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鹿型獣人
あっ、類さん!
白石 類
え……? はい
白石 類
(この人、工場勤務の人だ)
白石 類
(午前中、社内公募の応募用紙を受け取ってくれた)
鹿型獣人
社内公募の件なんですが……
白石 類
えっ、すみません、お渡しした書類に不備でも……?
鹿型獣人
そうじゃなくて
白石 類
?
鹿型獣人
書いて持ってきました!
鹿型獣人
僕の、新作アイスのアイデア
白石 類
……ええっ、もう!?
鹿型獣人
前から作りたいアイスがあって、
鹿型獣人
それで、昼休みにこれをまとめたんです
鹿型獣人
もしかして僕が一番乗り?
白石 類
はい! えーと、ありがとうございます!
アイデアが書き込まれた応募用紙を受け取った。
鹿型獣人
社内公募、類さんの発案なんでしょう?
鹿型獣人
こちらこそありがとうございます!
鹿型獣人
類さんが来てくれて、この会社もおもしろくなりそうです!
白石 類
いやっ、そんな! 僕はただの掃除担当ですよ!?
鹿型獣人
? でも社長のお孫さんでしょう?
白石 類
一応そうだけど、だいぶ出来損ないで……
鹿型獣人
僕も工場長には怒られっぱなしなんで、おんなじです!
鹿型獣人
だから頑張ってください!
白石 類
はい、ありがとう……
白石 類
(なんだかちょっと、嬉し恥ずかし……)
白石 類
(でも、今朝社内に告知して、もう反応があるなんて……)
白石 類
(社内公募なんて単なる思いつきだったけど、やってよかったな)
帝
よかったですね
白石 類
帝さん?
帝
さっき、見てましたよ
白石 類
さっきの人のこと? 鹿型獣人の……
帝
ええ。さっそく社内公募の応募があったようですね
白石 類
はい。おかげさまで……
帝
アナタが自分で配りに行ったからですよ
白石 類
!
白石 類
帝さんは、こうなることがわかってたんですか?
帝
さあどうでしょうね?
帝
でも類さんに、人の心を動かす何かがあるのはわかりました
帝
単に周囲が放っておけないんでしょうが……
帝
そこもアナタのいいところです
白石 類
(それってほめてくれてる? のかな?)
帝
よく頑張りました
白石 類
……っ、帝さん……
白石 類
(うれしい!)
帝
何ニヤニヤしているんですか
白石 類
僕だって、ほめられたらうれしいです……
白石 類
それに帝さん、ご褒美くれるって言ってたし
帝
ご褒美……。確かにそう言いましたね
帝
では何にしましょう?
帝
痛いご褒美と、恥ずかしいご褒美……
白石 類
――え?
帝
どっちにします?
白石 類
あんっ
白石 類
乳首、触らないで!?
帝
おや。ご期待のものではありませんでしたか?
白石 類
もう、そういうのじゃなくて
白石 類
僕はホントに期待してて……
帝
それにしては……
白石 類
え……?
帝
いい声が出てましたよ?
白石 類
ひゃっ!?
白石 類
だから、乳首は
白石 類
これじゃ、お仕置きの時と一緒じゃないですか
帝
そんな、涙目にならないでくださいよ
帝
もっとしたくなってしまいます
白石 類
それは困ります!
帝
そうですねえ……
帝
では美味しいものでも食べに行きますか
白石 類
ホントに!?
白石 類
帝さんの奢りなんてめずらしい
帝
私だって、たまにはご馳走しますよ
帝
今まで機会がなかっただけで
白石 類
へへ、やったぁ♪
帝
さて、もの欲しそうなこの口、何で満たして満足させましょうか
白石 類
そういうイヤらしい言い方しないでいいから、普通に食べたいもの聞いてよ……
帝
とりあえず肉ですかね?
帝
類さんは、普段あまりしっかり食べていないようなので
白石 類
それは、確かに……
白石 類
肉、いいですね
帝
よだれが出てますよ?
白石 類
んっ、帝さん?
白石 類
いきなりキス、しないで……
帝
そんな可愛い顔をするアナタが悪いです
帝
私はこれでも、アナタを甘やかしたくてたまらないんですから……
白石 類
(“甘やかしたくて”? 全然スパルタなのに!?)
白石 類
(ていうかキス……またされてる……!)
白石 類
んっ……だめ……
帝
大丈夫ですか?
帝
ひざの力が抜けてしまいましたか……
白石 類
帝さんのせい……
帝
フフッ、いちいちいい反応をしてくれますね
帝
肉より先に、ガマンできずに私がアナタを食べてしまいそうです……
白石 類
(今日の帝さん、いつになく甘い……。ご褒美モード??)
白石 類
(このまま流されちゃいそうで怖いな……)
白石 類
あー……肉行こ、肉!
白石 類
僕ちょっと、気になってるお店があるんです!
帝
そうですか
帝
ではタイムカードを押してきます
白石 類
(ほっ……)