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───今から数百年前。

子供たち

ねぇ!”とわ”様!

子供たち

またお話して!

”とわ”

いいわよ?

”とわ”

どんな話しがいいかしら?

子供たち

うーんとね

子供たち

白凌が活躍する話し!

子供たち

白凌が鵺(ぬえ)と戦う話し!

子供たち

それは三日前に聞いたでしょ?

子供たち

私は白凌が海坊主と戦う話しがいいな!

”とわ”

ふふっ

”とわ”

みんな本当に

”とわ”

白凌のことが好きなのね

子供たち

うん!!

物語の中の貴方───。

兄様を参考にして、

私が都合よく生み出した貴方。

お酒が好きで、

剣術では誰よりも強くて、

でも、

とても優しくて……。

そんな貴方は

物語の中で

活き活きと動き回り、

そして、

いつしか

誰からも愛されるヒトになった。

それが

私は

何よりも嬉しかった。

”はな”

”とわ”様!

”とわ”

”はな”

”はな”

あのね!あのね!

”とわ”

なぁに?

”はな”

白凌にも

”はな”

お友達って必要だと思うの!

”とわ”

お友達?

”はな”

うん!

”はな”

一緒に悪い妖怪を退治したり

”はな”

美味しいモノ食べたり

”はな”

いろんなお話しをしたり

”はな”

楽しい時間を共有するお友達!

”とわ”

確かにそうね

”とわ”

”はな”は

”とわ”

どんな友達がいいと思うの?

”はな”

春太がいいと思うの!

”とわ”

春太?

”とわ”

最近”はな”が拾ったって言う

”とわ”

あの猫ちゃん?

”はな”

うん!

”はな”

春太はとっても賢い猫なんだよ

”はな”

大きな野良犬にも

”はな”

私を助けるために立ち向かって行ったし

”はな”

ネズミやトカゲを取るのも得意なの

”とわ”

へぇ!

”はな”

あ、でもね

”とわ”

ん?

”はな”

春太は甘い物が好きみたいで

”はな”

この間も私の大福餅を勝手に食べちゃったの

”とわ”

あはははっ

”とわ”

甘い物が好きな猫かぁ

”とわ”

いいわね!

”はな”

”はな”

いいよね!!

”とわ”

うん

”とわ”

きっと白凌と仲良くなれるはず

”はな”

じゃあ、私はこれから毎日春太にも

”はな”

白凌のお話しを聞かせるね

”はな”

それでね

”はな”

春太はうんと長生きをして

”はな”

猫又になって

”はな”

白凌と一緒に悪い妖怪を退治するんだよって

”はな”

言って聞かせるの!

”とわ”

ふふっ

”はな”

でもね、でもね!

”はな”

春太だけじゃなくて

”はな”

もっともーっとたくさんの猫を飼って

”はな”

白凌や春太のお手伝いができるようにしたいな

”とわ”

じゃあ

”とわ”

宗賀院(そうがいん)家がいつか”猫屋敷”

”とわ”

なぁんて呼ばれる日がくるかもしれないわね

そう言って”とわ”と”はな”は

楽しそうに笑い合った───。

時は戻って───。

兎月(とつき)

お疲れ様でした

白凌

はい、これ

白凌

”野鎌”だったもの

兎月(とつき)

…ありがとうございます

兎月は手ぬぐいに包まれた鎌を受け取る。

春太

でも、それはもう何の気配も無いにゃ…

兎月(とつき)

そのようですね…

春太

”野鎌”はなんで

春太

あんなに人を斬ろうとしてたのかにゃ?

春太の質問を聞いて

兎月は視線を白凌に向けたので、

春太も自然と彼の方を見た。

白凌

戦(いくさ)に駆り出された人たちの

白凌

浮かばれない思いが”野鎌”になったんだろうね

春太

浮かばれない思い…

そこで”野鎌”が

《なんの手柄を立てていない》

と言っていたのを思い出した。

白凌

あの時代のことはよくわからないけど

白凌

戦に出るのなら

白凌

それなりに成果を出したいと

白凌

誰しもが思っていたんだろうね

白凌

でも、何もできずに多くの人が亡くなった

春太

その想いが”野鎌”になったんだにゃ……

春太は折れてしまった鎌を見つめる。

白凌

例えそうであったとしても

白凌

人を傷つけて良い理由にはならないけどね

春太

そうだにゃ

春太は大きく頷いた。

兎月(とつき)

しかし

兎月(とつき)

大きな被害が出る前に回収できて何よりです

春太

それに関しては

春太

ジョセフィーヌの手柄だにゃ

兎月(とつき)

相変わらず宗賀院(そうがいん)家の猫は優秀ですね

春太

オイラがしっかり教育してるからだにゃ

ふふんっと鼻と鳴らす春太の姿を見て、

兎月と白凌は笑う。

兎月(とつき)

そのようで

白凌

それで?

白凌

その”野鎌”だったものはどうするんだい?

