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コメント
3件
… 意味深でなんかいい
うわ…読了しました。冒頭の「雪は嫌いだ。音を消してしまうから」で一気に引き込まれました。ころんがロープを握って引きずる姿、捨てれば楽になるのに離さない矛盾が切ないです。特に「生きたいくせに生きるためのものを捨てている」という一文、心に刺さりました。ラストの「自由だ」という解放感と虚しさの同居がたまらなくて、思わず息を呑みました。続き、とても気になります…!
雪は嫌いだ。
音を消してしまうから。
叫び声も、足音も、後悔も。
全部なかったことみたいに埋めてしまう
俺は雪の中に横たわっていた。
寒さは感じない。
痛みもない
ただ空だけが見える。
白い。
どこまでも白い。
まるで世界が終わった後みたいだった
そして。
その白の中を歩く影がある。
ころんだ。
ロープを握り、俺を引きずりながら進んでいる。
ずっと
ずっと
ずっと
さとみ
さとみ
声は届かない。
俺はもうここにはいない
なのにあいつは俺を離さない。
捨てれば楽になるはずなのに。
重たいだけなのに。
それでも引きずり続ける。
雪の上に長い跡が残る。
それは俺の跡じゃない。
ころんの傷跡だ。
_____
いつからだろう。
あいつが笑わなくなったのは
笑っているように見えても
どこか壊れた音が混じるようになったのは。
俺は知っていた。
だけど気付かないふりをした。
大丈夫だと思った。
隣にいれば。
時間が経てば
勝手に治ると思ってた
甘かった。
本当に
どうしようもなく
_____
ころんが立ち止まる。
吹雪の中。
小さな炎を抱きしめている。
消えそうな火だ。
けれど手放そうとしない。
まるで祈りみたいだった
さとみ
その炎を。
俺は知っている。
希望なんかじゃない。
もっと厄介なものだ。
後悔だ
執着だ
忘れられない記憶だ
暖かいくせに
持っていると前に進めない
そんな火だった。
_____
やがて。
ころんはコートに手をかけた。
俺は目を見開く。
やめろ
そう言いたかった。
寒いだろ
死ぬぞ
そんなの。
そんなの生きるために必要なものだろ。
それなのに
ころんは笑う。
壊れたみたいに。
泣いているみたいに。
そして一枚ずつ脱ぎ捨てていく。
コート
手袋
マフラー
雪の上へ落ちる。
矛盾だ。
生きたいくせに。
生きるためのものを捨てている
忘れたいくせに。
俺を引きずり続けている
前に進みたいくせに
振り返り続けている。
むちゃくちゃだ。
_____
_____
だけど
それでいいのかもしれない
人間なんて。
最初から矛盾の塊だ
忘れたいのに忘れられない。
嫌いなのに愛している。
終わらせたいのに終わらせられない
ころんだけじゃない
俺もそうだった。
_____
吹雪が強くなる。
俺の身体は少しずつ雪に埋もれていく。
もう姿も見えなくなりそうだ。
それなのに
不思議と怖くなかった。
ころんが最後に振り返る。
赤く揺れる炎。
震える瞳
ころん
ころん
ころん
俺は笑った。
たぶん
見えてはないけど
さとみ
届かない声で言う。
さとみ
雪が降る。
世界は白く閉じていく。
ころんは立ち尽くしたまま動かない。
それでも
いつか動き出すだろう
俺を忘れたからじゃない。
忘れられないまま。
それでも進むために。
その背中が吹雪の向こうへ消えていく。
最後まで炎だけが揺れていた。
まるで消えそうで。
まるで永遠に消えないみたいに。
さとみ
さとみ
俺は鼻で笑った
さとみ
さとみ
訳も分からない
でも、謎の解放感があった
俺はころんの行った先へもう、半透明の足で走った。
ころんは倒れていた。
俺と同じように、白く、人形のように。
俺はころんの体を持ち上げた。
さとみ
俺は狂ったように踊った。
もう動かないころんを抱えながら。
さとみ
さとみ
その後、虚しい感情に覆われた。
白い
白い
白い
この空間からは
逃げられなかった