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逢魔トキ

…………

逢魔トキ

あれ、俺は何をして……

 

おはよっ!

 

トキ君!

逢魔トキ

……

 

……?

 

どうした?

 

はっはっ!

 

こいつまだ寝ぼけてんだぜ

逢魔トキ

ああ、そうだ……

逢魔トキ

きっと……

逢魔トキ

寝ぼけていたんだ……

 

意外とそういうとこあるんだな

 

なー、意外とマヌケよねー

「きゃー!!」

逢魔トキ

…………

 

……!

 

この声……!

 

きゃー!!

 

…………

 

……あ、あああ

 

どうした!

悲鳴を追うと、教室があった。

その扉の前、女が腑抜けた声で、尻餅を付いている。

 

……あ、ああ

 

……あれ

 

……は?

 

は、は、は……!?

 

なんだよ、これ……

 

なんだよ!!

女は震えながらも、その対象へと指を指した。

その先を見た、一人の男は悶絶し、一人の男は怒った。

逢魔トキ

何が……あるんだ……?

俺は彼らの睨む、それを見た。

それは、この世のものとは思えないほどに禍々しく、異質さを放っていた。

脳だ。

人間の脳。それが机に置かれている。

教室全体に配線が蔦のようにへばっていて、その全てがあの脳へ繋がれている。

これ以上他に言える事があるとすれば、

その席が、今ここにいない彼女のものである、という一つのみだ。

 

……あれってさ

 

そう……だよね

 

そんなわけ……そんなわけ……

 

…………!

 

俺は!

 

俺は信じねえからッ!

男はそう叫ぶと、走った。

俺達もその後を追って走った。

あまり複雑な理由はない。

ただ、すがれる希望を信じたかった。

それは、本格的に息切れを起こしたあたりだった。

理科室の硝子の隙間から、彼にだけは見えたらしい。

 

……い、いた

 

で…ででで、でも!

 

……

 

うそ……だろ……?

男は理科室へと入る。

しかし、他のものは息が切れていたし、息が切れていた。

疲れていて、疲れていて。気分も乗り気でなかった。

これほど探していたのに、誰もその背中を追わず、彼女を見ようとしなかった。

 

なんで……!

 

なんで、こんな姿に……!

しかし、見たくなくとも、意識というものは向く。

窓を開け、壁に寄り掛かり、外の空気を吸った。

それがよくなかったのだろうか。

つい、そのまま。

理科室のガラスを見てしまった。

彼女の姿は、その時の視界の僅か1割にも満たない。

それだというのに、俺の意識は完全にそこにあった。

 

なんでッ!!

逢魔トキ

……あ

母親以外で、女の裸体を初めて見た。

それが素直な感想だった。

 

…………

その瞳孔を見れば、素人目でも死んでいると理解できる。

そう、確信できるほどに、そこに立っていたのは死体であった。

これは昨日転入してきたばかりで、彼女という人間が然程脳裏に浮かばない、

そんな俺だからこそ感じた事なのかもしれないが、

骨格模型と並んでいるものだから、見落としていてもおかしくはないと思えた。

裸体、女の裸体だ。

しかし、欲情はできない。

なぜならば、その身体の半分は肉が裂かれている。

そう、彼女の脳以外。

肉体部分は、人体模型となっていた。

心臓も肺も腸も。全てが見える。

おそらく、どの子どもも一度は想像したことのある。学校の怪談。

それが現実に。目の前にあった。

 

……はぁはぁ

 

……はぁはぁはぁ

 

ははっ……

 

はははっ

 

なんだ、ここにいたのかよ

 

探し……たんだぜ

男は女の頬に触れようとする。

逢魔トキ

おい、待て!

俺はそれを止めに入った。

しかし、もう遅かった。

 

あれ……?

 

あれあれ……?

 

え、え、え……!?

少し触れただけだった。

しかし、それでその身体は倒れた。

 

……嘘だろ、おい

 

……夢、どうせ夢なんだよねぇ

死が語り掛けているように。

俺たちは、ようやくその時、彼女が死んだのだと。

そう理解できた。

倒れた時の衝撃で、彼女の中身は出てしまっている。

心臓も肺も腸も。

先生

おや、こんなところで何をしているんだ?

 

……先生

 

先生!

 

助けて……助けてください

 

コイツを助けてくれ……!

 

大人だろ……!

逢魔トキ

え……

逢魔トキ

いや……

逢魔トキ

みんな……?

先生

どうした? 逢魔トキ。

逢魔トキ

……え、あ、え?

