最寄りの駅に着いた陸は再び携帯を確認するが
イルからの返事はなく
そのまま帰るか迷った挙げ句
とりあえず川原に向かうことにした
自転車を漕ぎ進める陸の視界に
徐々に川原が見えてくる
松崎陸
あっ!!
陸が驚き自転車を止める
視線の先にはイルの姿が
松崎陸
浜松!
浜松イル
松崎君……
松崎陸
その顔どうしたんだよ!?
イルの額は赤く腫れ上がり
よく見ると頬には涙の跡が残っている
松崎陸
何時からいたんだ?
浜松イル
お昼過ぎ……
松崎陸
学校、飛び出してきたのか?
浜松イル
うん……
松崎陸
メールくれたら駆けつけたのに
松崎陸
ってか俺のメール見た?
浜松イル
ごめんなさい……
浜松イル
電源切ってたの
松崎陸
どうして……
イルが陸に経緯を説明する
学校で起きたこと
圭子に助けたいと言われたこと
しかしイルにとって圭子の言葉は
厄介でしかなかった
その圭子からの着信やメールを避けるため
昼からずっと電源を切っていた
松崎陸
その友達、面倒くせーな
浜松イル
助けたいって言ってくれるけど
浜松イル
その子の助けるって先生に告げ口することで
松崎陸
そんなことしたら
松崎陸
余計に酷くなるだろ……
浜松イル
中学の時がそうだったから
浜松イル
やめてほしいのに……
松崎陸
正義感の塊ってやつ?
松崎陸
でもよかった
浜松イル
え?
松崎陸
会いたかったから
浜松イル
会いたかったって、私に?
松崎陸
ダチじゃん!俺ら!
浜松イル
ありがとう……
イルの目から再び涙が溢れる
浜松イル
私もね
浜松イル
ここに来たら会えるかな?って思って
松崎陸
俺も……
松崎陸
ここに来たら会える気がしてた
浜松イル
ここ、静かだから落ち着くし
松崎陸
だろ?
松崎陸
いい場所だよな、ここ
浜松イル
うん
朝からずっと張り詰めていたイルの心が
陸の言葉で緩んでいく
陸はあまり多くを語らず
少ない言葉の中に思いを込めて話していた
それがイルの心に響いて
陸のことを信じようと思えるようになっていったのだ
松崎陸
あのさ
松崎陸
実は俺……
陸も学校でのことを話した
担任と養護教諭に傷のことを話し
落ち着くまで保健室登校を進められたこと
全てを話したところで
イルが呟く
浜松イル
羨ましい
松崎陸
浜松も担任に言えば何かしてくれるんじゃねーか?
浜松イル
何て言うの?
浜松イル
傷のこととか知られたくないし
浜松イル
いじめられてることだって……
松崎陸
ごめん……
松崎陸
でも、このままだと……
松崎陸
心配だから……
浜松イル
ありがとう……
浜松イル
うれしい……
松崎陸
(浜松を助けたいのに……)
陸の心に悔しさが込み上げる







