晴翔
贄となった人間は死ぬこともなく、また、贄となった人間がどうなったのかを知る者もいない。
かつて世界に存在した人間たちがどうなったのか、それを知る者は誰一人としていなくなる。
それを聞いてもなお、お前を愛していると叫ぶクレイに対し、もう遅いのよと 涙を流すエリーナだったが……。
その後、帝国領内では戦争によって生まれた数々の悲劇と憎悪の連鎖により、 次々と怪物が生まれ出るようになったのだという。エリーナはその怪物たちを狩るために、帝国の兵器として利用され続けていたのだ。
そんな彼女を救い出すため、クレイ達はついに帝国中枢へと足を踏み入れる。
だが、そこに待ち受けていたのはあまりにも過酷な現実だった――。
そして、ついに二人は再会を果たす。愛しい人の腕の中で息絶えるその時まで、 エリーナは幸せそうな笑顔を浮かべていたという。
しかしその直後、突如として出現した巨大な魔力反応とともに、エリーナが変貌した。
全身から触手を伸ばしながら襲いかかってくる彼女に、クレイ達はまったく歯が立たなかった。
さらにそこへ、皇帝を名乗る男が現れて言う。
「そいつは我輩の最高傑作である『魔弾』の一つ、『死なない化け物』だ。
そやつの体には、我が同胞の血肉が使われている。貴様らごときに救えるものか!」
マーロックの叫びと同時に、まるでそれに応えるかのように呪砲が再び火を噴いた。
着弾した瞬間、凄まじい光とともに、周囲の大地を吹き飛ばしていく。
あまりの衝撃に、全員が吹き飛ばされそうになる。
なんとか耐えて辺りを見回すと、目の前に広がる光景を見て絶句してしまう。
そこにあったはずの街は跡形もなく消え去り、巨大なクレーターが出来上がっていた。
「こんな……ひどい……」
誰かがつぶやく声が聞こえる。
「これが戦争というものよ。自分の命を守るためには、他人を踏みつけにしてでも生き残る必要がある。そうしなければ、自分が死ぬことになるからだ。そういう覚悟がなければ、戦場に立つ資格はない。お前たちもいずれわかる時が来るだろう。そのときまで精々生き延びるがいい。フハハハハッ!!」
高笑いを残して、マーロックは姿を消してしまった。
その後、残された者たちは言葉少なにそれぞれの家
かつて世界に存在した人間たちがどうなったのか、それを知る者は誰一人としていなくなる。
それを聞いてもなお、お前を愛していると叫ぶクレイに対し、もう遅いのよと 涙を流すエリーナだったが……。
その後、帝国領内では戦争によって生まれた数々の悲劇と憎悪の連鎖により、 次々と怪物が生まれ出るようになったのだという。エリーナはその怪物たちを狩るために、帝国の兵器として利用され続けていたのだ。
そんな彼女を救い出すため、クレイ達はついに帝国中枢へと足を踏み入れる。
だが、そこに待ち受けていたのはあまりにも過酷な現実だった――。
そして、ついに二人は再会を果たす。愛しい人の腕の中で息絶えるその時まで、 エリーナは幸せそうな笑顔を浮かべていたという。
しかしその直後、突如として出現した巨大な魔力反応とともに、エリーナが変貌した。
全身から触手を伸ばしながら襲いかかってくる彼女に、クレイ達はまったく歯が立たなかった。
さらにそこへ、皇帝を名乗る男が現れて言う。
「そいつは我輩の最高傑作である『魔弾』の一つ、『死なない化け物』だ。
そやつの体には、我が同胞の血肉が使われている。貴様らごときに救えるものか!」
マーロックの叫びと同時に、まるでそれに応えるかのように呪砲が再び火を噴いた。
着弾した瞬間、凄まじい光とともに、周囲の大地を吹き飛ばしていく。
あまりの衝撃に、全員が吹き飛ばされそうになる。
なんとか耐えて辺りを見回すと、目の前に広がる光景を見て絶句してしまう。
そこにあったはずの街は跡形もなく消え去り、巨大なクレーターが出来上がっていた。
「こんな……ひどい……」
誰かがつぶやく声が聞こえる。
