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【医療室・夜明け前】

みるの身体は、まだ微かに震えていた。体温の低下を抑えるため、電熱毛布が全身を包み込む。酸素マスク越しに、か細い呼吸が続いていた。

ショッピ

血中酸素、少しずつ回復してきたな。脈拍も安定しつつある……このままいけば大丈夫や。

シャオロン

見ろってロボロ〜!俺の読み通りや!みるは絶対に生き延びるって言うたやろ!!

ロボロ

はいはい、そんなん後でええから黙って手ぇ動かせや。なぁ大先生、脳波どうや?

鬱先生

意識は戻ってる、でもな……“夢”みたいなもんの中におる感じやろうな。言葉にも反応はある。でも……意味をまだつかめてへん。

トントン

つーか、お前ら騒ぎすぎやねん。医療室やぞ。兄さん怒ってたで?

ゾム

そんなん気にしてられるかい!こいつがここまで戻ってきたんやぞ!?奇跡やで、奇跡!

オスマン

起きる瞬間、ワイが最初に気づいたらよかっためぅ……不覚めぅ……

しんぺい神

……彼女は戻ってくる。“神の奇跡”ってやつですよ、ええ。

トントン

何カッコつけてんねん

兄さん

おい、全員静かにせぇ。……お前らのガヤで逆戻りされたら、たまったもんちゃうやろ。

シャオロンがそっとマスクを外すと、みるの唇がわずかに動いた。

みる

(……なにか、聞こえる……誰……?)

チーノ

……おい、これ! 目ぇ動いたんちゃうか!?

ロボロ

よし、来たぞ……みる、聞こえるか?俺らや。お前の仲間やで……!

鬱先生

この声、届いてたらええけどな……お前の居場所は、ここや。ずっとここやった。

……そして、少女のまぶたが、ゆっくりと持ち上がった。

みる

…………っ……

呼吸が浅くなり、また深くなる。焦点が合っていない視線が部屋の天井をさまよい――やがて、涙が零れた。

しんぺい神

……おかえりなさい。奇跡を見せてくれてありがとう。

ザッ……ザ……ザ

グルッペン

『全員応答せよ。直ちに作戦室へ集まれ
繰り返す………』

ゾム

みるどうするん?

しんぺい神

医療班リーダーとして俺がいるからみんな行ってきな

ロボロ

じゃあ行こか

【我々だ本部・作戦室】

地図の上に重ねられた赤いピン。日常国、らっだぁ国、それぞれの動向を示す光が増えつつあった。

グルッペン

“彼女の覚醒”に反応して、他陣営も動き始めとる。……ここからが正念場やな。

ロボロ

せやけどまぁ、予想通りっちゅうたら予想通りやなぁ。らっだぁ国が黙っとるわけないしな。

チーノ

よっしゃ〜!んじゃ開戦ってことで、派手にやったろうやないかぁぁぁ!

トントン

うるさい!落ち着けチーノ!

ゾム

けど今さら言うてもしゃあないか。ワイらが守らな、誰が守るっちゅうねん!

オスマン

作戦行動名は“みる護衛作戦”めぅ!ワイが考えためぅ!

ショッピ

それ聞いた瞬間、敵が笑って攻めてくるわ。……変えた方がええんちゃいます?

鬱先生

笑われたってええやん。どうせ最後に笑うのはこっちや

ロボロ

どこから来んねんその自信

シャオロン

よし、なら手分けして迎撃準備進めるで。シャレにならんで、この規模は

【日常組本部】

しにがみ

我々国、動いてますねぇ……完全に“彼女中心”の配置に変えてきた……

ぺいんと

しにがみ、記録どう?ちゃんと残ってる?

しにがみ

ええ、任せてくださいよ!記録は完璧です!ほかは……まぁ任せない方がいいですけどね…

トラゾー

逆にすげーな。できるのはハッカーだけって、潔いよ。

しにがみ

それ褒めてます?

クロノア

でもさ、……みるって、今どんな気持ちで目覚めたんだろうね?

