放課後の音楽室
儚くも美しく 聞き惚れてしまいそうな声が
才能とも呼ばれた声が聞こえる
その美声は世界的に取り上げられ
海外からも注目される──
筈だった
千秋
私
ゆさゆさと 私の体を揺らす千秋
条件反射みたいに 同調の返答をする私
何気ない日常
千秋
私
千秋
千秋
人差し指を唇に押し付けて
怪しく笑う千秋
千秋って、形から入るのは 上手だったっけ。
私
千秋
いくら興味無さそうに 返事しても
目をキラキラさせて 話し出す千秋
私
小さな声で呟いても
千秋の耳には 掠ることさえ無かった
千秋
私
ニコニコで上機嫌な千秋
相対的に少し憂鬱な私
実は、ホラーが ちょっと苦手だったり…笑
千秋
ゆっくりと話し始めた千秋
こうなったらもう止められない
千秋
千秋
千秋
千秋
千秋
千秋
私
なんとも悲しい話だ
歌姫とも呼ばれた彼女は
どんな気持ちで 歌ってるんだろうか
私
千秋
千秋
千秋
ニタニタしながら 胡麻をする千秋
私
ため息混じりで呟いた
呆れたふりをしながらも
内心ワクワクしてたのは内緒。
千秋
私
ホームルームが終わり
帰りの準備もほどほどに
私達は教室を飛び出した
廊下に上靴の音が響く
規則正しいその音に
私の少し切れた息も混じった
私
音楽室前に来ると
案の定、知らない歌声が
美しくも儚い 聞き惚れそうな歌声
目を閉じたら眠ってしまいそうな 心地よさの中に
燃えるような力強さを感じる 素晴らしい歌声だった
私
千秋
千秋
話してる最中にも
女の子の歌声は鳴り止まない
私
千秋
私
歌声がピタリと止まり
音楽室から声が聞こえた
聞こえてた…?!
私
ドアに寄りかかったのだろうか
カタン、と ドアが揺れる音がする
千秋
安堵するような彼女の声
そう言えば 練習場所変えたっけ。
千秋
千秋
私
千秋
止めようとしたけれど
千秋の勢いは止まらなかった
千秋
千秋
千秋
勢いよく質問攻めする千秋に
歌姫の堪忍袋の緒が 切れたようだった
私
しまった、という顔をして 私を見る千秋
怯えているようで 目が潤んでいた
叫び散らした言葉が 刺さるように胸を突く
歌いたかったのに歌えない
歌姫と呼ばれた彼女はそれが どれほどの苦痛だったのだろうか
自分の歌に価値がないのはどれだけ彼女のプライドを壊したのか
計り知れない思いが あったのだろう
話し終わった彼女は スッキリしたような声だった
少し震えているから 泣いたのだろうか
……どっちでもいいか。
私
私
私
私
そっとドアに触れると カタン、と音がした
当然、温度は無くて
ドアの向こうの彼女にも 同様に体温はないのだろう
私
私
生まれ変わった時にでも──
私
ドアの向こうで
彼女が薄く笑った気がした
その感覚とほぼ同時に
ドアの向こうの 彼女の気配がなくなった
私
私
放課後の帰り道
歌姫と関わってたせいで ほんのちょっと薄暗い
千秋
私
私
千秋
納得したように千秋が頷く
さっぱりな私は 早く説明してほしい。
千秋
千秋
いたずらっぽく尋ねてくる千秋
こういうときの千秋って 本当悪魔…
私
私
千秋
千秋
怒ったフリで すぐに素直になるなぁ…
ちょろいちょろい♪
すると、千秋が急に 真面目な顔になって
千秋
千秋
私
貴女達は、合唱部?
そう、なら良いわ…
呪ってやりたい、殺したい、憎い憎い憎い憎い!!
合唱部なんて滅んでしまえ!
そしたら、あいつらが居なくなって…
清々したなぁ…