蒼玉邸の裏に離れがある。 春川一家はそこの食堂にいたんだと。
本当なら参加者全員で夕食を摂るところを、他の人が起きてこないもんだから、5人だけ先に食べてたらしい。
一家はまず、腹痛を訴えた。 かき込んだら、胃がびっくりしているのかもって最初は笑ってたとか。
そのうちに全員が脂汗を浮かべて、そこからはあっという間だった、っていうのが、俺たちを呼びに来た使用人の話。
死んだって聞いて、俺達は急いで離れの食堂に駆けつけた。
先頭を切っていた使用人が、食堂の扉を開いて、叫んだ。
使用人
使用人がこの部屋を出たときと 様相が違っているんだと。
5人は、食卓に突っ伏していた。 その腕とか顔に、細い刃で切りつけたような搔き傷が無数についてたんだ。
室内だっていうのに、なぜか死体は泥まみれで。何かにあたったとか、食中毒じゃ、そんな風にはならないだろう。どうしてこんな風になってるわけ。
俺
俺
使用人
とにかく、警察に連絡しよう、という話になったものの、携帯電話の電波が入られない。
屋敷には電話がない。どうなってんだよ、なんて、使用人が責められてたけど、使用人も、直前に呼ばれただけのただのバイトで、何も聞かされてないんだって。
もう夜になってたし、移動手段もなくて道が分からないから、とにかく明るくなったら、山を下りて警察を呼ぶからって。全員揃って待っていてくれって。
それで、その夜は、それぞれの部屋で眠ることになった。落ち着かなかったな。同じ屋敷の中に、5つの死体があるなんてさ。
俺
そんなことを悶々と考え込んでいるうちに、夜は明けた。
朝。屋敷から、使用人がいなくなってた。警察に行ったのかなって納得しかけたんだけど、誰にも言わずに姿を消したって、なんか怪しくないか…。
とにかく、待ってみた。全員揃って、律儀に。けれど、午後になっても使用人は戻らなかった。
そのうち、あの使用人が春川一家を殺したんじゃないかとか、いやいや、やっぱり普通に警察に行ったんじゃないかとか、責任をとれないからって逃げたんだろうか、とか。残ったメンツで大騒ぎ。
そのとき誰かが
使用人
と言って、紙を1枚、恐る恐る持ってきた。蒼玉邸の、地下にある厨房の扉に、貼り付けられていたんだと。怪文書って感じ。新聞の文字を切り貼りしてあってさ。
彼には退場してもらいました
と、あった。……彼?
封筒の中身。剥がされた爪、10枚。少し……、肉も残ってた。 怪文書から鑑みるに、使用人の……。
俺
俺
俺
屋敷のなかを歩き回ってみたところ、出入り口はすべて、外側から封鎖してあった。鍵自体は開けられたんだけど、扉の外で、持ち手を鎖で雁字搦めにしてあって、ご丁寧に南京錠まで掛かってた。
俺
俺
俺
窓の雨戸も全て閉じてあった。 逃げられないように。
「何」から?
「犯人」から。
犯人―それは、怪文書を寄越した人間。一家5人を殺害して、使用人の爪を剥いで消し、屋敷を封じた…
殺人鬼
その存在を、俺達はようやく認識した
俺達は狙われている。どれほど、恐怖したか。殺される。しかも手段はかなり猟奇的。
腹が減ったと訴える人も出てきたけれど、だからといって誰も、何も食べられなかった。厨房にでも行けば何かあったのかもしれないけど、食材に毒でも入っていて、春川一家みたいに死んじまったら……。
使用人が駆け込んできてみんなで事情を聞いてた時に、夕食は味見をしながら作ってたから、毒なんて入っていない、と彼はしきりに訴えてた。けれど、信じることなんてできない。賭けるわけにもいかない。5人を一気にあの世送りにして、使用人の爪を剥ぎ、もしかして殺したかもしれない、殺人鬼が、どこかにいる。
いつ殺されるものかと怯えたよ。おれも、おれの一生はここで終わるのかって、絶望的な気持ちになった。
コメント
2件
僕は君を☆☆☆ないのパクリやん
凄い遅れて申し訳ございません🙇💦 まだ続きはあります 良かったら❤とフォローヨロ(`・ω・´)スク!