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矢城と美羽は、2人並んで本部の廊下を歩いていた
目的は総隊長室。何度か来たことがあるため道は把握している
美羽
勇也
勇也
それきり美羽は言葉は発さなかった
総隊長室の扉を開ける
勇也
美羽
雪
雪
雪と界人はいつも通りの仏頂面だ
しかし目には不安や悲しみとも違う、複雑な色が滲んでいた
雪
雪
矢城と美羽は手に力を入れる
雪
雪
矢城の顔が引きつる
雪
勇也
雪
一呼吸置いてから、雪は告げた
雪
美羽は「えっ」と声を漏らす
矢城は目を閉じ、深呼吸をした
勇也
勇也
雪
雪
雪
雪は「界人」と声をかける
界人
界人
界人
矢城は唇をきゅっと結んだ
カーディガンの裾を右手で強く握る
界人
勇也
勇也
勇也
重い沈黙
淀んだ空気の中、界人は口を開く
界人
勇也
勇也
勇也
美羽は二人の顔を交互に見る。動揺しているようだ。界人はため息をつく
界人
界人
今回は俺の過去だったからまだしも、"彼女"のものだったら―
界人
勇也
矢城が顔をそらす。その様子を見て、雪は美羽に向き直した
雪
雪
雪
矢城は迷う。入隊すれば自分の衣食住などは確保される
しかし、戦闘となると―
美羽のほうをちらと見る
美羽
美羽
美羽
彼女の発言に矢城は驚いたように目を剥いた
彼女のことだ、と納得はするものの、やはり彼女一人では不安だ
彼女の返答を聞き、雪と界人の表情は少し柔らかなものとなった
界人
勇也
雪
勇也
雪
雪
数秒間、矢城は黙っていた
部隊に入れば最低限の生活は保障される。そして、異能の制御も可能
けど、戦闘で生きて帰ることができるとは限らない。それに美羽も…
勇也
二人の異能の発現はつい最近のことだ
生まれてすぐならまだしも、この短期間で制御可能になるとは考えられない
彼の脳内に、一つの映像が浮かんだ
血に染まった地面には、動かなくなった美羽の体。呆然と立ち尽くす自分―
やがて彼は、覚悟を決めたように顔を上げた
勇也
勇也
勇也
隊員が全員帰路についた頃
雪と界人は総隊長室に残っていた
界人
雪
雪
雪
界人
界人
雪
界人は息を詰まらす
界人
彼はポケットから煙草を一本取り出し、ライターで火をつけた
雪
雪
雪
界人
界人
彼女なら怖くないと答えるだろう―彼はそう思った
しかし返答は真逆のものだった
雪
界人
彼女は窓に体を向け、話す
雪
雪
雪
界人
雪
雪
雪
彼女は顔だけこちらに向け、界人を指さす
雪
界人
月明かりに照らされる彼女は、青白く輝いて見えた
第一章 完