兎月(とつき)

一本だたらの火之丞(ひのすけ)さんに渡して

兎月(とつき)

再び何かに作り変えて貰おうかと

白凌

なるほど

兎月(とつき)

手柄は立てられませんが

兎月(とつき)

違う形で誰かの役に立てればと思っています

春太

それがいいにゃ

春太

これでお終いなんて

春太

ちょっと可哀想だと思ったにゃ

兎月(とつき)

ええ…

兎月(とつき)

それで…

兎月(とつき)

こちらが今回の報酬です

兎月は鎌を懐にしまって、

紺色の箱を取り出し二人の前に置いた。

春太

にゃぁ

春太

喜宝屋(きほうや)の羊羹(ようかん)だにゃ

春太は目をキラキラさせて箱を見つめる。

白凌

あれ?お酒は?

兎月(とつき)

それはまた後日…

白凌

えー…

兎月(とつき)

春太くん

春太

はいにゃ

兎月(とつき)

これでクッキー食べた犯人をおびき出して下さい

春太

にゃっ

春太

そ、そんなことができるにゃ!?

兎月(とつき)

ええ

兎月(とつき)

きっと上手く引っかかると思いますよ

そう言って兎月は笑みを浮かべた。

春太

白凌

白凌

なんだい?

春太

部屋に羊羹(ようかん)を用意したのはいいにゃ

白凌

うん

春太

それで犯人が来るのかにゃ?

白凌

兎月さんがそう言うんだから

白凌

来るんだろうね

春太

うにゃぁ~…

春太

別に宮司さんのことを疑ってるわけじゃにゃいけど

春太

こんな安直で単純な罠に引っ掛かるとは思えないにゃ…

白凌

……

白凌

つまりそれは

白凌

犯人がこの安直で単純な罠に引っ掛かるような

白凌

三流の妖怪だってことだろ?

春太

そ、そこまで言ってないにゃ

白凌

ま、ここは兎月さんを信じてやってみよう

白凌

ということで

白凌

私は家でお酒を呑んで

白凌

酔い潰れたフリをするから

白凌

春太はいつも通り

白凌

私が酔っぱらって寝たことを

白凌

《麓桜堂(ろくおうどう》で話してきてくれるかい?

春太

わかったにゃ

しんと静まり返った部屋。

いつも通りぐっすりと眠っている白凌。

長屋の扉が音も無く開き、

眼光鋭い眼差しが

部屋を隈なく見渡し、

机の上に置かれた羊羹を捉える。

ゆっくりと扉が動き、

ぬるりと

黒い影が部屋に入ってきて、

羊羹に手を伸ばしたその瞬間、

 

ヒッ

喉元に突き付けられたのは、

妖怪しか切れない刀

”怪誕不経(かいたんふけい)”。

白凌

やぁ…

白凌

こんばんわ

白凌

吉兵衛

吉兵衛

お、おぅ……

そこで部屋に明かりが灯る。

春太

呆れたにゃ

春太

まさかクッキーを食べたのが

春太

吉兵衛だったにゃんて

言いながら春太は

押し入れから出てきた。

吉兵衛

は、春太……

吉兵衛

まさかあのクッキーは…

春太

オイラのだにゃ

吉兵衛

す、すまねぇ

吉兵衛

魔が差して……

吉兵衛

その……

吉兵衛

許してくれ!!

吉兵衛はそれはそれは

綺麗な土下座をして見せる。

春太

白凌

白凌

はいはい

吉兵衛

いやぁ!

吉兵衛

殺さないでぇ!!

白凌

大丈夫

白凌

そんな物騒なことはしないさ

吉兵衛

刀持ってる奴に言われても

吉兵衛

説得力がねぇよ!

白凌は吉兵衛を羽交い締めにする。

吉兵衛

うぅ…

吉兵衛

許してくれぇ…

吉兵衛

春太ぁ…

春太

食べ物の恨みをしっかり味わうにゃ

吉兵衛

は、春太!

吉兵衛

やめっ!

春太

河童が

春太

クッキーなんて

春太

食べるにゃ!!

吉兵衛

ひどい!!

見事な猫パンチが決まると、

吉兵衛は気を失った。

白凌

これ、どうしよう?

春太

川に捨ててくればいいにゃ

春太

河童だし

春太

きっと大丈夫にゃ

白凌

そうだね

───ドボンッ…

春太

白凌も羊羹食べるにゃ?

白凌

じゃあ、一口だけ貰おうかな

春太

わかったにゃ

白凌

今度、春太以外には開けられない

白凌

そんな呪(しゅ)をかけた箱を用意しようか…

春太

にゃにゃ!?

白凌

それがあれば

白凌

勝手に食べられることもないだろうしね

春太

それは嬉しいにゃ!

春太

あ、でもそれにゃら

春太

白凌のお酒を入れる箱も用意するにゃ!

白凌

いいね

白凌

箱の大きさはどうする?

春太

おっきいのが良いにゃ!

白凌

それだと部屋が狭くなるなぁ

春太

うにゃ…じゃ、じゃあ…

春太

えーっと…えーっと…

思案する春太を見て、

白凌は楽しそうに笑みをこぼし、

羊羹を口に運んだ。

『野鎌』 了

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あとがき

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