんは優しく頭をなでてくれた。
そして、もっと、僕の頭を胸に引き寄せ
た。

涼太

「…俺も…お前を見つけたのが俺でよか
ったと思ってる」

亮平

そう言ってくれた涼太さんに抱きつく。
そっか、この出会いを、涼太さんも嬉し
いって思ってくれてるのかな?
だとしたら……すごくうれしい。
こんなにも、一緒にいて安心する。
たまにふいに向けられる笑顔に、体温に
声に、言葉にドキドキさせられる。
そんな感情に名前をつけるとしたら。

僕はたぶん……。

涼太さんに 恋 をしてしまったのだと思う

何度も背向けようとしても、ごまかせな
いくらいに育ってしまったのだと思った

亮平

「っ……」

亮平

そのとき、また貧血なのか頭がクラクラ
して、涼太さんに寄りかかってしまう。

涼太

「亮平、体調が悪いのか?」

亮平

心配そうな声に僕はコクンとうなずいた。

亮平

「このまま少し、眠りたい……な……」

亮平

ぼーっとする頭で涼太さんの体温を感じ
る。

なんて幸せなんだろう……。

涼太

「あぁ……そばにいてやる、ゆっくり
眠れ」

亮平

その低くて優しい声に、僕はそっと瞳を
閉じた。
何も言わずに抱きしめてくれていた涼太
さんの腕の中で、今だけはと、その幸せに
浸(ひた)るように眠った。

この作品はいかがでしたか?

108

コメント

2

ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