/s/[storyId]/_components/heading/assets/back_arrow_icon.4081080bcaba67b8.svg){kind=icon}
シェアする/s/[storyId]/_containers/report-container/assets/more-icon.20cfac1b79e24f56.svg){kind=icon}
～ショウ１7歳の春～
シュウ
おい！ショウ！
シュウ
誰の許可を得て他人を家に連れ込んだんだ？
ショウ
姉さん！
ショウ
ひどいよ！
ショウ
前から話してあったのに、何で友達に向かって、おがくずをまき散らしたのさ！
シュウ
あら。私じゃないよ
シュウ
あんたのペットのハムスターがやったんじゃないの？(笑)
ショウ
姉さんがやってるのを見てたよ！
シュウ
動物を飼うことも許可してない
シュウ
どっちも、さっさと追い出せ！
ショウ
やめてよ！
ショウ
姉さんのせいで友達出来なくて僕、小６までずっとハブられてたんだよ？
シュウ
へえ～
シュウ
それで？
ショウ
今日だって…
ショウ
中学でやっと友達が出来そうだったのに、こんなこと…
ショウ
それに姉さんが臭くてボロいやまんばみたいな身なりで出てくるから、
ショウ
友達ドン引きで帰っちゃったじゃないか！
シュウ
ふん。やまんばとは失礼な
シュウ
そんなことで、いなくなる友達なら作るな
シュウ
大体ココ、あんたの家じゃないから
ショウ
えっ？
シュウ
今は父の名義だけど、
シュウ
いずれは中学の入試にトップ合格してる優秀な私がこの家を継ぐんだよ
シュウ
で、あんたの成績は？
ショウ
それは…トップじゃないけど
シュウ
ほらね(笑)
シュウ
父も母も私に期待して、名門高校の受験を全力でバックアップしてるしね
シュウ
落ちこぼれのあんたとはデキが違うんだ
ショウ
でも今は学校にも行かずに引きこもってるじゃないか
シュウ
うるさい！
シュウ
引きこもりでも優秀なら問題ないんだよ！
シュウ
あんたはタダの居候
シュウ
いずれ出て行くんだから、許可なく勝手なことするな
ショウ
わかった。もういいよ
ショウ
これから誰も連れてこないよ
シュウ
当然だ
ショウ
ところで、僕のチビは、どこ？
シュウ
チビ？
シュウ
ああ、あのハムスターか？
シュウ
知らん
ショウ
知らんって、何で？
ショウ
あのおがくず、チビのゲージのだよね？
ショウ
どこにも見当たらないんだけど？
シュウ
さあ？
シュウ
ゲージをひっくり返した時、何処かに逃げたんだろ？
ショウ
そんな…。ひどいよ、姉さん
ショウ
今の僕には唯一の友達なのに！
シュウ
何かっていうと「友達、友達」
シュウ
ヘボ弟の心の拠り所は、薄っぺらいね(笑)
シュウ
あと、何度も言うけど、
シュウ
居候の分際で私の許可なく飼うこと自体が間違ってるから
ショウ
…まだその辺にいるかもしれないから、チビを探してくる
～５分後～
シュウ
おい！ショウ！
シュウ
返事しろ！
ショウ
何？まだチビを探してる最中なんだけど
シュウ
そいつ、ここにいる
ショウ
えっ？わかった！
ショウ
今すぐ姉さんの部屋に、
シュウ
来るな！
ショウ
どうして？チビを確保するだけだよ
シュウ
ダメだ。さっき言っただろ？
シュウ
私の許可なく動物を飼うのは許さない
ショウ
じゃあ、どうするんだよ？
シュウ
処分する
ショウ
えっ？何で？
シュウ
コイツは私の部屋に不法侵入したんだ
シュウ
罰するのは、当たり前だろ？
シュウ
今すぐネズミ捕りを買ってこい。水責めの刑にしてやる
ショウ
やめて！何でもするから、チビを返してよ！
ショウ
僕の唯一の友達なんだよ！
シュウ
…ほんとに、何でもするんだな？
ショウ
う、うん
シュウ
じゃああんたが私の下僕になるなら、許してやる
ショウ
下僕って？何するの？
シュウ
私の、ありとあらゆるお世話をしろ
ショウ
お世話って？
シュウ
私の身だしなみから下の世話までだ
シュウ
掃除と洗濯、食事は母がやってるから、それ以外の世話全般だ
ショウ
あの…
ショウ