「これが戦争というものよ。自分の命を守るためには、他人を踏みつけにしてでも生き残る必要がある。そうしなければ、自分が死ぬことになるからだ。そういう覚悟がなければ、戦場に立つ資格はない。お前たちもいずれわかる時が来るだろう。そのときまで精々生き延びるがいい。フハハハハッ!!」
高笑いを残して、マーロックは姿を消してしまった。
その後、残された者たちは言葉少なにそれぞれの家
晴翔
贄として捧げられた以上、自分の意思ではもうどうすることも出来ない。
それならばいっそこのまま自分を殺せと懇願するが、3人の反応は……。
(中略)
やがて3人はエリーナの意思に反して儀式を始めてしまう。しかしそれは 決して彼女を死へと追いやるものではなかった。
3人は彼女の肉体と魂を切り離すのではなく、「うつろわざるもの」と化した エリーナの心の奥底にある「本当の気持ち」を呼び起こそうとしたのである。
その結果、彼女はようやく自らの想いを伝えることができた。
その時初めて、自分がずっと前から3人を好きになっていたことを自覚した。
だがそれでもなお、エリーナはマーロックの元へ戻ろうとする。
そこに、エリーナへの愛ゆえに自らを犠牲にしようとする3人がやってきたことで、 ようやく彼女は自らの意志を取り戻す。
3人を逃がそうとするが、それを止めたのはニーナだった。
このままでは自分も助からないかもしれない、だから一緒に行こうと言う。
そして4人は脱出のための船へと向かうが、そこで待ち受けていたのは、やはり あの女だった。
帝国からの追っ手がついに現れた。その数、実に10万を超える大軍。
それを迎え撃つため、まずはエリーナが単身で敵中へと飛び込んでいく。
一方その頃、脱出した4人はなんとか敵の目をかい潜り、船の所まで辿りついていた。
しかし、すでに船は起動済み。今さら引き返すことはできない。
4人は、せめてもの抵抗として船を爆破することにした。
だが、いざ実行しようとしたとき、突如として船が爆発を起こしてしまう
それならばいっそこのまま自分を殺せと懇願するが、3人の反応は……。
(中略)
やがて3人はエリーナの意思に反して儀式を始めてしまう。しかしそれは 決して彼女を死へと追いやるものではなかった。
3人は彼女の肉体と魂を切り離すのではなく、「うつろわざるもの」と化した エリーナの心の奥底にある「本当の気持ち」を呼び起こそうとしたのである。
その結果、彼女はようやく自らの想いを伝えることができた。
その時初めて、自分がずっと前から3人を好きになっていたことを自覚した。
だがそれでもなお、エリーナはマーロックの元へ戻ろうとする。
そこに、エリーナへの愛ゆえに自らを犠牲にしようとする3人がやってきたことで、 ようやく彼女は自らの意志を取り戻す。
3人を逃がそうとするが、それを止めたのはニーナだった。
このままでは自分も助からないかもしれない、だから一緒に行こうと言う。
そして4人は脱出のための船へと向かうが、そこで待ち受けていたのは、やはり あの女だった。
帝国からの追っ手がついに現れた。その数、実に10万を超える大軍。
それを迎え撃つため、まずはエリーナが単身で敵中へと飛び込んでいく。
一方その頃、脱出した4人はなんとか敵の目をかい潜り、船の所まで辿りついていた。
しかし、すでに船は起動済み。今さら引き返すことはできない。
4人は、せめてもの抵抗として船を爆破することにした。
だが、いざ実行しようとしたとき、突如として船が爆発を起こしてしまう
晴翔
贄となった人間は不死となり、その肉体は傷ついても瞬時に再生する。
そのため、戦場においてエリーナは「不死身の魔女」と呼ばれ恐れられたらしい。
もう誰にも止められない。止めようとしても無駄なのだ。ならばいっそここで 殺してくれないか。そうすればもうこれ以上苦しまずに済む……。
だが、それを聞いてなおクレイは諦めなかった。そして、まだ終わっていない、 と励まし続けた。するとその時、ユンナが現れた。