ぺいんと

そのうち直接聞けるんじゃね?どっちにしろ、俺たちも出なきゃだろ。

しにがみ

日常国ハッカー部門代表として……!みるさんの護衛任務、精一杯邪魔しないよう頑張ります!

ぺいんと

いや、邪魔すんなよ!?

しにがみ

はい!!………ってあれ?

ぺいんと

どうした?

しにがみ

……えっと、えーっと……あれ? あれれ???

ぺいんと

おい、また何かやったか?

しにがみ

いえいえいえ!今回は僕、ちゃんと保存してます!ただ……HDDの残り容量が!100MBもないです!

クロノア

少なっ!!まさかの容量切れ!?

トラゾー

おいおい、ハッカー部門代表だよな?

しにがみ

ひ、人には得手不得手ってあるじゃないですかぁ!僕はハッキングだけで手一杯なんですってば……!てか、ぺいんとさんがこの前流したアニメ300話が原因じゃ……

ぺいんと

うわ、それ俺のせい!?ごめん!

クロノア

まあまあ、揉めてる暇ない。……俺たちが直接見に行くしかないな

トラゾー

じゃあ、俺が行こうか。潜入系なら任せといて。仮装も準備済みだしな

しにがみ

え、僕がやらかすの見えてました?

ぺいんと

てかトラゾー潜入系あんましたことなくね?

クロノア

じゃあ俺が………

トラゾー

クロノアさんは絶対だめ!!

ぺいんと

間違いないな、じゃあ俺が………

トラゾー

お前透徹使えないだろ

ぺいんと

………なんでそんな事言うの………

しにがみ

ほらぺんちゃん泣いちゃうから!!早く行ってきてください!

トラゾー

はーい

しにがみ

潜入中の護衛と支援は任せてください!あ、あと機密ライン開通っと……OK、接続完了!

クロノア

……彼女をこの目で見られるチャンスだもんな。……お願い、頼んだよ

【我々だ本部・応接室】

潜入者・トラゾーは、黒縁眼鏡とビジネススーツに身を包み、完全に“貿易使節団の随行者”という肩書で堂々と我々だの拠点へと足を踏み入れていた。

グルッペン

ふむ……確かに書類は通っているな。視察という名目なら受け入れ可能やろう

しにがみ

『トラゾーさん!全て手続きはこちらでやっと来ました!その他はもう容量なくなりましたけど………』

トントン

……で、アンタは誰やって?

トラゾー

我が国より参上したる、貴国の動向を“見学”に来た小使でございます~。

ぺいんと

『うわ終わったわ』

しにがみ

『口調何時代の人だよ』

ロボロ

うっっっっさんくさ……。けどまぁ、敵意はなさそうやし、客としては扱っとこか。

鬱先生

ええの!?

チーノ

何か飲む?ドクペ?ウスターソース?

トラゾー

飲み物がクセ強っ!あ、じゃあ水で……

鬱先生

怪しいけど、こんなタイミングで来るとはな……

ショッピ

ええんちゃいます。どうせ尻尾出すやろ。ほっといて作戦進めたらええ。

ロボロ

案内役はワイがやるで。こっち来

トラゾーの目線は、そっとモニターへ。そこには“みる”の名を冠した作戦資料と、配置図が映し出されていた――

鬱先生

……なんか、妙に目ぇ泳いどるように見えんか?

ゾム

まあええやろ。どうせバレへん。どうせ何考えてても俺らのが一枚上手やしな

ぺいんと

『うわムカつく………。』

しにがみ

『間違いではないですけど』

ぺいんと

うっ…………。

【裏回線:日常組サイド】

しにがみ

潜入成功!よしよし、作戦室に向かって……セキュリティ、突破完了っと!あ、でも今ギリギリでノートPCフリーズしかけました!

ぺいんと

頼むから止まんなよ!?トラゾー、通信入ってるか?