それやったらチビを助けてくれるの？
シュウ
まあね
ショウ
飼ってもいい？
シュウ
お前次第だ
ショウ
…わかった
シュウ
返事は「わかりました」だ
ショウ
…わかりました
シュウ
よし！下僕採用
シュウ
今から私のことはご主人様と呼びなさい
～ショウ２２歳の春～
ショウ
姉さん。ちょっといいかな？
シュウ
誰に向かってタメ口？
シュウ
しかも「姉さん」だと？
シュウ
この下僕が！
シュウ
「ご主人様」だろうが！
ショウ
…この生活を、もうヤメたいんだ
シュウ
何だと？
ショウ
専門学校から斡旋された美容院に就職が決まったんだ
ショウ
寮もあるし、この機会に家を出ようと思ってる
シュウ
そんなこと、誰が許可した？
ショウ
許可なんてもう必要ないよ
ショウ
チビも僕が中学卒業する頃に逝っちゃったし、
ショウ
二代目チビも２年前に天に召された
ショウ
だから僕を縛る理由は、もうないんだよ？
シュウ
お前が専門学校を出て美容師になれるのは、私のおかげだろうが
シュウ
恩を仇で返すつもり？
ショウ
恩？
ショウ
そんなものはないよ
ショウ
姉さんのせいで結局、今まで僕に友達は出来なかった
ショウ
小学生の時はハブられて、中学からは部活も出来ない下僕生活
ショウ
高校でも、美容学生時代も、僕はずっと独りだった
シュウ
だから、何？
シュウ
２０歳過ぎてもまだ、そこにこだわるとか
シュウ
しつこいねぇ（笑）
シュウ
そもそも、私にやまんばウンヌン言い出したのは、お前だよ？
シュウ
最後までちゃんと責任を取れよ？
ショウ
その考え方がおかしいんだよ
ショウ
本来、身だしなみは、自分で何とかするものだよ？
シュウ
私は有能だから、日本の将来を考えるのに忙しいんだ
シュウ
お前が職務放棄すると言うなら、代わりの下僕を連れてきな
ショウ
はぁ…
ショウ
話にならないね
ショウ
とにかく、僕は出ていくから
ショウ
姉さんもそろそろ就職した方がいいよ？
ショウ
父さんと母さんも、そろそろ年金生活になるんだから
シュウ
うるさい！
シュウ
口のきき方には気をつけろ！
シュウ
何度も言わせるな！
シュウ
おい！
～ショウ２８歳の春～
シュウ
ショウ
ショウ
母さん？
シュウ
違う。お前の「ご主人様だ。」
ショウ
姉さん？
ショウ
もしかして、母さんのケータイ使ってる？
シュウ
ああ
シュウ
そうでもしないと、私はお前にブロックされてるからな？
シュウ
かつての恩人を足蹴にして、ひどい下僕だねぇ(笑)
ショウ
それでわざわざ何の用？
シュウ
１９年前に他所へ引っ越して行った、幼馴染のミカと、
シュウ
お前、結婚するんだって？
ショウ
…母さんがバラしたんだな
ショウ
姉さんにだけは言わないようにと念を押したのに
シュウ
つくづく失礼なもの言いだね
シュウ
まあいい。今日連絡したのは、その結婚の話をするためだ
シュウ
来月、式を挙げるんだって？
ショウ
ホントに何もかもバラされてるな…
ショウ
それで、用件は？
シュウ
私も結婚式に出てやる。だから招待状を送りな
ショウ
いや。姉さんにだけは出て欲しくないから
シュウ
何だと？
ショウ
僕は姉さんから１０年に渡ってモラハラを受けてきたんだよ？
ショウ
会いたくないのは当然じゃないか？
ショウ
それにまた、前の臭ボロやまんばに逆戻りしてると聞いたよ
ショウ
そんな不潔な身なりで式に参加されたら、却って迷惑だよ
シュウ
お前に美容の手ほどきをしてやった私に、ひどい言いぐさだね？
ショウ
手ほどきなんて、されてないけど？
シュウ
前みたいに「僕にお世話をさせてください」とか
シュウ
殊勝なことの１つや２つ、言えないの？
ショウ
いや、アレは言わされてただけで、そう思ったこともないから
シュウ
それにミカも、美容は専門分野だそうじゃないか？
ショウ
そうだけど、何が言いたいの？
シュウ
あのな、お前とは色々あったけど、私はお前の実の姉だよ？
シュウ
弟の結婚を祝いたいと思うのは、当たり前じゃないか！
シュウ
賢くて美しい私だけど、唯一自分の身なりを整えるのだけは苦手だから
シュウ