彼女は、エリーナにかけられていた呪法は自分が解いたと告げた。だから もう大丈夫だ、と。その言葉を聞き、クレイ達三人は喜びの声を上げる。
しかし、ユンナが次に発した言葉で一転絶望に包まれることになる。
なぜなら、エリーナは既に死んでいるからだ―――。
その後のことは、ほとんど覚えていない。
ただ、泣き叫ぶクレイを抱き締めながら、自分も泣いていたことだけは記憶している。
気が付けば、三人揃って荒野の中に佇んでいた。
あれほどまでに強かった敵は消え去り、自分たちを苦しめてきた帝国の兵も一人たりとも残っていない。
そして何より、目の前にはあの時と変わらない姿で微笑むエリーナがいる。
三人とも涙が止まらなかった。やがて落ち着きを取り戻してから、改めて彼女の顔をまじまじと見つめる。確かに姿形は変わってしまった。だがその瞳の奥にはかつての彼女の面影があった。
もう二度と以前のように話すことはできないかもしれない。でもこれからもずっと一緒にいてもいいんだよ、と伝える。すると彼女は微笑みながらありがとうと言ってくれた。そしてそのまま眠りについた。
それからしばらくして目を覚ました彼女に、まずは何か食べよう、と声をかける。しかし返事はない。どうしたのかと思いもう一度問いかけると、ようやく反応を示してくれた。やはり意識はまだはっきりしていないようだ。少しの間眠っていたせいだろう。とりあえずパン粥を作ってあげてみる。ゆっくりと咀噛しながら少しずつ飲み込んでいく。ひと口食べるごとに元気になっていっている気がする
そのため、戦場においてエリーナは「不死身の魔女」と呼ばれ恐れられたらしい。
もう誰にも止められない。止めようとしても無駄なのだ。ならばいっそここで 殺してくれないか。そうすればもうこれ以上苦しまずに済む……。
だが、それを聞いてなおクレイは諦めなかった。そして、まだ終わっていない、 と励まし続けた。するとその時、ユンナが現れた。
彼女は、エリーナにかけられていた呪法は自分が解いたと告げた。だから もう大丈夫だ、と。その言葉を聞き、クレイ達三人は喜びの声を上げる。
しかし、ユンナが次に発した言葉で一転絶望に包まれることになる。
なぜなら、エリーナは既に死んでいるからだ―――。
その後のことは、ほとんど覚えていない。
ただ、泣き叫ぶクレイを抱き締めながら、自分も泣いていたことだけは記憶している。
気が付けば、三人揃って荒野の中に佇んでいた。
あれほどまでに強かった敵は消え去り、自分たちを苦しめてきた帝国の兵も一人たりとも残っていない。
そして何より、目の前にはあの時と変わらない姿で微笑むエリーナがいる。
三人とも涙が止まらなかった。やがて落ち着きを取り戻してから、改めて彼女の顔をまじまじと見つめる。確かに姿形は変わってしまった。だがその瞳の奥にはかつての彼女の面影があった。
もう二度と以前のように話すことはできないかもしれない。でもこれからもずっと一緒にいてもいいんだよ、と伝える。すると彼女は微笑みながらありがとうと言ってくれた。そしてそのまま眠りについた。
それからしばらくして目を覚ました彼女に、まずは何か食べよう、と声をかける。しかし返事はない。どうしたのかと思いもう一度問いかけると、ようやく反応を示してくれた。やはり意識はまだはっきりしていないようだ。少しの間眠っていたせいだろう。とりあえずパン粥を作ってあげてみる。ゆっくりと咀噛しながら少しずつ飲み込んでいく。ひと口食べるごとに元気になっていっている気がする
晴翔
贄となっても死ねない体となり果ててしまった自分を救えるのはマーロックのみ という結論に達したエリーナは、自らを贄にしてでもマーロックを呼び出すと決意する。
それを知ったニーナは、エリーナがこれ以上苦しまなくて済むように自ら命を絶とうとするが、それを見かねたクレイによって阻止されてしまう。ならばせめて自分の魂だけでも連れて行って欲しいと懇願するが、それもまた拒否される。
