図書室からの帰り道。
並んで歩いているのに、会話はほとんどなかった。
さっきの「かわいい」という言葉が、頭の中で何度もリフレインする。
"冗談だったのかな"
"からかわれただけ?"
それとも、"本気_?"
橙 。
私はついに口を開いた。
緑 。
橙 。
聞いてしまった。
自分でも驚くくらい、声が震えていた。
緑 。
緑は一瞬驚いた顔をしたあと、笑って答えた。
緑 。
緑 。
橙 。
緑 。
橙 。
嘘だった。
めちゃくちゃ気にしてた。
私の心は今、彼の言葉ひとつでこんなにも浮き沈みする。
それなのに、彼はまるで無自覚に、爆弾を落としてくる。
私はもう、"好き"をちゃんと理解してしまった。
この感情は、れっきとした恋で。
そして私は_"緑に触れたい"と思ってしまっている。
手を繋ぎたい、とか。
名前をもっとたくさん呼ばれたい、とか。
そういうこと全部を、ふとした瞬間に願ってしまう。
だけど、それを言葉にしてしまったら、今の関係はきっと崩れてしまう。
"好き"は伝えたくて、でも伝えたら終わってしまう気がする。
橙 。
ぼそりとこぼした呟きに、緑は気づかず、空を見上げていた。
緑 。
緑 。
橙 。
"友達"としてなら、私はどこまでもそばにいられる。
けれど、恋人としての一歩は、まだ踏み出せない。
コメント
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無自覚緑彡は困っちゃうなぁ笑 恋人としての一歩は踏み出せないもんだよ