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昔の記憶は

大人になるにつれて

少しずつ風化されゆく.

良い思い出も.

悪い思い出も.

まゆみ

......

喜びに囚われない様に.

怒りに狂わない様に.

哀しみに潰されない様に.

快楽に溺れない様に.

感情をうまく

コントロールするために.

無自覚に.

無意識に.

過去の記憶を薄めながら

大人というセカイの中で

ひたすらに耐え忍んでいく.

まゆみ

......

これが本来のヒトの姿.

なのだろう.

多分そういう風に

なっている

んだと思う.

だけど.

まゆみ

......

まゆみ

............

まゆみ

まゆみ

......うっ...ッ......

まゆみ

......うぐっ......

まゆみ

まゆみ

ぅぅ.....っっ......

最近は疲れているのか.

忘れたい記憶が

どんどん出来上がってしまう.

子どもの時より

感覚は鈍くなったけれど

出会う哀しみの量は

相対的に増えてしまった.

大人になるということは

こういうことなのだろうか.

まゆみ

......

まゆみ

はぁ......

仕事.

恋愛.

人付き合い.

全てが思い通りにいかない.

負の記憶は

楽しい記憶とは違って

なかなかに消えてくれない.

哀しみがパンクしそうになって

しばらく眠れない夜が

続いた.

眠いのに眠れない.

動悸.

緊張.

不安.

不眠.

まゆみ

......

そういえば.

ハッと思い出した.

8歳くらいの私は

"死ぬこと"を恐れて

眠れないことがあったっけ.

完全に忘れていたけれど.

何故か突然に

その情景が目に浮かぶ.

布団の裾をぎゅっと掴みながら

懐かしさを噛み締める.

死ぬのが怖くて

生きていたくなくて

だから

死のうとしていた.

自家撞着.

矛盾.

頓珍漢.

さらに思い出す.

そんな子ども時代の

とある日の真夜中.

ぼんやりとした意識の中

私はある女の子に出会った.

小夜子

小夜子

私小夜子ってんだ

小夜子

よろしくね

小夜子(さよこ)ちゃん.

私の知らない女の子.

小夜子

また寝れないの?

私はびっくりした.

いつの間にか私の部屋に

知らない子がいたから.

私は幽霊だと思った.

女の子の幽霊ちゃん.

真夜中の小夜子ちゃん.

小夜子

寝れないなら

小夜子

眠くなるまで

小夜子

私とたくさん

小夜子

お話しよう!

でも不思議と

怖い気持ちはなくて

むしろ安らぎさえ感じた.

小夜子ちゃんのおかげで

私は

真夜中が好きになった.

そして

9歳になった.

その日も

真夜中の小夜子ちゃんと

お話をしようとした.

小夜子

こんばんは

小夜子

ねぇね、まゆみちゃん

小夜子

まゆみちゃんは

小夜子

今日でちょっと

小夜子

大人になったね

小夜子

おめでとう

小夜子ちゃんは

半分消えていた.

小夜子

だから

小夜子

私がいなくても

小夜子

もう

小夜子

大丈夫、だよね?

私は察した.

このままでは小夜子ちゃんが

消えて無くなってしまうと.

私は嫌だと言った.

まだ子どもだと言った.

小夜子

まゆみちゃんは

小夜子

夜が怖かった

小夜子

死ぬのが怖かった

小夜子

でもね

小夜子

私と話してたら

小夜子

夜が好きになった

小夜子

死ぬことを

小夜子

余り考えなくなった

小夜子

でしょ?

小夜子

少し大人に近づいた

小夜子

ってことなんだ

小夜子

それってほんとに

小夜子

すっごくすっごく

小夜子

素敵なことなんだよ

小夜子ちゃんは

微笑みながら言った.

小夜子

死ぬことを考えるより

小夜子

生きることを考えてね

小夜子

生きることは

小夜子

辛くて大変だけど

小夜子

死ぬより

小夜子

よっぽどマシだからね

小夜子

だから

小夜子

頑張って生きてね

小夜子

立派な大人になってね!