だが、クレイが去ったあともエリーナの命を奪うことはできなかった。結局ニーナは自らの手で 愛する人を葬ることはせず、しかしそれでも諦めきれずにただひたすら祈り続ける。
そしてついに呪砲が放たれてしまう。
呪砲の直撃を受けてなお無傷だったエリーナだが、呪砲によって生じたエネルギーは そのまま周囲の空間を歪ませてエリーナを中心に半径100mほどを吹き飛ばし、 さらにそこにいたすべてのものを跡形もなく消滅させた。
そしてその場に残ったのは傷一つない姿のエリーナだけだった。
一方その頃。
エリーナの身に起きたことを知らず、ただひたすらエリーナとの再会を信じて 進んでいたクレイたち一行だったが、突然目の前に現れた光の柱を見て驚愕する。
光の中より現れたのはエリーナ。しかしその様子は明らかにおかしかった。
髪の色も目つきも表情さえも変わっており、何よりもその体からは禍々しいオーラが溢れていた。
「エリーナ……なのか?」
「はい。クレイ様、お久しゅうございます。」
口調まで変わっている。
「一体どうしたんだ!?その姿は!」
「ああ、これは呪砲による反動でこうなったのか……。それにしても、なんとも痛ましい姿じゃのう。」
「まあそういうことだね。でも私は気にしていないよ。それより、君たちはどうしてここに?」
「あんたがいなくなったんで探しに来たんだ。それと、帝国にいるっていう帝国の兵器を止めるためにな。」
「そっか、やっぱり君は優しい子だなぁ。それで、他の皆はどこにいるのかな?」
「ここには俺とニーナとリリアだけだ。あとは全員バラバラになってる。」
「そっか、みんなそれぞれ頑張ってるんだな。私も早く合流してあげたいな。」
「ところで、これからどうするつもりなんだ?」
「そうだねぇ、まずは帝国にある兵器を止めて、それからまた旅を続けようと思う。」
「そうか。それなら、俺たちと一緒に来ないか?
それを知ったニーナは、エリーナがこれ以上苦しまなくて済むように自ら命を絶とうとするが、それを見かねたクレイによって阻止されてしまう。ならばせめて自分の魂だけでも連れて行って欲しいと懇願するが、それもまた拒否される。
だが、クレイが去ったあともエリーナの命を奪うことはできなかった。結局ニーナは自らの手で 愛する人を葬ることはせず、しかしそれでも諦めきれずにただひたすら祈り続ける。
そしてついに呪砲が放たれてしまう。
呪砲の直撃を受けてなお無傷だったエリーナだが、呪砲によって生じたエネルギーは そのまま周囲の空間を歪ませてエリーナを中心に半径100mほどを吹き飛ばし、 さらにそこにいたすべてのものを跡形もなく消滅させた。
そしてその場に残ったのは傷一つない姿のエリーナだけだった。
一方その頃。
エリーナの身に起きたことを知らず、ただひたすらエリーナとの再会を信じて 進んでいたクレイたち一行だったが、突然目の前に現れた光の柱を見て驚愕する。
光の中より現れたのはエリーナ。しかしその様子は明らかにおかしかった。
髪の色も目つきも表情さえも変わっており、何よりもその体からは禍々しいオーラが溢れていた。
「エリーナ……なのか?」
「はい。クレイ様、お久しゅうございます。」
口調まで変わっている。
「一体どうしたんだ!?その姿は!」
「ああ、これは呪砲による反動でこうなったのか……。それにしても、なんとも痛ましい姿じゃのう。」
「まあそういうことだね。でも私は気にしていないよ。それより、君たちはどうしてここに?」
「あんたがいなくなったんで探しに来たんだ。それと、帝国にいるっていう帝国の兵器を止めるためにな。」
「そっか、やっぱり君は優しい子だなぁ。それで、他の皆はどこにいるのかな?」
「ここには俺とニーナとリリアだけだ。あとは全員バラバラになってる。」
「そっか、みんなそれぞれ頑張ってるんだな。私も早く合流してあげたいな。」
「ところで、これからどうするつもりなんだ?」
「そうだねぇ、まずは帝国にある兵器を止めて、それからまた旅を続けようと思う。」
「そうか。それなら、俺たちと一緒に来ないか?
