サイレンの音に起こされたのか
夜中だというのに点々と明かりがつく
その中で、唯一暗い部屋があった
ちょっと休むだけのつもりだった
誰もいない、そう思っていたが
中にいたのは、 まるで眠れる森の美女のような
美しい娘だった
……
サイレンの音に包まれる中
死んだように眠り続けていた
(綺麗なお嬢さんだな…)
(それにしても呑気だな)
(さすがかこの騒音じゃ起きるはずだ…)
わぁっ!!!!!
…!!!
あははは
驚いた?
起きてたのか
そーよ、この音に起こされちゃったの
あなたのせいでしょ?
泥棒さん
……
あなた、現代のアルセーヌルパンって呼ばれてる人でしょ?
私1度会ってみたかったの…!
そう言うと、キラキラと目を輝かせてこちらを覗く
お嬢さん
俺、不法侵入者なんだけど…
怖くないの?
全然?
むしろその逆
わくわくしちゃう!
じゃあもし、君を殺してこの家の中のものを全て盗んだとしても
許してくれるかな?
もちろん!むしろ大歓迎よ
でも無理だと思うよ
…?
だって、私が叫んだら今すぐ護衛が駆けつけてくるもの
それに、この部屋から出ようとすればアラームが鳴って部屋全体がロックされるの
すぐ捕まっちゃうわよ
ははっ
嘘はだめだよ
俺がこの部屋に入った時、アラームなんて鳴らなかったぞ?
嘘じゃないわよ
私は「外に出たら」って言ったの
誰がそんなことしたんだ?
お父さん
いつから?
2年前
ママが死んだ時
お父さんはいつもママを殴ってた
それに耐えかねたママは死んだの
そしたら今度は私のとこに
君も、暴力を…?
ううん
いっぱいいっぱい犯された
彼女は他人事のように淡々と話した
確かに、俺に殺される方が マシかもしれない
私ね、夢があるの
雨の中を歩きたいの
それから真夜中にピクニックしたり、朝に花火したり…
どれも大抵の人ならできることだった
もし俺がこのまま逃げたとして
彼女はこの先も犯され続ける
残酷だ
そんな彼女に同情してしまった
それ、全部やりに行こうか
…え?
お嬢さん、この俺に盗まれてくれますか?
……
彼女は今にも泣きそうな顔で頷いた
ジリリリリリリリ
辛い過去というのは
最強の武器と化す
お兄さんっ!!
ん
ありがとう
ちゅっ
はぁ、素敵
スリルとサスペンスだわ…!
ははっ
スリルとサスペンスねぇ…
彼女の過去に同情したのもあるだろう
なによりこの過去を持ちながら、 何にも縛られない
この彼女の生き様に
強く惹かれてしまった