私はうなずいた.

顔を上げたときには

小夜子ちゃんは消えていた.

まゆみ

......

まゆみ

小夜子ちゃん...

こんなにも大事な記憶を

今までどうして

忘れていたのだろうか.

私は思った.

彼女は幽霊なんかじゃなくて

夜の妖精だったんだ.

と.

子どもにしか見えない.

素敵な妖精だったんだ.

と.

まゆみ

会いたいな

まゆみ

小夜子ちゃん

私は呟いた.

小夜子ちゃんに会えたら

色々伝えたい.

仕事とても大変だよって.

彼氏に振られたよって.

親友に裏切られちゃったって.

私、色々経験して

大人になったんだよって.

立派な大人じゃないけれど

少なくても

あの時よりかは

大人になったんだよって.

まゆみ

もう会えないか...

まゆみ

小夜子ちゃん

私はふうと息をついて

腫れた目を擦りながら

寝返りをうった.

夜の四時半.夜明け前.

頑張って寝てみよう.

そう思った.

睡眠薬をもう一袋.と.

手を伸ばしたところで

まゆみ

......!?!?

ぎゅっと手を掴まれた.

小夜子

やほ、まゆみちゃん

小夜子

仕事、大変みたいだね?

まゆみ

小夜子ちゃん...!?

そこには姿形の変わらない

あの頃の小夜子ちゃんが居た.

まゆみ

小夜子...ちゃん...

まゆみ

会いたかった....っ....!!

まゆみ

....っ....急に...

まゆみ

居なく...なっちゃうから...

まゆみ

ぐすっ....寂し...っ...

小夜子

ねぇねぇ

小夜子

まゆみちゃん

小夜子ちゃんは

私の目をみつめて言う.

小夜子

勘違いしてるかもだけど

小夜子

私、幽霊でも妖精でも

小夜子

ないよ?

まゆみ

......

まゆみ

え...?

小夜子

私はまゆみちゃんが作った

小夜子

幻覚です

まゆみ

ど...どういう......

小夜子

あのね

小夜子

言いづらいけど

小夜子

まゆみちゃんは

小夜子

ストレスを抱えすぎて

小夜子

軽い鬱病になってるの

小夜子

8歳の時もそう

まゆみ

うつ......?

小夜子

うんうん

小夜子

鬱症状の"幻覚"

小夜子

それで私が見えてるの

小夜子

私はあなたの幻覚

まゆみ

幻覚...えっ

小夜子

子どもの鬱は

小夜子

メンタルケアで処置できる

小夜子

何とか自分自身の禅問答で

小夜子

うまく乗り切れたけど

小夜子

大人の鬱はそんな簡単に

小夜子

治療できないの

まゆみ

はぁ......

小夜子

だから

小夜子

私に頼るより

小夜子

ちゃんと病院で

小夜子

しっかり治療してね

まゆみ

はぁ......

第12回 TELLER文芸部

『小夜子ちゃん』

お題:真夜中 課題:泣く描写を入れる

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コメント

9

ユーザー

幽霊でも妖精でも無く、幻覚だったんですね! 大人になって再会できたのは、再び情緒不安定になったから。 ストレスを溜めないように、気をつけようと思いました💦

ユーザー

イマジナリーフレンド的な、ほのぼの感動かと思いきや、きちんとした医療機関への案内……! 予想外な前半との落差でとても面白かったです!

ユーザー

いなくなった…やっぱり幽霊、いや妖精だったのかな🤔 って思ってたら、まさかの幻覚でビックリしました😲 鬱病…子供でもなるんですね…?? 大人になると治りずらいっていうのも初めて知って勉強になりました…😌 (いやそこ??) 悲しい描写から、戸惑う描写まで全部想像できてとても面白かったです✨

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