お前たち２人で結婚式に参列できるようにサポートして欲しいだけなんだよ
ショウ
…どういう風の吹き回し？
ショウ
姉さん、何か企んでる？
シュウ
また人聞きの悪い表現を(笑)
シュウ
ただ、ミカの実家はすごく立派な豪邸なんだってね？
シュウ
あの子ひとりっ子だし、
シュウ
お前も含めて親子４人で暮らすには広すぎるんじゃないかと、
シュウ
心配してあげてるんだよ？
ショウ
何が言いたいの？
シュウ
せっかくだから、この機会に同居してあげようかと思って
ショウ
えっ？同居？
ショウ
いやいや、ありえないから
シュウ
そんなに遠慮しなくてもいいよ
シュウ
豪邸なら部屋数も使用人も、さぞかし多いんだろうし
シュウ
何なら父母も連れていって、みんなで仲良く住めばいいじゃない？
ショウ
なるほど。それが目的か
ショウ
残念ながら、僕らの新居はもう決めてあるし、彼女の実家で同居する予定もない
シュウ
あっ、そう
シュウ
でも姉としてミカの両親への挨拶くらいはしておかないとね
シュウ
豪邸のこともあるし、面倒だけど行ってあげるよ
シュウ
用件は、それだけだ
ショウ
ちょっと待てよ
ショウ
絶対招待しないし、同居なんてもっての外だからな
ショウ
聞いてる？
～その日の夜～
ミカ
ショウ？まだ起きてる？
ショウ
ミカ？ああ、起きてるよ
ショウ
ちょうど今、連絡しようと思ってたんだけど、
ショウ
先に君の話を聞くよ。何かあった？
ミカ
ええ。実は今日ママから連絡があって、
ミカ
あなたのお姉さんが実家に電話をかけてきたらしいの
ショウ
ええっ！？
ショウ
どんな電話？
ミカ
うん。
ミカ
まず、あなたの実姉だと名乗って、結婚式に招待されてない、
ミカ
弟のことを祝ってあげたいのに、私は嫌われてる
ミカ
みたいな話だったらしくて…
ショウ
思ってもないくせに、しらじらしい！
ミカ
そうだよね
ミカ
だからあなたとお姉さんの関係を両親に説明しといたよ
ショウ
そうか。ありがとう
ミカ
でもね、私が話をする前に、ママがお姉さんに結婚式の招待状を送ってしまったらしくて…
ショウ
しまった！遅かったか！
ショウ
実は、姉さんから今日LINEがきて、
ショウ
「式に参列したい。ミカの実家で同居したい」と言われたんだ
ミカ
えっ？同居？
ショウ
うん。もちろん、どちらも却下したんだけど、
ショウ
まさかこんなやり方で先手を打たれるとは…
ショウ
すまない、君とご両親に迷惑をかけてしまって…
ミカ
ううん。気にしないで
ミカ
お姉さんのことはあなたの家のお向かいに住んでた時から、何となく知ってたし、
ミカ
美容学校で再会した時に真相を全部、聞いたし
ショウ
そうだったね
ミカ
ただ同居の件はおいといて、
ミカ
式に参列なさるのなら、服装とヘアメイクをちゃんとして差し上げないと
ショウ
えっ？いいの？
ミカ
もちろん
ミカ
ただ、式場のブミカズルームにはシャワーはないから、
ミカ
お家でシャワーだけしてもらえないかな？
ミカ
そしたら当日ちょっと早めに来てもらって、私たちがヘアメイクしてあげられるし？
ショウ
ミカ。ありがとう
ショウ
シャワーのことは、母さんに頼んでおくよ
ミカ
うん！
ミカ
そうと決まれば早速、お姉さん用の服や靴、アクセサリーを手配するから、
ミカ
あとでサイズを教えてね？
ショウ
わかった。助かるよ
ショウ
これで…
ショウ
姉さんと関わるのは、最後にするよ
～結婚式当日～
ショウ
姉さん？まだ？
ショウ
着る服もメイク道具もそろってるけど、
ショウ
肝心の姉さんが早く来てくれなきゃ、
ショウ
ミカの支度が出来ないんだよ！
ショウ
母さんと途中まで一緒だったんだろ？
ショウ
一体どこに行ってしまったんだ？
～１時間後～
シュウ
おい！下僕！
シュウ
あんた、一体どこにいるのよ？
シュウ
私に式に出て欲しくなくて、隠れてるんじゃないの？
ショウ
あっ、姉さん！
ショウ
連絡ずっと待ってたんだよ？
ショウ
姉さんが来るのを待ってたんだけど、あまりにも遅いから、
ショウ
ミカのメイクを先に始めたところだよ？