俺以外、全員が先生に泣きついた。

「助けて」という言葉を連呼して、その人を正義のように扱った。

でも、先生の着ているスーツの右半身。

そう、右半身側だけ、色の付いた液体が付いたように違っていた。

黒……いや、おそらくは赤だったのだろう。固まる前までは。

その液体は。

そして、先生の右手には……

先生

先生

1人目。

赤い斧があった。

 

先生……

 

先生……

 

先生……!

逢魔トキ

…………

 

……

 

……

 

……

先生

はい、皆さんが落ち着くまでに3分掛かりました。

先生

安心しなさい。

先生

〇〇は自殺しただけだ。

 

……自殺

先生

そう、自殺。

 

……自殺

先生

そうだ。

 

自殺……

先生

ただ、それだけの事なんだよ。

逢魔トキ

……はぁ?

逢魔トキ

テメェ何言って……!

 

なんだ……、そういう事か

 

自殺かぁ……

 

あ!

 

先生、今日の授業って休みになったりしません!?

先生

残念ながら、授業はあるぞ。

 

えー、ケチ

逢魔トキ

……!

 

ふざけてんじゃ、ないぞ!

 

人が死んでいるんだ!

 

自殺……?

 

そんなわけ……ないだろ!

 

教室にあった脳

 

……あれ、〇〇のやつだ

 

この死体、頭が軽い……!

 

どうやれば、こんな死に方できるんだよ!

逢魔トキ

そうだよな……

逢魔トキ

そうだよな……!

逢魔トキ

お前ら、おかしいんじゃないのか!

 

……?

 

……?

先生

2人は【耐性】が強めなんだな

逢魔トキ

……は?

逢魔トキ

本当に何を言って……

逢魔トキ

はじめてまして

逢魔トキ

オウマガ トキです……!

逢魔トキ

好きな食べ物は……

逢魔トキ

イカ墨パスタ……!

逢魔トキ

よろしくお願いします……!

逢魔トキ

…………

逢魔トキ

…………?

 

いえーい!!

 

……よろしく

 

よろしく!!

 

俺も好きだぜ、イカ墨パスタ!

 

私は……パスタよりうどん派だけど

 

でも、よろしく!

逢魔トキ

……うん!

逢魔トキ

よろしく!

逢魔トキ

…………

逢魔トキ

……いたた

逢魔トキ

ここは……?

ぐちゅ。

ぐちゅぐちゅぐちゅ。

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ。

逢魔トキ

な、なんだ……?

「……はぁはぁ」

「……はぁはぁはぁ」

逢魔トキ

……おい

逢魔トキ

そこに誰かいるのか……?

 

……はぁはぁ

 

……はぁはぁはぁ

 

…………

逢魔トキ

なに……してんだよ

 

ああ、トキ

 

ほら、自殺した〇〇の身体

 

焼いちゃうの勿体ないなって……

 

俺、アイツのこと好きだったからさ

 

ほら、半身の肉が無いとは言っても

 

まだ使えそうだろ?

 

…………

 

……はぁはぁ

 

……はぁはぁはぁ

逢魔トキ

……どうしたんだよ

逢魔トキ

お前……

 

へえ、逢魔君はお医者さんになりたいんだ……!

 

うえっ! すげ!!

 

金持ちじゃん!

 

金持ちー金持ちー!!

 

黙れ金欠!

 

困ってんだろ、トキが

 

まじでゴメンな

逢魔トキ

いや、いいよ全然

 

お医者さんかぁ、すごいなぁ……

 

……おい、お前横取りされんぞ

 

……ちっ、黙れ金髪

 

……なんでこの学校に?

 

……

 

……確かにそうだよな

 

医者目指せるくらい頭良いんだろ?

 

なんでわざわざこんなとこに来たんだよ

逢魔トキ

……そ、それは

逢魔トキ

…………

逢魔トキ

俺、子供のことから勉強ばかりでさ

逢魔トキ

親の教育方針というか……なんというか……

逢魔トキ

……ちょっと青春してみたかったんだ

 

……!

 

……!

 

……なんかキモい

 

言葉を選ばず言えば

 

……まあ、わかる

 

……失礼だけども

逢魔トキ

えぇ…、ひどぉ

 

トキ君!

 

俺は感動した!!

 

君とは上手くやっていけそうだ!

逢魔トキ

……お、おう?

 

俺の家は父親がいなくてさ

 

今まで、妹たちを養う事ばかりしてきた

 

それで、青春したくてこの学校に来たんだ!

逢魔トキ

……!

逢魔トキ

それは、大変だったな……

 

ああ、だが今日。君に会えてよかった。

 

改めてよろしく!

逢魔トキ

よろしく!

 

何この流れ……キモっ

 

……捗る

 

まあ、男の友情とはそういうものさ

 

真の関係性は

 

キモい自分をさらけ出す事から始まるのだよ

逢魔トキ

……なんで

 

……?