晴翔
贄として捧げられた自分が死ねば呪いは解けるだろうが、もうすでに帝国の一部 となってしまって抜け出すことも叶わないため、ここで皆と一緒に死ぬしかない というエリーナだった。
一方その頃、帝都では皇帝が玉座の上で息を引き取ろうかというところまできていた。
帝国最後の日を目前に控え、帝国最強の騎士であるロトバルデと皇帝との会話が 交わされるが……。
「父上、お疲れでしょう。そろそろお休みになってくださいませ」
「ふっ、余はまだ老いてはおらぬぞ!」
そう叫びながら部屋に飛び込んできたのは皇帝だった。
「陛下……?」
「ふん、あの小娘め、よもやこのような罠を仕掛けておったか。しかしな、余がいつまでも 昔のままと思うでないわ! 貴様らには今ここで死をもって償ってもらおうぞ!!」
そう叫ぶと、皇帝は腰に差していた刀を抜き放つ。
「あれは魔導刀!?」
皇帝の持つ刀を見てクレイが声を上げる。
「知ってるのか、クレイ?」
「ああ、昔読んだ文献にあったんだ。なんでも持ち主が望めば望むほど切れ味を増すっていういわくつきの武器だよ。僕も実物は初めて見るけどね。でもまさかあんなものを持ち出してくるなんて」
「なるほど、そりゃ厄介だな。で、どうする?」
「とりあえず陛下を止めるしかないだろうね。ニーナさんとウェンディちゃんは陛下を止めてくれ。僕はエリーナを連れて逃げる。エリーナが自分で逃げないなら僕が連れてくよ。」
そう言うなり、クレイはエリーナを抱え上げる。
「まあ待て。それではお前たちが危ないだろう。私が引き受けようではないか。」
そう言って前に出たのはニーナだった。
「じゃあお言葉に甘えて……頼んだよ。」
そう言って二人はその場を離れる。
「ふむ、やはり見た目通り軽いな。だがそれだけではないようだな?」
「
一方その頃、帝都では皇帝が玉座の上で息を引き取ろうかというところまできていた。
帝国最後の日を目前に控え、帝国最強の騎士であるロトバルデと皇帝との会話が 交わされるが……。
「父上、お疲れでしょう。そろそろお休みになってくださいませ」
「ふっ、余はまだ老いてはおらぬぞ!」
そう叫びながら部屋に飛び込んできたのは皇帝だった。
「陛下……?」
「ふん、あの小娘め、よもやこのような罠を仕掛けておったか。しかしな、余がいつまでも 昔のままと思うでないわ! 貴様らには今ここで死をもって償ってもらおうぞ!!」
そう叫ぶと、皇帝は腰に差していた刀を抜き放つ。
「あれは魔導刀!?」
皇帝の持つ刀を見てクレイが声を上げる。
「知ってるのか、クレイ?」
「ああ、昔読んだ文献にあったんだ。なんでも持ち主が望めば望むほど切れ味を増すっていういわくつきの武器だよ。僕も実物は初めて見るけどね。でもまさかあんなものを持ち出してくるなんて」
「なるほど、そりゃ厄介だな。で、どうする?」
「とりあえず陛下を止めるしかないだろうね。ニーナさんとウェンディちゃんは陛下を止めてくれ。僕はエリーナを連れて逃げる。エリーナが自分で逃げないなら僕が連れてくよ。」
そう言うなり、クレイはエリーナを抱え上げる。
「まあ待て。それではお前たちが危ないだろう。私が引き受けようではないか。」
そう言って前に出たのはニーナだった。
「じゃあお言葉に甘えて……頼んだよ。」
そう言って二人はその場を離れる。
「ふむ、やはり見た目通り軽いな。だがそれだけではないようだな?」
「
晴翔
私にはもう帰るべき場所がない、だから一緒に行こうと言うエリーナに対し、 クレイたちはそれでも帰るべきだと告げる。だがそこに現れたのは……。
「なあ、あんたらは一体何なんだ?」
突如声をかけてきた男。年の頃はまだ二十代前半といったところだろうか。
男はまるで値踏みでもするかのように一行を見つめていた。
「俺の名前はレイヴン。見ての通りただの冒険者だよ。もっとも今はちょっとした理由があって、君たちを助けようとしているんだけどね。……っと、そっちのお嬢さんにははじめましてかな?」
「えっ!? あっはい! あの、助けてくれてありがとうございました!」
レイヴンと名乗った少年に対して、まず最初に声を上げたのはメイだった。
続いて、他の面々もそれぞれに挨拶を交わす。そんな中で、一人だけが困惑していた。
(あれれ? なんでみんな普通にしてるんだろう?)
