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あいか
あいか
あいか
あいか
桜が嫌いだった。 正確には、桜が咲く季節が嫌いだった。 桜は、毎年同じように咲く。 何も変わらない顔をして。 けれど俺にとっては、その「毎年」が少しずつ遠くなっていた。 病院の窓から見える桜を眺めながら、俺は小さく息を吐いた。
LAN
俺の病気が分かってから、もう随分経った。 最初は、すぐに元の生活に戻れると思っていた。 でも、思ったより時間は早く過ぎていった。 そして。 俺には、みんなに言えていないことがあった。
こさめ
LAN
なつ
こさめが笑いながら入ってきた。 その後ろから、いるま、みこと、すち、なつも続いてくる。
いるま
いるまが笑う
みこと
みことが紙袋を差し出した
LAN
すち
中には、小さなアルバムが入っていた。 ページを開く。 そこには、俺たち六人の写真がたくさん貼られていた。 くだらないことで笑っている写真。 変なポーズをしている写真。 桜の木の下で撮った写真。
LAN
なつ
なつが何気なく言った。 俺は一瞬だけ、手を止めた。
LAN
すち
すちが優しく笑った。
すち
LAN
俺は笑った。 その言葉を信じたかった。 本当に。
それから俺たちは、できるだけ一緒に過ごした。 病室でゲームをした。 くだらない話をした。 昔の失敗を掘り返して、大笑いした。 時には、何も話さずに窓の外を眺めた。 そんな時間が、俺は好きだった。 ある日。
LAN
こさめ
俺は窓の外を見ながら言った。
LAN
五人が一斉に俺を見る。
こさめ
LAN
こさめ
こさめが嬉しそうに笑った。
春。 俺たちは六人で、あの桜の木の下にいた。 風が吹く。 花びらが舞う。
LAN
俺が小さく呟く
こさめ
こさめが笑う。 いるまは桜を見上げている。 みことは写真を撮っている。 すちは静かに花びらを眺めていて。 なつは、俺の隣に座っていた。
なつ
LAN
なつ
LAN
そう答えた。 本当は。 その約束を守れるかどうか、俺自身にも分からなかった。 だからせめて。 今だけは。 みんなと笑っていたかった。
季節が巡った。 桜が散った。 夏が来て。 秋になって。 冬が過ぎた。 そして、また春が来た。 桜が咲いた。 けれど。 その桜の木の下に、俺はいなかった。 五人は、静かにそこへ集まった。
いるま
いるまが呟く。
みこと
みことが頷く
誰も、笑わなかった。 すちが持っていたアルバムを開く。 最後のページには、六人で撮った写真。 そして、その下にはらんの字で短い言葉が書かれていた。
LAN
こさめ
声が震えた。 なつが静かに空を見上げる。
なつ
こさめ
なつ
風が吹いた。 桜の花びらが、五人の間を通り抜ける。
なつ
誰も答えなかった。 ただ、五人は桜の木の下に座った。 去年と同じ場所。 同じ桜。 違うのは。 隣にいるはずの一人が、いないことだけ。
みことがアルバムを閉じる
みこと
すちが頷く
すち
いるま
いるまがいった
こさめ
なつ
なつがこたえた
その瞬間。 風が吹いた。 桜の花びらが、まるで空から降ってくるように舞った。 五人は空を見上げた。 そして、誰からともなく笑った。 悲しくても。 寂しくても。 泣いてしまっても。 らんと過ごした時間が消えるわけじゃない。 六人で笑った日々は、これからもずっと残っていく。
だから。 今年も。 来年も。 その先も。 五人は桜の木の下に集まる。 そこにはきっと。 あの日と同じように、六人分の思い出があるから。 ――桜が咲くたび、君を思い出す。 そして俺たちは、今日も空を見上げる。 「また来年も、ここで」 あの日の約束を、胸に抱いて。
#死ネタ
ぴよ
120
遥斗 凪
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コメント
1件
読了しました。第4話、とても沁みました。 「桜が嫌いだった」という冒頭の一文が、最後の「桜が咲くたび、君を思い出す」に回収される構成が美しいです。LANがみんなに言えなかったことの伏線が、最後の「約束」と五人の姿で静かに効いてくる。病室の写真、アルバム、そして花吹雪――「時間が消えるわけじゃない」という一文に、すべてが集約されていました。 泣けました。良い話をありがとうございます。