テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
4件
うわー 、、、普通に好き。
わあ、第2話も重い……!まさか転生先が悪役ポジの茂木さんだったとは。しかも家族から完全に疎外されてて、食卓にすら入れない描写が切なすぎる😢 角名くんが“軽く気まずい空気を見かけただけ”って捉えてるのも、まだ何も始まってない感じで逆に怖い……。 次、どう動くんだろう。めっちゃ気になるわ🔥
らーゆダヨ🍜
67
ハイキューらぶ💞
26
〇〇
〇〇
口から出たその言葉に
自分自身が1番驚いた
〇〇
目の前には
肩を小さく震わす女の子
ふわりと揺れる栗色の髪
大きな瞳に涙が滲んでいる
少女は申し訳なさそうに俯き
小さな声で謝った
〇〇
…誰?
頭の中が真っ白だった
さっきまで私は
会社帰りで
車のライトが見えて
それから……
ここ、どこ?
制服
見慣れない校舎
夕方の静かな渡り廊下
目の前には泣きそうな女の子
え、待って
誰この子
少女は恐る恐るこちらを見上げる
その顔を見た瞬間
背筋が凍った
…うそ
石森しず
漫画のヒロイン
毎晩読んでいた『あなたが信じた物語』の
なんで…
慌てて周りを見渡す
校舎
制服
誰もいない廊下
そして、自分の手
まさか
震える手で近くの窓ガラスを見る
映っていたのは自分ではない
長い黒髪
整った顔立ち
そして、見覚えのある顔
茂木〇〇
〇〇
心臓が嫌な音を立てる
嘘でしょ…?
私、え、なんで
転生ってやつ?
しかも、よりによって
記憶を必死に辿る
石森しず
茂木〇〇
2人きり
この場所で
これって漫画の
石森しず
しずがおどおどしながら口を開く
石森しず
石森しず
その言葉を聞いた瞬間
〇〇の背中を冷たい汗が伝った
この場面
漫画の2話だ
この後…
コツ、コツと静かな廊下に足音が聞こえた
一定のリズムで近づいてくるその音に
しずも顔を上げた
廊下の向こうから
1人の男子生徒が歩いてくる
気だるそうに片手をポケットへ突っ込み
こちらに視線を向ける
来た…
〇〇は息を飲んだ
角名倫太郎
この物語のヒーローだ
黒い髪
少し猫背気味
…来た
漫画で何度も見た人物が
今自分の目の前にいる
心臓が大きく跳ねる
角名は一度だけ二人の間を見渡すと
いつも通り
無表情の顔で口を開く
角名
角名
それだけだった
責める訳でもなく
庇う訳でもなく
ただ事実を伝えるような口調
石森しず
しずは肩を震わせてから
角名を見る
石森しず
石森しず
小さく頭を下げると
そのまま足早に廊下を去っていった
その背中が見えなくなるまで
〇〇はただ立ち尽くしていた
…助かった
そう思うよりも先に
頭の中は混乱でいっぱいだった
なんなのこれ
本当に漫画の世界……?
リアルすぎる夢?
いや、そんなことより
落ち着かないと
角名と目が合う
その瞬間漫画で見た茂木〇〇の記憶が
脳裏を過ぎる
嫌悪
苛立ち
その感情は自分のものでは無いはずなのに
勝手に流れ込む
〇〇は思わず目を逸らした
何も言わず角名の横を通り好きる
ただ1人になりたかった
考える時間が欲しかった
足早にその場を離れていく
角名はその後ろ姿をを黙って見送った
角名
石森しずが足早に去っていく
角名はその背中を一瞬だけ見送った
続いて反対に歩いていく女子高生にも目を向ける
長い髪
どこか苛立ったような足取り
…確か
茂木〇〇
同じ学年話したことは無い
ただ
「感じ悪い」
『よく誰かと揉めている』
そんな噂だけは耳にしたことがあった
だからさっきも
深く考えずに声をかけた
別に石森しずを助けようと思ったわけでもない
部活で使おうと思っただけ
それだけ
宮侑
宮侑
宮侑
宮侑
角名は歩きながら小さく返す
角名
角名
宮侑
宮侑
角名はもう振り返らなかった
茂木〇〇のことも
石森しずのことも
この時はまだ
ちょっと気まずそうな空気を見かけただけ
それ以上でも以下でもなかった
校舎を出ると
夕方の風が頬を撫でた
〇〇は無意識に昇降口へ足を向ける
あれ…なんで
立ち止まろうとした足は
そのまま迷うことなく進んでいく
まるで何度も歩いたことがある道かのように
昇降口へ入り
並んだ下駄箱を見渡す
私…どこだっけ
そう思ったのも束の間
体は自然と1番奥の列に向かい
ひとつの下駄箱の前で止まった
2-3 茂木〇〇
名前を見て、息が止まる
〇〇
扉を開ける
中には黒いローファーが揃えて入っていた
震える手で上履きを脱ぎ
ローファーに履き替える
何も考えていないのに
体は勝手に動いていた
おかしい
この学校に来た事も
漫画にこんな描写もなかった
なのに
学校の作りも
自分の場所がどこかも
全てが手に取ってわかる
〇〇
断片的に映像が過ぎる
教室
担任
クラスメイトの名前
ほんの一瞬だけ浮かんでは消えていく
じゃあ…
帰る家も分かるの?
