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主
教室の窓から差し込む陽射しが、夜桜 輝(よざくら てる)の銀髪を 柔らかく照らす。
鮮やかな青い瞳は、開いたまま読んでいる教科書を見ているようで、 実際は何も見ていない。
それでも、その整った表情に違和感はなく、 周囲の誰もが彼を「完璧な優等生」だと思っていた。
生徒A
生徒B
生徒C
夜桜 輝
そう言って笑う彼の声には、どこか冷たい余白があった。
夜桜 輝
教室のドアが開き、生徒会長の声が響いた。
生徒会長
夜桜 輝
プリントをまとめて立ち上がる。背筋は真っ直ぐ、身長185cmという体格が目立つのに、それを威圧と感じさせないのが彼の不思議な魅力だった。
昼休み。生徒会室。
机に書類を並べ、淡々と予算案を仕上げる輝。だが、その手元がふと止まる。
喉の奥からこみ上げてくる感覚に、彼は書類を握りしめたまま、 無言で立ち上がる。
夜桜 輝
部屋を出て、誰もいない校舎裏の非常階段へ。 誰にも見られないように背を向けてしゃがみ込み、指を喉の奥へ差し込む。
――カハッ、ゲホッ……ビチャッ……!
何も食べていない胃からは、苦い液体だけが吐き出された。
胃がキリキリと痛む。
それでも、表情は無に。すぐにハンカチで口を拭き、 何事もなかったかのように立ち上がる。
夜桜 輝
放課後、寮の部屋。
妹・瑠花(るか)が部屋のドアをノックする。
彼女の美しさはまさに「至高」と呼ばれるにふさわしく、 桃色の照明のように柔らかい雰囲気を纏っていた。
瑠花
夜桜 輝
瑠花
ドアが閉まり、輝はベッドに沈み込む。 顔を腕で覆いながら、ひとつ、深く息を吐く。
夜桜 輝
彼の脳裏に浮かんだのは――
燃え盛る家
倒れた母・柚華
冷たくなった兄・煇の姿
血を流す妹・美麗
──誰も、守れなかった。
胸の奥に穴が開いたような喪失感。
それでも、輝は学園では「完璧な優等生」で居続ける。
瑠花と耀だけは、失いたくない。
彼は今日も、笑顔の仮面を被る。