「俺らはどこにいても」〖渡辺翔太編〗

〖渡辺翔太編〗

＿パラレルワールド＿

~渡辺side~

薄れていく意識の中……

血の匂いと

涼太の匂いがほんの少し

いつもなら香水の香りがするのに

寝坊したから？

寝坊して香水つけ忘れるなんて

涼太らしくて

虚しくて……

苦しくて……

あの一瞬の絶望を

俺は一生忘れない

ねぇ

何で俺を庇ったの？

病院じゃないっぽい……実家？

いや、知らないなこの天井

あの出血量……

俺でさえめちゃくちゃ出血してたのに

庇った涼太は……

どこに？

どこに……？

ここはどこだ？

なんで母さんが……

身体は全然痛くないし

涼太は生きてる……

夢……？

何だっていい

お前が無事でいてくれた

それだけでいい

デビューというプレゼントをくれた

大好きなあの人がそうだったように

何故か涼太は少し困った顔をした

あれなんか、涼太若返った？

んなわけねぇか

まだ状況掴めてないし

何が起きたかよく覚えてないけど

あれは事故だよな……？

学校？

こいつは何を言ってるん？

知ってるよ

こんな時にそんな冗談言うはずないって

アラサーだぞ？

いやいやいつの話してんの？

野菜は健康に大事だぞ……

いやそうじゃなくて

もしかして頭でも打った……？

は？

何なの……

いやまあ確かに

涼太若返ったかななんて思ったけど

頼むからこんな冗談やめてくれ

夢なら覚めてくれ

言われるがままに歯を磨いたら

制服渡された……

こんなに手の込んだドッキリないわ

見覚えある制服

大好きだった制服

小中は別々だった俺ら

だからこそ特別だったこの制服

大切な思い出

大切な青春時代の記憶のひとつ

どうしよう

どうしよう

俺は過去にでも戻ってきてしまったのか

でもこの家は知らない

涼太の家が隣みたい

でも実家は隣じゃなかったはずだ

涼太家とは親交あったけど

……ここは一体どこだ？

家出てただただ涼太の後を追うけど

見覚えのない風景ばかり

どうして……？

事故に遭ったから？

こうゆうよなんていうんだ……？

なんとか世界……

頭のいい阿部ちゃんなら知ってるよな

すぐ解決の糸口を探せるだろ

ヲタクの佐久間なら

こんな時でもバカ騒ぎしそう

楽しむんだろうな

ふっかは何だかんだ頼りになる

どうにでもなりそう

照なら柔軟に対応するかな

目黒は生きる力が強い

根性の人柄さえありゃどうとでもなるだろ

康二は人見知りするが

人の良さでどんどん友達増やすかな

ラウールなら頭もいい

そんであの愛され力……

涼太なら……

落ち着く為に考えたのはみんなのこと

みんなに会いたい

ふっかに……照に

阿部ちゃんに……佐久間に

目黒、康二、ラウール……

ぼおーっと考えたら

16歳の涼太に声かけられた

気づいちゃうよな……

涼太だもんな

ずっと一緒にいるからこその

違和感

ふっかが好きなSFみたいに

過去にでもきてしまったか

でも過去じゃなくて

ここは知らない世界

心配性なとこ

やっぱり涼太だな

飲み込み早いとこも

涼太なのに

初めて知る感覚が怖い

俺は涼太を知り尽くしてるはずなのに

俺はお前を知らないんだ