今の状況に、である。
メイたちは謎の遺跡にて、突如として現れたモンスターに襲われていた。
だがそこへ颯爽と駆けつけたレイヴンにより窮地を脱することが出来たのだが――。
「あ、あの、どうして私たちのことを助けたんですか? それにここはどこですか?」
メイが尋ねた瞬間、ユンナによって放たれた呪弾によりエリーナの肉体は木っ端微塵に砕け散ってしまう。
かつて自分の故郷だった場所を見て回りたいと言ったエリーナの意志を尊重して 町を離れることにした一行だが、道中、エリーナの記憶を頼りにユンナの居城へと 辿り着く。しかしそこで待ち受けていたのは、城を守る番兵として配置された人形たち。
彼らもまた、ユンナの術式により操られた存在だったのか。ならば何故自分たち を殺そうとしたのか、と問うと、彼らは自分の意思で動いているわけではない、 帝国の命令に従っただけだと答える。それでもお前らは私を殺すつもりだろう、ならば 私も同じことをするぞ、と、エリーナは言う。
しかしここでようやく、今まで沈黙を保っていたウィンディが口を開く。彼女は 自らの魔力でユンナの術を打ち破り、彼女を倒すことに成功したと言う。
だが、その代償は大きく、彼女の命はもう長くないらしい。だからせ
「なあ、あんたらは一体何なんだ?」
突如声をかけてきた男。年の頃はまだ二十代前半といったところだろうか。
男はまるで値踏みでもするかのように一行を見つめていた。
「俺の名前はレイヴン。見ての通りただの冒険者だよ。もっとも今はちょっとした理由があって、君たちを助けようとしているんだけどね。……っと、そっちのお嬢さんにははじめましてかな?」
「えっ!? あっはい! あの、助けてくれてありがとうございました!」
レイヴンと名乗った少年に対して、まず最初に声を上げたのはメイだった。
続いて、他の面々もそれぞれに挨拶を交わす。そんな中で、一人だけが困惑していた。
(あれれ? なんでみんな普通にしてるんだろう?)
今の状況に、である。
メイたちは謎の遺跡にて、突如として現れたモンスターに襲われていた。
だがそこへ颯爽と駆けつけたレイヴンにより窮地を脱することが出来たのだが――。
「あ、あの、どうして私たちのことを助けたんですか? それにここはどこですか?」
メイが尋ねた瞬間、ユンナによって放たれた呪弾によりエリーナの肉体は木っ端微塵に砕け散ってしまう。
かつて自分の故郷だった場所を見て回りたいと言ったエリーナの意志を尊重して 町を離れることにした一行だが、道中、エリーナの記憶を頼りにユンナの居城へと 辿り着く。しかしそこで待ち受けていたのは、城を守る番兵として配置された人形たち。
彼らもまた、ユンナの術式により操られた存在だったのか。ならば何故自分たち を殺そうとしたのか、と問うと、彼らは自分の意思で動いているわけではない、 帝国の命令に従っただけだと答える。それでもお前らは私を殺すつもりだろう、ならば 私も同じことをするぞ、と、エリーナは言う。
しかしここでようやく、今まで沈黙を保っていたウィンディが口を開く。彼女は 自らの魔力でユンナの術を打ち破り、彼女を倒すことに成功したと言う。
だが、その代償は大きく、彼女の命はもう長くないらしい。だからせ
晴翔
私を殺して欲しい。そうすればきっと呪いも解けるだろう。
だがエリーナは最後にこう付け加えた。
自分の体も魂も、全てが終わったらどうせ消えてしまうものなのだと。
それならば今更何を気にする必要があるのかと。
しかしそれでもなおためらう二人に対し、ユンナが口を開く。
