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学校には、想像以上に誰もいなかった。
耕崎一也
苦笑いを浮かべ、いつもの席へ向かう。
テキストに手を付けようとしたものの、うまく集中できない。
どこかがずっと、静かにざわざわと揺れているような感覚だった。
襲いくる不安感から逃れるように、制服の中のスマホに手を伸ばした。
耕崎一也
仲川陽太
耕崎一也
仲川陽太
耕崎一也
仲川陽太
耕崎一也
仲川陽太
耕崎一也
仲川陽太
耕崎一也
耕崎一也
仲川陽太
耕崎一也
仲川陽太
耕崎一也
仲川陽太
仲川陽太
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通話
06:02
最後の日まで傘に執着する友人を可笑しく思いながら、一也は通話を切った。
彼のハイテンションな声は、入学当初から少しも変わっていなかった。
耕崎一也
陽太がわざわざ今日学校に来る意味が 分からず、一也は難しい表情をしながら上履きで机の脚をつつき、画面をスワイプした。
クラスのグループチャットを開く。 アルバムをタップして最初に目に入るのは、つい先月行われた花火大会の写真。 毎年、少し肌寒くなってきた9月頃に 行われていたが、今年は時期を早めて 開催された。
一也のクラスはわりかしノリの良い生徒が多く、この日は浴衣や甚平を着て集まり、騒ぎ倒していた。
一也はあまりノるタイプでは無かったのだが、陽太に執拗に誘われたため、渋々了解の返事を送った。
陽太との待ち合わせ場所に着き、辺りを見回すがそれらしい人影は見えない。
どうしたのだろうとチャットを開くと、「ちょっと遅れるから待ってて」と連絡が入っていた。
気遣いの鬼のような彼が遅刻するのは相当珍しい。返事を返したが既読が付かないので、しばし屋台を見て回ろうと考えた。
祭りの気分に浮かれ、瓶のラムネをぐいぐいと飲んだ。ヨーヨーを3つ釣って、どの綿あめを買おうかと悩んでいた矢先、急にトイレに行きたくなった。
公衆トイレは屋台から若干離れた場所に位置していた。用を済ませ、虫がちらつく蛍光灯の下で手を洗っていた。
こんなにも夏の気分なのに蝉の声も聴こえないのが不思議でたまらなく、気付けば外の音に耳を澄ませていた。
川嶋 夕
仲川陽太
突然、脳内で蝉の大合唱が鳴り響いた。
血液が頭に集中して、耳の裏側がドクドクと波打っている。
ぐわんぐわんという文字が見えるほど割れるような音が脳内にこだましている。
仲川陽太
仲川陽太
いつも聞き慣れていた声が、割れ物を扱うかのように、柔らかく、拒否を示していた。
安堵、冷や汗と、割れるような蝉の声。
走り去っていく音。
目の前の鏡を見た。
酷い顔をした自分が、そこにあった。
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