トラゾー

『バッチリ。今、作戦会議室の前。これより盗聴開始――』

ロボロ

ほんなら着いてこい

トラゾー

ロボロさん……あの。

ロボロ

おい。お前幹部の名前を気安く呼ぶな

トラゾー

あっ………すいません。

トラゾー

(ミスったァァァァガチギレロボロさん怖すぎだろ………)

ぺいんと

『ロボロ怖っ!!』

しにがみ

『どんだけ嫌なんですか名前で呼ばれるの』

ザッ…………ザ………ザ

グルッペン

『ロボロ、やっぱりそっちにショッピを行かせたお前は帰ってこい』

ロボロ

あ了解です

ロボロ

………。おいお前ここで待ってろ絶対に動くなよ

トラゾー

あ、はい。

ぺいんと

『今だトラゾー!』

トラゾー

お、おう………

【我々だ本部・作戦室】

グルッペン

“迎撃部隊”は東壁に配置、背面警戒にトントンとシャオロン。護衛対象はAルートで避難や。目覚めた彼女を、絶対に守り抜くで

トントン

動ける精鋭部隊は全員みるの護衛に回す。必要なら、前線を一度引いてでも守る

グルッペン

日常・らっだぁ両国、全面警戒体制入り。……“彼女”は今、何よりも重要なキーや

ゾム

ええで!全員ブチかましてでも通させん!!

シャオロン

守るだけやない。……“仕掛ける隙”も探らなあかん

鬱先生

意識は戻った。けど心は……まだ戻ってきてへん。せやから、焦ったらアカン

チーノ

おい、ここで“みるの過去”に触れたらどうや?それで自分を取り戻すきっかけに……

ロボロ

……リスク高いわ。中途半端に記憶刺激して、逆効果になったら最悪や

シャオロン

でも、ほんまもんの地獄をくぐってきたやつや。俺らが信じんでどうするんや

グルッペン

……なら決まりやな。作戦名“再会(さいかい)”。全員、持ち場につけ

トントン

ネーミングセンス終わっとんな

ザッ…………ザ…………ザ

ショッピ

『全員応答せよ!!あいつ居なくなった!!』

ロボロ

は!?ショッピくんに送った場所から動くなって行ったんやけど、

チーノ

うわぁ……敵軍の可能性あり……?

オスマン

みるを確認しに行くめぅ!!

トラゾー

おっと……気づくのが早いな…

トラゾー

(これ……!全部録れてる?……録画ボタン押し忘れてた!!!)

【同時刻・我々だ本部外・ハッカー部隊潜伏中】

しにがみ

くっ……!録画は……無理でも!全部メモします!!!

クロノア

“護影”が“誤衛”になってるけど!やめてマジで怖い!

ぺいんと

クロノアさん!上手いこと言わないでください!!

ぺいんと

もう頼むからデータ飛ばすなよ!?それだけはやめてよ!?

しにがみ

大丈夫です!!僕の“記憶”に保存します!!

ぺいんと

俺がやろうか!?

クロノア

ぺいんとは絶対ダメ!!

トラゾー

『やべぇ我々だにみつかっちゃった☆』

しにがみ

何してるんですか!!

ぺいんと

もう完全不審者だ……

クロノア

トラゾー日常組だってバレないようにしてね!?

トラゾー

俺が捕まった時はぺいんと………。

トラゾー

透徹使ってきてくれ

ぺいんと

無理だろ

【応接室から移動中・病棟通路】

トントン

おいごらぁまてやぁ!

シャオロン

逃げとんちゃうぞ!!

トラゾー

やべぇやべぇw

しにがみ

『トラゾーさん!100m先の上にダクトあります!そこから出口繋がってるのでどうかご無事で!』

トラゾー

了解!!

トラゾー

よっと………。

鬱先生

どこいった!!