もういいでしょう、殺してあげなさい。
ユンナが言うには、そもそも呪砲とは人の生命エネルギーそのものを使い、それを 凝縮した砲弾を放つ兵器だという。
その性質上一度放たれればもう止めることはできず、それを止める方法はただ一つ。
術者であるユンナを倒すしかない。
だが今の彼女では自分には敵わないだろうと言うエリーナは、ならば自分を討てるのは お前たちだけだと言い残すと、自らその命を絶ってしまう。
エリーナが死んだことで呪いの力を得た帝国軍によって町の人々が次々と殺されていく中、 クレイたちは最後の希望である呪砲の破壊を目指す。
一方その頃、呪砲の存在を知った皇帝により帝国兵となったアベルは、かつての親友であった カリムとの再会を果たしていた。
帝国の尖兵となり果ててしまったかつての友を見て動揺するカリムだったが、そんな彼に対し アベルは帝国への忠誠を示すために自らの右腕を切り落とせと命じる。
そして腕を失った瞬間に、カリムは親友だった男の裏切りを知ることとなる。
呪砲を破壊するべく、まずは帝国領内に存在するすべての町へと赴き、そこに住む人々すべてを殺すことで呪砲の破壊を試みるも失敗に終わる。しかし諦めることなく次なる策を考えようとしていたところ、突如として帝国軍の襲撃を受ける。
圧倒的な戦力差の前に成す術もなく蹂躙されていく中、どうにか生き延びたクレイ達は帝国の皇帝 との謁見の場へ案内されるが……。
呪砲によって変貌してしまった体を元に戻すための方法を探るため、帝国軍に捕らわれていたところを脱出したものの、行く当てのない一行の前に現れたのは帝国兵
だがエリーナは最後にこう付け加えた。
自分の体も魂も、全てが終わったらどうせ消えてしまうものなのだと。
それならば今更何を気にする必要があるのかと。
しかしそれでもなおためらう二人に対し、ユンナが口を開く。
もういいでしょう、殺してあげなさい。
ユンナが言うには、そもそも呪砲とは人の生命エネルギーそのものを使い、それを 凝縮した砲弾を放つ兵器だという。
その性質上一度放たれればもう止めることはできず、それを止める方法はただ一つ。
術者であるユンナを倒すしかない。
だが今の彼女では自分には敵わないだろうと言うエリーナは、ならば自分を討てるのは お前たちだけだと言い残すと、自らその命を絶ってしまう。
エリーナが死んだことで呪いの力を得た帝国軍によって町の人々が次々と殺されていく中、 クレイたちは最後の希望である呪砲の破壊を目指す。
一方その頃、呪砲の存在を知った皇帝により帝国兵となったアベルは、かつての親友であった カリムとの再会を果たしていた。
帝国の尖兵となり果ててしまったかつての友を見て動揺するカリムだったが、そんな彼に対し アベルは帝国への忠誠を示すために自らの右腕を切り落とせと命じる。
そして腕を失った瞬間に、カリムは親友だった男の裏切りを知ることとなる。
呪砲を破壊するべく、まずは帝国領内に存在するすべての町へと赴き、そこに住む人々すべてを殺すことで呪砲の破壊を試みるも失敗に終わる。しかし諦めることなく次なる策を考えようとしていたところ、突如として帝国軍の襲撃を受ける。
圧倒的な戦力差の前に成す術もなく蹂躙されていく中、どうにか生き延びたクレイ達は帝国の皇帝 との謁見の場へ案内されるが……。
呪砲によって変貌してしまった体を元に戻すための方法を探るため、帝国軍に捕らわれていたところを脱出したものの、行く当てのない一行の前に現れたのは帝国兵