試すように1歩踏み出す
迷わない
どちらへ歩けばいいか
どの信号を渡るのか
考える前に身体が知っている
〇〇
乾いた笑みが漏れた
〇〇
〇〇
夕日が長い影を伸ばす
その影は柏木〇〇のものではなく
茂木〇〇のものだった
住宅街を歩いていると
〇〇はふと足を止めた
〇〇
目の前には大きい門
手入れの行き届いた2話
映画でしか見たことないような
立派な洋館
〇〇
思わず周囲を見渡す
こんな家じゃないよね
門柱へ近づく
黒い石で出来た表札
そこにははっきりと刻まれていた
茂木
〇〇
思わず口元が緩む
この子…お金持ちなんだ
漫画では悪役と描かれていただけ
家族構成も
家も
過去も
ほとんど描かれていなかった
〇〇
柏木〇〇としての感覚が少しだけ勝つ
ブラック企業で働いていて
自分には縁のない世界
少しだけ胸が高なった
門を開ける
砂利の音が静かな庭に響く
すると女性が駆け寄ってきた
お手伝い
お手伝い
お手伝い
お手伝い
“お嬢様”
その呼び方に胸が高鳴る
けれどなぜか自然に頷いていた
〇〇
自分でも驚くほど自然に
その言葉が出た
女性は安心したように微笑んだ
家の中はホテルのようだった
高い天井
磨きあげられた床
飾られた絵画
歩くだけで場違いな気持ちになる
その時だった
リビングの方から楽しそうな笑い声が聞こえてきた
雪斗
お父さん
風花
暖かい声
笑い声
家族団欒
〇〇は思わずリビングを覗いた
長いテーブルには豪華な料理が並んでいる
父
母
スーツ姿の青年
制服姿の少女
4人が楽しそうに食卓を囲んでいた
よかった
普通の家族なんだ
そう思った
一歩
食卓へ向かおうと足を動かす
動かない
〇〇
もう一度
足に力を入れる
進めない
まるで見えない壁があるかのように
身体が拒絶する
なんで
胸がざわつく
呼吸が浅くなる
無理やり踏み出そうとした、その時
ガタン、と近くの飾り棚に肩が当たった
全員の視線がこちらを向く
さっきまで笑っていた空気が
一瞬で止まった
お父さん
父は何も言わない
母も何も言わない
兄も、妹も
ただ冷たい目でこちらを見るだけだった
歓迎も
「お帰り」も
「一緒に食べよう」もない
その視線だけで
全てを理解した
この子は
家族にいないものとして扱われてる
身体が勝手に後ずさる
逃げるように廊下を曲がる
開いていた扉へ飛び込んだ
乱れた呼吸を整えようとして
部屋を見渡す
机
本棚
壁一面のトロフィーと賞状
そして写真
写っているのは兄と妹だけ
兄は白衣姿で表彰されている写真
妹はトロフィーを掲げて笑っている
全国大会優勝
生徒会長
学年首席
どこを見渡しても
茂木〇〇の名前はなかった
〇〇
机の上の家族写真には
〇〇はいなかった
コンコンと控えめなノックが響く
お手伝い
先程の女性が静かにドアを開ける
手には食事を載せたお盆
困ったように微笑みながら
小さく頭を下げる
お手伝い
お手伝い
〇〇
〇〇
〇〇は家族を机に戻した
お手伝い
言葉を濁す
言わなくてもわかった
〇〇は静かに頷く
あの食卓に
自分の席はない
その事実だけが胸にのしかかった