ゾム

間違いなくあいつ軍隊やろ

ショッピ

避け方が一般人じゃ考えられない動きでしたもんね

トラゾー

ふう……あぶねぇ

トラゾーは静かに一人歩いていた。誰もいない深夜のダクトの中。 そこに――薄暗い照明に照らされたベッドがあった。

トラゾー

ん?なんだあれ

少女、“みる”が眠るベッド。

トラゾー

……………。

その目に、ほんの少しの揺らぎがあった。 かつて、共に戦った仲間。あの笑顔を知っていた者として。

トラゾー

おかえり――また会えて、よかったよ。

そして、彼は背を向ける。 誰にも気づかれないように、その場を静かに立ち去った。

しにがみ

帰還お疲れ様です!ちなみに……録画データはどこにありますか!?!?

トラゾー

…ごめん、録画ボタン……押してなかった…

しにがみ

えええええええええええ!!!??

クロノア

じゃあ!あのバレるギリギリのスパイ活動は全部無駄!!?

ぺいんと

バカッップルのスパイ活動かよ!録画しろやそこは!

しにがみ

ぼ、僕は……!僕はメモは取りました……っ!

クロノア

で、そのメモはどこ?

しにがみ

…………紛失しました。

トラゾー

いや、泣きてぇのは俺のほうなんだけど!?

トラゾー

でもいや〜……目の前で見たらさ、なんか……“ただいま”って言いたくなった

ぺいんと

で、なんか言ったの?

トラゾー

“おかえり”ってな

しにがみ

うわぁ!ズルいズルいズルい!!僕も言いたかった!

ぺいんと

てかお前、“また会えてよかった”って……あれ何?キザすぎない?

クロノア

え、それって――好きだったってこと?

しにがみ

えぇ!?トラゾーさん!?そうだったんですか!?

ぺいんと

でもさっきのしにがみの反応………

しにがみ

ぺいんとさん?そんなことよりトラゾーさんどうなんですか!

ぺいんと

トラゾー!!

トラゾー

やめろ!?そのテンションで詰めてくんのマジでやめろ!!

クロノア

まぁ、みるって魅力あるもんな~?俺らもちょっと、ね?

ぺいんと

え?クロノアさん?

クロノア

え。みんな違うの?

しにがみ

いやいやいや?僕だって!護衛する気マンマンですし!みるさんのためならOSインストールし直します!!

ぺいんと

……どこ目指してんだよ、お前……

しにがみ

でもいいなぁ僕も言いたかったァ

ぺいんと

てか見たかった

クロノア

……次は、俺たち全員で言おう。――ちゃんと、目を見てさ

――騒がしい日常の中でも、心には確かなものがある。 “彼女”を巡って、世界はまだ動き続けていた。

【らっだぁ運営・隠し拠点】

らっだぁ

マジで!目覚めたんでしょ!? ヤッバ!ドラマかよ!

緑色

我々国が守りに入ってる。こっちのタイミング、逃したら詰む

金豚きょー

どの陣営も動き出してる……彼女を“奪う”か“守る”か、それを決めるのは――

レウクラウド

そんなもん、決まってんだろ? 俺らの手で“選ばせる”。

コンタミ

っしゃぁー!!やっと出番じゃあああ!やばいやばいやばい、俺テンション上がって今何も考えられん!

らっだぁ

コンタミ落ち着けって!お前が一番怖ぇよ!お前前回と全然キャラちげーじゃん!

緑色

作戦に支障が出るからマジで落ち着け。あと、らっだぁ……“みるみる大作戦”って名前、ほんとにやめてくれ

らっだぁ

えぇ〜!? じゃあ何にすんのさ〜!

レウクラウド

……“天秤作戦”。彼女がどちらに傾くか、それを見極める。

コンタミ

名前かっこよすぎて俺が傾きそう!

らっだぁ

お前まじどうした?頭狂った?www

金豚きょー

もともとだし……お前は真ん中でいいよ。

彼女が目覚めたことで、世界は再び動き出した。 守る者、奪う者、見つめる者―― 交差する運命の中で、戦火は静かに、しかし確実に燃え始めていた。

NEXT→♥️80

忘れられた君と、壊れかけた世界で

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