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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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〜♪

放課後の音楽室

儚くも美しく 聞き惚れてしまいそうな声が

才能とも呼ばれた声が聞こえる

その美声は世界的に取り上げられ

海外からも注目される──

筈だった

千秋

ねぇーねぇー菜摘ぃー

なぁーにぃー千秋ぃー

ゆさゆさと 私の体を揺らす千秋

条件反射みたいに 同調の返答をする私

何気ない日常

千秋

放課後の音楽室の噂、知ってる?

え?

千秋

音楽室の噂

千秋

知ってる?

人差し指を唇に押し付けて

怪しく笑う千秋

千秋って、形から入るのは 上手だったっけ。

知らなーい

千秋

その音楽室の噂がね…!!

いくら興味無さそうに 返事しても

目をキラキラさせて 話し出す千秋

そういうとこ、ホント変わんない…

小さな声で呟いても

千秋の耳には 掠ることさえ無かった

千秋

その音楽室の噂なんだけど…

うん

ニコニコで上機嫌な千秋

相対的に少し憂鬱な私

実は、ホラーが ちょっと苦手だったり…笑

千秋

数年前、この学校には歌姫とも呼ばれる合唱部の子がいたんだって

ゆっくりと話し始めた千秋

こうなったらもう止められない

千秋

合唱コンクールでは優勝候補

千秋

そして多くの優勝経験者で、全国的にも有名だった

千秋

ある日、その子にドイツの合唱コンクールに出ないか、って誘いが来て

千秋

その子はドイツ行きの飛行機に乗ってドイツへ

千秋

その行く途中、飛行機が墜落してその子は海の底へ沈んだの

千秋

そして今も尚、合唱部として第一音楽室で歌ってるんだって

……なるほど

なんとも悲しい話だ

歌姫とも呼ばれた彼女は

どんな気持ちで 歌ってるんだろうか

……で?

千秋

……あ…

千秋

今回も行ってくれます?

千秋

一緒に♡

ニタニタしながら 胡麻をする千秋

……はいはい

ため息混じりで呟いた

呆れたふりをしながらも

内心ワクワクしてたのは内緒。

千秋

ねぇねぇ、早くー!

はいはーい…

ホームルームが終わり

帰りの準備もほどほどに

私達は教室を飛び出した

廊下に上靴の音が響く

規則正しいその音に

私の少し切れた息も混じった

 

〜♪

…?!

音楽室前に来ると

案の定、知らない歌声が

美しくも儚い 聞き惚れそうな歌声

目を閉じたら眠ってしまいそうな 心地よさの中に

燃えるような力強さを感じる 素晴らしい歌声だった

これが例の…?

千秋

うん。

千秋

女の子が歌ってる

話してる最中にも

女の子の歌声は鳴り止まない

ねぇ、入るの?

千秋

そりゃ、もちろん……

 

 

誰かいるの?

ふぇぇっ?

歌声がピタリと止まり

音楽室から声が聞こえた

聞こえてた…?!

 

もしかして…合唱部?

えっ?

ドアに寄りかかったのだろうか

カタン、と ドアが揺れる音がする

千秋

いえ、私達は美術部で…

 

……そう。

 

 

ならいいわ。

安堵するような彼女の声

そう言えば 練習場所変えたっけ。

 

貴女達は何をしに来たの?

 

もしかして、私の噂…?

千秋

そうです。

千秋

ねぇ、貴女は

千秋…っ

千秋

どうして毎日ここで歌っているの?

止めようとしたけれど

千秋の勢いは止まらなかった

千秋

貴女は本当に歌姫なの?

千秋

どうして出てこないの?

千秋

どうして…

 

うるさいっ!!

勢いよく質問攻めする千秋に

歌姫の堪忍袋の緒が 切れたようだった

千秋っ…

しまった、という顔をして 私を見る千秋

怯えているようで 目が潤んでいた

 

うるさいうるさいうるさいうるさい!!!

 

大嫌いだったの!

 

ここで歌う奴らが!!

叫び散らした言葉が 刺さるように胸を突く

 

今の合唱部が大嫌いだった!

 

大した実力もない癖に…私の方が上手いのに…!

 

幽霊部員とかふざけんな!

 

呪ってやりたい、殺したい、憎い憎い憎い憎い!!

 

合唱部なんて滅んでしまえ!

歌いたかったのに歌えない

歌姫と呼ばれた彼女はそれが どれほどの苦痛だったのだろうか

自分の歌に価値がないのはどれだけ彼女のプライドを壊したのか

計り知れない思いが あったのだろう

 

毎日ここで歌ってたの

 

自分の歌声は忘れたくなかったから…

 

そしたら、あいつらが居なくなって

 

清々したなぁ……

話し終わった彼女は スッキリしたような声だった

少し震えているから 泣いたのだろうか

……どっちでもいいか。

瑠奈…さん?

 

えっ…?

歌姫、って昔テレビで見ました

 

…そんな事もあったかしら

この学校だったんですね…

 

まぁね

そっとドアに触れると カタン、と音がした

当然、温度は無くて

ドアの向こうの彼女にも 同様に体温はないのだろう

また、聞かせてくださいよ

 

え?

貴女の歌声を

生まれ変わった時にでも──

その声が、大好きでした

 

……えぇ。

ドアの向こうで

彼女が薄く笑った気がした

その感覚とほぼ同時に

ドアの向こうの 彼女の気配がなくなった

そういえばさぁ…

なんで嘘ついたの?

放課後の帰り道

歌姫と関わってたせいで ほんのちょっと薄暗い

千秋

え?

ほら、美術部って言ったじゃん

うちら合唱部なのにさ

千秋

あぁ…その事ね

納得したように千秋が頷く

さっぱりな私は 早く説明してほしい。

千秋

えーどうしようかな?

千秋

教えようかな??

いたずらっぽく尋ねてくる千秋

こういうときの千秋って 本当悪魔…

そういうの良いから

早く!

千秋

はいはーい

千秋

言いますよー、ちゃんと。

怒ったフリで すぐに素直になるなぁ…

ちょろいちょろい♪

すると、千秋が急に 真面目な顔になって

千秋

合唱部と名乗って放課後の音楽室に入るとね…

千秋

音楽室に入ったまま、消息不明になるんだって。

えっ…?

貴女達は、合唱部?

そう、なら良いわ…

呪ってやりたい、殺したい、憎い憎い憎い憎い!!

合唱部なんて滅んでしまえ!

そしたら、あいつらが居なくなって…

清々したなぁ…

この作品はいかがでしたか?

3,106

コメント

66

ユーザー

感動して終わりかと思いきや…ホラーだったとはぁぁ…😵😨

ユーザー

こ、こわーい…がたガタガタガタ…

ユーザー

良かった…ホラーだと思ってもらえた…

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