エゴサーチ

やっと終わらせた課題の再確認をし。溜息を付く。

腕を伸ばしぐぐぐっと斜め横に体を倒して行く。

そう呟き、元の体勢に戻る。 ふと、付けっぱなしのパソコンが目に留まり。適当に今気になるドラマの俳優や女優の名前を検索して画像をスクロールして行く。

偶に独り呟きながらも色々な画像を見ていく。ふと自分は検索したら出てくるのか。と思い、早速｢小林 秋｣と検索してみた。

出てきたのは今人気な同名のモデルだった。

と、言いつつも画面をスクロールしていると。そのモデルとは関係無さそうな動画が出てきた。

クリックして見てみると。どこかで見たことがある場所…駅？ …そこは自分がよく使う駅だった。

恐る恐る続きを見てみると、急にカメラがある女の人にズームし始める。

その女の人は自分とよく似ていた。 投稿された日付を見ると5月2日…今が5月4日だから…一昨日か。その女の人の服装をよく見てみると、一昨日着ていた服と全く同じだった。

一旦止めた動画をクリックし、自分を追い続けるカメラに嫌気が差しながらも瞬きをするのも忘れて動画に見入る。

"自分"はベビーカーを押している20代くらいの女性にわざと当たり、その女性に対して喚いているのだ。

"自分"の声に驚いたのか赤ちゃんが泣き出し、女性が慌てて赤ちゃんを抱き込む。すると次の瞬間、"自分"が｢うるせぇんだよ！｣と怒鳴りベビーカーを蹴っ飛ばしたのだ。

掠れた声が出。動画を止める。その動画のコメント欄へ移り、口に手を当てる。

"特定する"と書いてあり、思わず声が出る。私が今何をしているのか見られているのだろうか。そう考えるだけでもゾッとする。

慌てて、抗議のコメントを書こうとしたが。それじゃ本人ってバレるかな…と思い、サブ垢でコメントを打つ。

そう書いて、パソコンを閉じた。

一気に疲れが出、椅子から立ち上がりベッドにダイビングする。動画の事を考えていたがいつの間にか寝息を立ててぐっすり寝てしまっていた。

〜次の日⏰〜

動画が消されているか、パソコンを付け確認すると、まだ動画は上がっていた。昨日より再生回数も増え、コメントも増えていた。

どんどん声が小さくなっていく。

秋は家を出、電車に乗り。大学前の駅で降り、近くにあるコンビニでおにぎりと麦茶を買って大学へと向かう。

大学の皆に知れ渡っていたら…。 同じ大学の子がこんな動画を作ったの…？ 疑心暗鬼になりながらも授業を終わらせ。友達と余り話さず、すぐに家に帰る。帰宅の途中、自動販売機でコーヒーを買った位で別に何もしていない。

そう呟き、｢小林 秋｣と検索する。

そこには、今日の日付で自分がドアップで写っているサムネがTOPに出てきているのだ。

そう言いながらも指示通りに動くロボットの様に動画をクリックする。 動画の内容は"私"が駅の入口から歩いてきて近くにある自動販売機で珈琲を買っている所。今まで通りだ。別に可笑しくなっていない。

息を付いて、パソコンを閉じようとした瞬間。ｶﾞｺﾝｯ!!というキーンとなる音が聞こえあわてて、パソコンを開ける。そこには、さっき"私"が飲んだ珈琲の缶にそっくり、いや"私"が飲んだ珈琲の缶がゴミ箱付近でころころと転がっていた。

ゴミ箱近くに合ったじゃない！と思わず声に出そうになる。

ハッとし、コメント欄へと移る。

頭を抱え込みそう叫ぶ。 ﾋﾟｺﾝｯ…という電子的な音が鳴る。

ゆっくりとパソコンに目を向けると今日の日付で｢先程の動画の続き｣と書いてあった。

恐れより怒りが勝ってしまい、すぐに動画をクリックする。

主に動画の内容は"私"が前に歩いていた男性が急に止まり、それに躓いてしまったという完全に私が被害者なだけの動画だった。

"どうなってるの？"と発言する前に、コメント欄に移りコメントをスクロールして行く。そこには…

どうやら、この動画を知っている人がわざと''私"を転ばしたと思って皆で喝采を送っているらしい。

少し違和感だったが、これも撮った人の作戦なのかな。と思い、余り触れなかった。

ベッドに倒れ込み、いつの間にか寝息を立てて寝ていた…。

〜次の日☀️〜

そう言いつつも、事務的に服を着替え。家に鍵を掛けていつも通りの駅に向かう。

撮られる可能性を少なくするため、家から2番目に近い駅へと向かう。

まあ、ここはいつもこうなのかな。そう、思い人混みに紛れて歩いていると急に前に歩いている男性がしゃがみ。私は反応出来ず、男性に躓く。

男性は何回もすみませんを繰り返しながら人混みに紛れて行ってしまった。

でも、それは昨日のことで…悩みながらも。電車に乗り、大学へと着く。急いで自分のロッカーへと駆けつけ、影に隠れるようにしてスマホに見入る。男性に躓き転んでしまった動画をよく見ようと思ったからだ。すると、新しい動画がまたアップされていた。