シュウ
嘘だね
シュウ
それらしい控室がどこにも見当たらないよ？
シュウ
それどころか、この大きな拍手！
シュウ
もしかして、もう勝手に披露宴を始めてんのか？
ショウ
いや、姉さんの支度があるから僕とミカだけ早めに来たけど？
シュウ
あっ！
シュウ
ほら、やっぱり嘘だ！
シュウ
扉が開いた瞬間「新郎のショウさんは～…」って
シュウ
司会の人が言ってるの、聞こえたもんね〜！
シュウ
私を撒こうったって、そうはいかないよ！
～１０分後～
シュウ
ねぇ…
ショウ
どうしたの？
ショウ
姉さん、今どこ？
シュウ
ちょっと、ちょっと、ちょっと！
シュウ
何の演出よ！
シュウ
全然、知らない人ばかりを披露宴に呼んで！
シュウ
父母さえ呼んでないなんて、聞いてないわ
ショウ
…母さんから「姉さんと途中はぐれたって」今連絡きたけど
ショウ
どこにいるの？
ショウ
姉さん？
～更に１０分後～
シュウ
もう！
シュウ
勝手に披露宴を始めてる上に、
シュウ
私を４人がかりで場外に追い出して！
シュウ
どういうつもりよ！？
ショウ
…それ、おかしいよ
ショウ
姉さん、今どこなんだよ？
シュウ
スリーシーズンホテルよ！
ショウ
えっ？
ショウ
会場、そこじゃないけど？
シュウ
へっ？
ショウ
ここ、皇居の反対側、市ヶ谷駅近くのレストランだよ？
シュウ
何ですって！？
シュウ
ちょっと、ちょっと、ちょっと！
シュウ
新郎新婦がえらく怒って、こっちに向かってきてるよ
シュウ
おい、下僕！
シュウ
早く何とかしなさい！
ショウ
わかった
ショウ
とりあえず、今こっちに到着した父さんと母さんに
ショウ
ソッチに向かってもらうよ
～数時間後～
ショウ
姉さん、披露宴、終わったよ？
シュウ
お前！わざと違う会場を教えたな？
ショウ
いや
ショウ
そこのホテルは予約がいっぱいで取れなかったから、
ショウ
レストランウエディングに切り替えたと、
ショウ
母さんに伝えたけど？
シュウ
聞いてない！
ショウ
いや、母さんがちゃんと伝えたけど、
ショウ
姉さんは「豪邸が～召使が〜」とか
ショウ
ワケのわからないことばっかり言ってたって
シュウ
…払って
ショウ
えっ？
シュウ
お金払え！
シュウ
さっきの新郎新婦が披露宴の進行妨害と、消臭作業による中断の手数料・迷惑料として、
シュウ
全費用の３分の１にあたる２００万を請求するってヌカしやがった
ショウ
聞いたよ
ショウ
結局、シャワーも風呂も入ってこなかったんだって？
シュウ
当たり前だ
シュウ
天下のスリーシーズンホテルなら、客室のシャワーくらい使わせるだろうしね
ショウ
そんなこと、僕、１度も言ってないよね？
ショウ
大体、何日風呂に入ってなかったの？
シュウ
冬は寒いから、１１月から入ってない
ショウ
…ということは、半年？
ショウ
それで良く病気にならなかったね？
シュウ
うるさい！
ショウ
それは、もう自業自得だ
ショウ
自分で何とかするしかないね
ショウ
姉さんとも、これっきり会うこともないと思う
ショウ
じゃあ、さようなら
シュウ
ちょっと待ちなさい！
シュウ
この下僕がっ！
シュウ
全部、お前のせいだ！
シュウ
おい！金払え！
シュウ
おい…
～後日談～
ショウ
その後、姉が乱入した別の結婚式については賠償金の他に慰謝料も加算され、
ショウ
総額３００万ほどを父母が肩代わりしました
ショウ
そして、その大惨事を見るに見かねた親戚が姉の身元引受人になり、
ショウ
親戚の家業を手伝うことになった姉ですが、その仕事が何と銭湯
ショウ
浴室・脱衣場の清掃から番台まで、一日中働いて、
ショウ
クタクタの体を湯船で回復する気持ちよさに、最近やっと目覚めたようで、
ショウ
借金も毎月、少しずつ両親に返済しているそうです
ショウ
僕とミカは、ありがたいことにハネムーンベイビーを授かりました
ショウ
自分のサロンを持つために、家族と幸せになるために、
ショウ
日々仕事に邁進しています
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
