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虚空に舞う夜桜と誓い

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虚空に舞う夜桜と誓い

2 - 第一章  第一話 光の仮面

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2025年08月02日

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ここからが本編です。↓へLet's Go

教室の窓から差し込む陽射しが、夜桜 輝(よざくら てる)の銀髪を 柔らかく照らす。

鮮やかな青い瞳は、開いたまま読んでいる教科書を見ているようで、 実際は何も見ていない。

それでも、その整った表情に違和感はなく、 周囲の誰もが彼を「完璧な優等生」だと思っていた。

生徒A

やっぱり夜桜先輩って、いつ見てもカッコよくて優しいよな〜

生徒B

瑠花ちゃんのお兄さんなんだよね?兄妹揃って美形すぎん?

生徒C

しかも生徒会副会長だし……ちょっと完璧すぎて怖いまである

夜桜 輝

はは、そんなことないよ。俺も寝坊することあるし、得意じゃない教科もあるし……

そう言って笑う彼の声には、どこか冷たい余白があった。

夜桜 輝

(ああ、今日もちゃんと笑えてる……バレてない)

教室のドアが開き、生徒会長の声が響いた。

生徒会長

夜桜、昼休み、会議室な。例の予算案、まとめておいてくれ

夜桜 輝

了解です

プリントをまとめて立ち上がる。背筋は真っ直ぐ、身長185cmという体格が目立つのに、それを威圧と感じさせないのが彼の不思議な魅力だった。

昼休み。生徒会室。

机に書類を並べ、淡々と予算案を仕上げる輝。だが、その手元がふと止まる。

喉の奥からこみ上げてくる感覚に、彼は書類を握りしめたまま、 無言で立ち上がる。

夜桜 輝

(……まずい)

部屋を出て、誰もいない校舎裏の非常階段へ。 誰にも見られないように背を向けてしゃがみ込み、指を喉の奥へ差し込む。

――カハッ、ゲホッ……ビチャッ……!

何も食べていない胃からは、苦い液体だけが吐き出された。

胃がキリキリと痛む。

それでも、表情は無に。すぐにハンカチで口を拭き、 何事もなかったかのように立ち上がる。

夜桜 輝

(……まだ大丈夫)

放課後、寮の部屋。

妹・瑠花(るか)が部屋のドアをノックする。

彼女の美しさはまさに「至高」と呼ばれるにふさわしく、 桃色の照明のように柔らかい雰囲気を纏っていた。

瑠花

輝兄、お風呂先入っていい?

夜桜 輝

ああ、いいよ。タオルは新しいの使ってね。

瑠花

うん、ありがとう〜

ドアが閉まり、輝はベッドに沈み込む。 顔を腕で覆いながら、ひとつ、深く息を吐く。

夜桜 輝

(――まだ、崩れない。あの日のことがあるまでは……)

彼の脳裏に浮かんだのは――

燃え盛る家

倒れた母・柚華

冷たくなった兄・煇の姿

血を流す妹・美麗

──誰も、守れなかった。

胸の奥に穴が開いたような喪失感。

それでも、輝は学園では「完璧な優等生」で居続ける。

瑠花と耀だけは、失いたくない。

彼は今日も、笑顔の仮面を被る。

虚空に舞う夜桜と誓い

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