 

どうしたお前、様子がおかしいぞ

 

あ! まさか自殺した死体に同情してんのか?

 

まさかだよな!

 

だって、自殺だぞ自殺

彼はもう、人では無い。

それを肌で感じた。

 

……

刹那、彼の首が跳ねる。

俺は気づけば、赤い斧を手にしていた。

それが見事に肉と骨を裂いたのだ。

理解が追いつかなかった。

彼は死んだのか。俺はなぜ斧を持っているのか。どう振ったのか。

人を殺してしまったのか。

先生

先生

2人目

逢魔トキ

……先生

先生

悪いな。

先生

君に単純な洗脳の効果は期待できないので、

先生

先に殺意を芽生えさせ、それを使わせてもらった。

逢魔トキ

……!?

逢魔トキ

ここは……!?

先生

なるほど、消去の方は効果あり、と。

先生

逢魔トキ。

先生

君の存在は危険だ。

先生

しばらくは、この部屋に幽閉させてもらう。

逢魔トキ

どういう事だ!

逢魔トキ

俺はいつまで……

逢魔トキ

こんなとこにいなきゃいけねえんだ!

先生

無論、死ぬまでさ。

先生

食事は無いが。

先生

今回は特別、水だけは与えてやろう。

先生

せいぜい、思考だけを続ける日々を送るといい。

逢魔トキ

……!

逢魔トキ

……待て!!

逢魔トキ

…………

逢魔トキ

……夢かよ

逢魔トキ

趣味がワリィな

逢魔トキ

……

逢魔トキ

……そうか

逢魔トキ

この場所に来たのは、あの時以来か……

逢魔トキ

…………

逢魔トキ

……あれ

その時、ボクはどう死んだ?

本当に、それは餓死だったか?

逢魔トキ

……まあ、いいか

逢魔トキ

ともり、起きているか?

西空ともり

うん……

西空ともり

ギリ寝てない

逢魔トキ

はぁ……

逢魔トキ

この状況で徹夜テンションとは、流石だな

西空ともり

うるさい

逢魔トキ

眠気覚ましにはちょうどいいだろ?

逢魔トキ

今からボクに付いている、

逢魔トキ

【宇宙人】との交信を行う

西空ともり

…………

西空ともり

宇宙人……?

西空ともり

あれって厨二病じゃなかったの……?

逢魔トキ

……はぁ、違う

逢魔トキ

マジに、ボクに憑いている

逢魔トキ

夕焼け時に声を送って来ては

逢魔トキ

誰が死ぬのかを教えてくれる

逢魔トキ

ちょっと待ってろ

逢魔トキ

たぶん、そろそろ来る……

西空ともり

わかるの?

逢魔トキ

まあ、なんとなく……?

逢魔トキ

…………

 

聞こえる、な?

逢魔トキ

夕焼け時なんだな

逢魔トキ

地上はもう……

 

そうらしい。

逢魔トキ

……早く本題を

 

まあまあ、そう焦るな。

 

俺にとっては1日に一度の会話なんだ。

 

もっと、味あわせてくれ。

逢魔トキ

早く……!

逢魔トキ

交信が切れると困る!

 

頑張ってんな。

 

だが、安心しろ。

 

今日は誰も死なねぇよ。

逢魔トキ

……本当か?

 

今までに、俺が嘘をついた事があったか。

逢魔トキ

…………

逢魔トキ

いや、無かった

 

そうだ、信じろ。

 

俺の言葉を。

逢魔トキ

なんかな……そういうところが胡散臭いんだよ

 

いや、信じられるはず。

 

お前ならば。

逢魔トキ

……なあ、

逢魔トキ

ずっと聞かずにいた事なんだが……

逢魔トキ

宇宙人って何者なんだ?

 

……俺の正体、ね。

 

それを知るのは、まだ早い。

 

まあ、いつかは自ずとわかるはずさ。

逢魔トキ

答えになっていない

 

はー、ったく面倒だな。

 

わかった、条件を出してやろう。

 

それを果たせれば、教えてやる。

逢魔トキ

……何をすればいい?

 

"先生を殺せ"

逢魔トキ

……正気か?

 

ああ、もちろん。

 

で、どうだ? やるか?

逢魔トキ

……

逢魔トキ

(アイツのせいで、今まで……)

逢魔トキ

ああ、やってやるよ

 

おおっ、いいねぇ!

 

だか、気をつけろよ。

 

俺の見立てでは、ヤツは不死身。

 

いや、生や死に囚われていない存在。

 

一筋縄ではいかないぞ。

逢魔トキ

……どういう事だ

 

さあ?

逢魔トキ

……おい、待て……

 

まあ、俺も協力してやるから、頑張ろうぜ。

夕焼けに殺される

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