晴翔
贄となった人間は死ぬこともなく、また、贄となった人間がどうなったのかを知る者もいない。
かつて世界に存在した人間たちがどうなったのか、それを知る者は誰一人としていなくなる。
それを聞いてもなお、お前を愛していると叫ぶクレイに対し、もう遅いのよと 涙を流すエリーナだったが……。
その後、帝国領内では戦争によって生まれた数々の悲劇と憎悪の連鎖により、 次々と怪物が生まれ出るようになったのだという。エリーナはその怪物たちを狩るために、帝国の兵器として利用され続けていたのだ。
そんな彼女を救い出すため、クレイ達はついに帝国中枢へと足を踏み入れる。
だが、そこに待ち受けていたのはあまりにも過酷な現実だった――。
そして、ついに二人は再会を果たす。愛しい人の腕の中で息絶えるその時まで、 エリーナは幸せそうな笑顔を浮かべていたという。
しかしその直後、突如として出現した巨大な魔力反応とともに、エリーナが変貌した。
全身から触手を伸ばしながら襲いかかってくる彼女に、クレイ達はまったく歯が立たなかった。
さらにそこへ、皇帝を名乗る男が現れて言う。
「そいつは我輩の最高傑作である『魔弾』の一つ、『死なない化け物』だ。
そやつの体には、我が同胞の血肉が使われている。貴様らごときに救えるものか!」
マーロックの叫びと同時に、まるでそれに応えるかのように呪砲が再び火を噴いた。
着弾した瞬間、凄まじい光とともに、周囲の大地を吹き飛ばしていく。
あまりの衝撃に、全員が吹き飛ばされそうになる。
なんとか耐えて辺りを見回すと、目の前に広がる光景を見て絶句してしまう。
そこにあったはずの街は跡形もなく消え去り、巨大なクレーターが出来上がっていた。
「こんな……ひどい……」
誰かがつぶやく声が聞こえる。
「これが戦争というものよ。自分の命を守るためには、他人を踏みつけにしてでも生き残る必要がある。そうしなければ、自分が死ぬことになるからだ。そういう覚悟がなければ、戦場に立つ資格はない。お前たちもいずれわかる時が来るだろう。そのときまで精々生き延びるがいい。フハハハハッ!!」
高笑いを残して、マーロックは姿を消してしまった。
その後、残された者たちは言葉少なにそれぞれの家
