テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
〇〇
誰も返事をしないオフィスに
小さく頭を下げる
時刻は PM 10:45
蛍光灯だけが白々しく光る事務所を後にして
柏木〇〇は重たい足を引きずるように会社を出た
社会人2年目
『まだ2年目なんだから』
『若いんだから』
そんな言葉を何度聞いたかは分からない
気づけば残業は当たり前
休日出勤も珍しくない
学生の頃に思い描いた社会人とは
まるで違った
駅前のコンビニでプリンをひとつ買って
〇〇は家へ帰った
たった数百円の甘いご褒美が
1日の終わりを少しだけ幸せにしてくれる
家に着くとスーツも脱がずに
ソファに倒れ込んだ
スマホを手に取り
いつもの漫画アプリを開く
ランキング1位
恋愛漫画『あなたが信じた物語』
疲れていてもこの漫画だけは欠かさず読む
〇〇
〇〇
指で画面を滑らせる
主人公の石森しず
優しくて、誰からも愛される
そしてその前に立ちはだかる悪役
茂木〇〇
〇〇
画面いっぱいに映る、整った顔立ちの少女
綺麗なのに
口を開けば嫌味ばかり
毎回毎回、石森しずへの嫌がらせをしている
当然
読者からは嫌われている
コメント欄にも
『頼む、早く痛い目見てくれ』
『性格悪すぎ笑』
『救いようがない』
そんな言葉が並んでいた
〇〇は小さくため息をつく
〇〇
画面に映る名前を見つめる
〇〇
〇〇
自分と同じ名前が悪役とは
少しだけ複雑だ
ヘイトが私にまで飛んできてる様な気がする
だからこの漫画を読む度
私は複雑な気持ちを抱えていた
〇〇
苦笑しながら画面を閉じる
最終回までもう少し
もう完結するらしい
〇〇
そう呟いてスマホを置いた
けれど
その休みの日は来なかった
翌日
終電を逃し
会社を出た頃にはすっかり街は静まり返っていた
横断歩道の信号は赤
でも頭はぼんやりして
何も考えられなかった
ただ早く帰って
眠りたい
その一心で、踏み出す
「ーーー危ない!!」
遠くで誰かの叫ぶ声
けたたましいブレーキ音
眩しいヘッドライトが視界を白く染める
〇〇
それが柏木〇〇の最後の記憶だった
きんにくまん
いちごあめ
2,002
コメント
1件
うわっ…最後の展開、一気に持ってかれた😥💦 自分と同じ名前の悪役に複雑な気持ちを抱えつつ、疲れた毎日をなんとかやり過ごしてたのに…あの信号無視、全てを物語ってる感じが切ない。 このまま終わるわけないよね?続き、気になりすぎる…。 きんにくまんさんの空気感の描写、すごく好きです。また読みに来ますね🌙