シクフォニ十二支―ニ

⚠注意⚠ こちらは完全なる二次創作です ご本人様には一切関係ございません 二次創作を知らない方、関係者様などの目に触れないようご配慮下さい 獣表現あります、苦手な方は閲覧をご遠慮下さい

それを聞いた瞬間、いるまの目に、一瞬だけ獰猛な光が宿ったような気がした

その圧に押され、ほんの少しだけ後ずさる

その場に、沈黙が落ちた

それを破ったのはいるまだ

そう言ったいるまは、持っていたナイフを足元に向けた

真下には＿大和の死体

淡々と喋りながら、いるまがしゃがむ

唐突に理解した

今から、いるまが何をしようとしているか

間に合えｯ…

いるまがナイフを振り下ろすのが、やけにゆっくりと目に映った

ｻﾞｼｭｯ

ｻﾞｼｭｯ

…ｯ間に合っ、た

左手に痛みと熱さを感じた瞬間、安堵が胸を襲った

動揺したいるまくんの声が耳に入る

手を見ると、いるまくんが持っていたナイフが左手を貫通していた

どうにか爆発は阻止できたみたいだ

俺は多分、あの場で誰よりも早くいるまくんのやろうとしていることに気づいた

全力で走って、一か八か振り下ろされたナイフの下に手を滑り込ませたんだけど、間に合ってほんとによかった…

らんらんもこっちに走ってきて、呆然としているまに抱きついた

なっちゃんとこさめちゃんも

らんらんの言葉に少しだけ息を呑んだ

また＿仲間を諦めなきゃいけない

すちくんみたいに

何度しても慣れることはない、 仲間を失う覚悟

どうにか、いるまくんとの別れも受け入れなきゃ…

そう思ったけど、次に聞こえてきた言葉は予想外なものだった

＿一緒に死のう

らんくんにそう言われた瞬間、思わず声が出た

死ぬことは別に怖くない

ただ、…驚きが大きかった

仲間を何よりも大事にしてきたらんくんが、そんなことを言うなんて

それでも妙に納得している自分がいるのは、未練がないから？

いや違う、きっと

たとえ仮初めだったとしても、いるまくんが与えてくれたものがすごく大きかったからだ

いるまくんのためなら、死んでもいいと心の底から思えるから

自分の口からこぼれた言葉に1番動揺したのは、俺自身だったと思う

今まで、自分なりにだけど仲間を優先順位の1番上に置いて大事にしてきた

こんな仕事だから、みんな自分を愛する余裕なんて持っていない

その分俺がみんなを守って、精一杯愛そうとがんばってきた

もういいかも

俺は十分頑張っただろう

なんて

思ってしまうのは罪だろうか

いるまから弱音を聞いたのは、いつぶりだろうか

普段は絶対に見せることのなかった涙を一粒こぼしてはにかんでみせたその顔は、幼い子供のようでいて少し大人びている

その表情から、いるまがどれだけ壮絶な人生を生きてきたか分かった気がした

みんなでいるまを囲むように抱きつく

足元の大和に視線を移して狙いを定め、魔力を高める

俺は、静かに口を開いた

ﾄﾞﾝｯ

ﾄﾞｵｫﾝ!!

俺の魔力が弾けると同時に、視界が火に包まれ熱風が体を襲った

一瞬だけ熱を感じた後、体に触れていた温もりが消え、まぶたが徐々に重くなる

最後にそう思えただけで、俺の人生も悪くなかった、そう感じられた

ﾋｭｩｩ…

爆発で焼けた草原を、風が通り過ぎていく

まだ熱さの残る草の上には、痛々しい火傷を全身に負った五つの体があった

既にほとんどが事切れているようだが…

ただ1人、起き上がった人物がいた

紫の髪、鋭い光を宿した金の瞳

他でもない、いるまだ

そう言って、倒れているうちの1人に歩み寄る

まだ辛うじて息はあるようだが、致命傷を幾つも負っているようだ

残された時間が少ないことは容易に想像できた

みことの問いかけに、いるまは笑いながら答えた

そう言って、いるまはみことに背を向け歩き出した

清々しいほど明るく、無邪気な声で、いるまは笑ってみせた

その笑顔は、みことが初めて見た、人間味に溢れるものだったという＿

この話のタイトルは＿

『裏切り、裏切られ』

孤独な少年達が、『本当の』幸福と絶望を知る物語。