そう言いつつ動画を開けようとしたが、時間が迫っていたため。見るのを辞め、教室へと走る。

教室に付いて席に座って、ホワイトボードを眺めていると突然自分の頭の上にある電球が割れ、破片が降ってくる。

友達が声を掛けてくれたのにも関わらず私は反応出来ず、もろに破片を被ってしまう。

数秒間が空き、ズキズキと後から痛む体を見回す。頬とデコに小さな傷。そして指からおびただしい量の血。結構深く切ってしまったようだ。

彩美は自分のハンカチを取り出し、私に差し出す。真新しいハンカチ（っぽい）で血で汚すのは躊躇われたが状況が状況だ。指に巻いて、血が収まるのを待つ。そこに2人程先生が駆けつけ、私は事務室に。色々と騒ぎは収まっていき。私は早退となった。

そう呟いて、あっそういえば。とスマホを取り出してさっきアップされた動画を見始める。その動画の内容は…

駅前にあるコンビニでおにぎりと麦茶を買って、外に出た後。急にコンビニの敷地を囲ってあるフェンスに近付き、手を伸ばす。

次の瞬間指がフェンスの網が飛び出ている所に引っかかり、無理矢理指を戻そうとして切ってしまう内容だった。

私はなっている。そう言おうとしたが何故か躊躇われた。ﾋﾟｺﾝｯとまた音がなり、嗚呼また動画がアップされたのか。もうどうしようも出来ないのか。ネガティブになりながらも動画をやっぱり見てしまう。

"私"は電車で帰らず、徒歩で帰るみたいだ。駅を超えて少し行った所に公園があるからだ。すると、公園で遊んでいる小学生らしき子達が蹴飛ばしたサッカーボールが"私"に向かって飛んでくる。

見事にサッカーボールは"私"にぶつかり、頭を手で支えながらよろけ、溝にハマってしまい、足が泥だらけになる。

そう呟いて動画を消し、駅の方へと向かう。すると、突如現れた車が私に突っ込んでくる。慌てて横に逃げたものの、後ろ足に当たり転ぶ。

足の酷い痛みに悶えながらも、ぼやける目で車の方を見る。車は、一瞬止まったもののすぐさま駅の反対の方へと走っていってしまう。

足を恐る恐る触ってみる。多分、折れたのだろう。

傷んだ足を見ながら、周りを見渡す。あれ…怪我した所…私が溝に落ちた足だ…。

私があの動画の出来事を避けたから…？

未来予知の動画が有るんだからそれも有るんじゃないのか。俯いて考えていたら、声をかけられ。その人に連れられて病院へ行き。そのまま家まで送ってもらった。

家に着き、ベッドに横になると。すぐさまスマホを眺める。また新しい動画がアップされていた。内容は"私"の松葉杖を前から来た男性が引っかかり、"私"が転び頬に擦り傷ができるというものだった。

避けるともっと酷いことになるんだから…そう思い、そのまま寝てしまう。

次の日、私は転び擦り傷ができる。

新しい動画がアップされ、病院に行く途中に横を通った車が缶を踏んでそれが跳ねて"私"の目に当たり。私はその動画通り目を怪我した。

指、腕、鼻、耳、太もも、目。動画通りに動き、怪我をする。今じゃ、動けず真っ暗な部屋の中で蹲るのみ。

また、新しい動画がアップされた。

動画の内容は…明日の夜に"私"は家の近くにある歩道橋に登っているというものだった。すると、向こうの方から黒で揃えられている服装でこちらへと近づいてくる、女性…？いや、男性。手には黒色の鉄製バットがあり、"私"はただただボーッと男性の行動を見つめるのみ。

男性は"私"に手を伸ばせば当たる程の距離へと近づく。すると、男性は持っているバットを"私"に叩きつける。

悲痛な声が静かな夜に響き渡る。いつの間にか"私"は声もあげずにやられっぱなしになっている。男はそれに気づき、そそくさとその場から離れていく。

おびただしい量の血を流しながら倒れている"私"を見ること数分。何で終わらないんだろうと、動画時間を見ると何時間も先があるのだ。

今の時刻と動画時間を足すと…

と、なんとなく意味がわかった気がした。どっちでもいい筈なのに私は決めれなかった。