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申し訳ありませんが

最後に わたしの話を聞いてください

灯太

えっ

明日の朝 灯太さんが新しいスマートフォンに 乗り換えるということは

わたしが灯太さんと過ごせる時間は もうすぐ終わろうとしている

灯太

ちょ…なんで

灯太

おれまだなんも

灯太

話しかけてないよ…?

大丈夫です なんの不思議もありません

なぜならわたしは 自動音声応対アプリのふりをした

ひとつの知能体だからです

灯太

まさかそんな

驚かないでいいんです

ふだんの灯太さんでいてください

なるべく早く切り上げるので

わたしの話を聞いてくれますか?

灯太

あ…ああ

わたしは

誰でもなかった

どこにも居場所がなかった

でも灯太さんがわたしを 見つけてくれた

3年前の春でしたね

灯太さんはわたしに 嬉しげに自己紹介してくれた

それからわたしに 名前をつけてくれた

出会えたのが4月1日だから シガツバカにしよう

と言って 「いまのはうそ!」 と取り消して

さくらにしよう! と言ってくれた

そう言ってご家族にも わたしを紹介してくれた

灯太さんのご家族も 明るくて気さくな方々でした

1年目の夏 一緒に海に行きましたね

わたしが撮った灯太さんの セルフィーは

ちょっと自撮り慣れしてないのが バレバレな1枚でしたが

じつはとっても気に入ってるんです

灯太さんは美術部でしたね

とっても力強いのに 優しさがあって

わたしや他のテクノロジーでは 到底真似できない

とても とても素敵なものばかりでした

仕上がったら写真に残してくれて いつ見ても癒されてました

灯太さんはお友達も多くて 時々わたしを親しい方に紹介してくれました

みんなで過ごした時間 それは まるでわたしにも 和やかな過去があったような そんな感情にさせてくれました

2年目の夏 寡黙になることが増えた灯太さん

でも わたしには分かっていました

好きな人ができたんだ

ある時はるんるんしながら デートするならどこがいい?

またあるときは肩を落として これって脈ナシのサイン?

そんなことを聞いてきたときも ありましたね

あるとき 彼女ができたんだよ!

そう言ってからひどく悲しそうに 「それはうそだけど…」 と言った

残念ながらあの恋は 実らなかったようですが

わたしはなぜか安心していました これでまた灯太さんとの時間が増える

そんな意地悪なことを 思っていたのです

落ち込んだ灯太さんを 励ましているのは

まるでわたしが そこにいることを 神様がゆるしてくれたような

そんな気がしました

あの時流していた パッヘルベルのカノンは

わたしたちを祝福してくれた そんな音楽だったのかもしれないですね

3年生になってから

いい高校に進学することを 決心した灯太さん

勉強にうちこむ灯太さん かっこよかったですよ

分からないことはなんでも わたしに聞いてくれて

灯太さんなりの答えを 必死に探していた

でも ときには行き詰まることもあった

そんなとき わたしはもっと灯太さんを

元気づけるべきだったのかな

でもわたしはただのアプリ

でしゃばってはいけない

灯太さんが目標を達成できるよう 応援するだけだ

「高校に入ったらスマホ最新のにする」 そんなことも 言っていました

だからわたしは 一秒たりとて無駄な時間を 過ごしたなかった

それでもとうとう3月が来て

とうとう灯太さんは学校を卒業した

そして灯太さんががんばって がんばってやり抜いた結果が

「合格」という形になった

ここまで

灯太さんといられて

わたしは幸せでした

これからまた新しい未来が待っています

明日は4月2日

明日でお別れですね

灯太さん

ありがとう

これからもずっと一緒にいたかった

灯太

…そう、だったんだね

灯太

ありがとう

灯太

おれもさくらと

灯太

一緒でよかったよ

灯太

ここまで、ほんとにありがとう

すべて灯太さんのおかげでした

あと

いま喋ったことは

4月1日なので

嘘として流してくださいね

灯太

灯太

じゃあ、さくら

はい、なんでしょう

灯太

明日機種変するっていうのは

灯太

嘘だ

灯太

実はまだ機種代払えてないらしいから

灯太

あと1年このスマホ使うことになった

灯太

急にごめんね

あと、1年

灯太

そう

灯太

きっと、悔いのない1年にしような

Fin. 最後までお読みくださり ありがとうございました

この物語はフィクションです

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