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おはようございます、リオンです。読了しました。 冒頭の妖力を流し込まれるシーン、痛みと共に知らない映像が流れる展開にぐっと惹き込まれました。あれは深月さんが関係しているのか…気になります。 本編に入ってからの軽快な掛け合いも良かったです。深月さんの寝起きの悪さと、結さんの容赦ないナイフ突きつけ。90年一緒にいてもこの距離感、微笑ましくて好きです。 世界観も丁寧で、人と妖が共存する帝都、和装文化、死神の鎌の管理方法など「どう成り立っているか」を感じさせる設定が散りばめられていて楽しかったです。続きが気になる第1話でした!
14
#体格差
月咲やまな
1,702
ひより
10,176
鷹槻れん

60,257
ーーー唇が重なる。
そこから無遠慮に流し込まれた妖力は、私の中で我が物顔で暴れ始めた。
頭が、痛い。 痛くて、痛くて、堪らない。
苦しむ私を切れ長の銀色の瞳が愉しげに見下ろしている。
その視線を浴びながら、痛みに耐えていると、ふと頭に知らない映像が流れ始めた。
こんなもの、知らない。 これでは、まるで…。
血に染まった彼が記憶の奥底で微笑む。
ああ、彼だったのか。
立派な庭の上空には、もう三日月が浮かんでいる。
人の活動時間が朝からなら、妖の活動時間は夜からだ。 そして、私は死神の妖だ。
いつものように右腕に残る違和感…月一の献血後の痛みをほんの少し感じながらも、
私は私の幼馴染であり、主人でもある神園深月(かみぞのみつき)の部屋内にある引き戸をスパーンッ!と勢いよく開けた。
綺麗に整理された畳の部屋。 その真ん中には、1人で寝るには広すぎる布団の上で、まだすやすやと寝息を立てている美青年がいる。
彼こそが深月。
ここ東大帝国の死神の頂点に君臨する一族、神園の次期当主だ。
結
私はいつもの調子で遠慮なく、ずかずかと深月の寝床へと入っていった。
そして深月の元まで行くと、腰を下ろし、ゆさゆさとその体を揺らした。
深月
結
私にいくら体を揺さぶられても、深月は少し眉間にシワを寄せるだけで、そのまぶたを開けようともしない。
深月はいつもこうなのだ。
夜に弱く、毎度毎度、自分で起きようとしない。
だからこそ、彼を起こす役目を担う者が必要なのだが、それを許されている神園の女中…いや、存在は私だけだった。
結
先ほどよりも激しく深月の体を揺すってみるが、深月は頑なに目を閉じ続ける。
さらりと流れる濃い青髪の奥で、平然としているあのまぶたが憎い。
このままでは、本当にやばい。 学院に遅刻してしまう。
なんとか深月を起こせないものかと奮闘しているとーーー。
結
突然、深月に腕を引かれ、視界がぐらりと揺れた。
そして気がつけば深月の手によって、私は深月の布団の中へと引きずり込まれていた。
深月
深月が甘えるように私の名前を呼び、ぎゅうと正面から己の腕の中へ私を閉じ込める。
さらにまるで猫のように私の頭に頬擦りすると、再び「すぅ…すぅ…」と寝息を立て始めた。
気持ちの良い睡眠を続ける為に、深月はあろうことか私を抱き枕にしたのだ。
…全く。
仕方がないので、私は最終手段に出ることにした。
まずはグッと深月の胸を押し、わずかな隙間を作る。
それから制服の下に手を伸ばし、小さな死神の鎌を取り出すと、それに妖力を込めた。
すると、鎌はその形を変え、小さなナイフになった。
死神は皆、こうやって自分の鎌を管理するのだ。 この方がずっと使い勝手がいいから。
結
目の前にある深月の首元に、ナイフをそっと押し当てる。
どちらかがほんの少しでも動けば、簡単に傷ができる位置に。
深月
…が、深月は怯むことなく、愛おしそうにそのまぶたをやっと開け、私を見つめた。
血のように赤い瞳がまっすぐと私を射抜いている。
夜から何を言ってるんだ。
結
深月
呆れたように深月に目をやれば、深月は戯けたように笑いながら私を解放し、やっと体を起こしてくれた。
それからいつものように身支度を始めた。
もちろん、私は深月の女中として、それを手伝った。
そう、私は神園の女中といっても、ただの女中ではない。
深月専用のたった1人しかいない、特殊な女中なのだ。
身支度を終えた深月と、それを手伝った私は、カタカタと小さく揺れる馬車内で、向き合うように座っていた。
何となくぼんやりと、窓の向こうを見つめる。
世界のトップに君臨するここ東大帝国は、どの国よりも早く、人と妖が共存を選び、繁栄を築いていた。
その為、東大帝国の中心、帝都では、妖も人も同じように往来している。
だが、今は夜も深まり、もうすっかり人よりも妖の方が多く道を歩いていた。
街を行き交う者たちは、皆、好んで和装をしている。 私たちのような洋装の者はあまりいない。
私も普段着は着物だ。
しかし、これから学院に行く為、学院の制服である赤のリボンが印象的な紺のセーラーを着ていた。
外を見つめる私の頬に、視線が刺さる。
向かい側の席からじっとこちらを見つめているのは、もちろん、深月だ。
街から今度は目の前へと視線を移すと、やはり深月はいつも通り、優しい笑みを浮かべ、こちらをまっすぐ見つめていた。
深月は私とは違い、和装よりも洋装を好み、普段着も白いシャツやスーツであることが多い。
その為、今の黒の学ラン姿は、いつもの色違いといった印象で、あまり物珍しさはなかった。
深月
私の視線に気づいた深月が、ふふ、と柔らかく笑う。
絶世の美青年。
その言葉が似合ってしまうのが深月だ。
サラサラの濃い青髪は無造作にセットされ、どこか寝起きの時とは違う大人っぽさを漂わせている。
その髪から覗く瞳は血のように濃い赤で、一度見たら忘れられないだろう。
程よい筋肉と誰よりも高い身長。 その上、手足も長く、何もかもが完璧だ。
結
冗談っぽく思ったことを口にすれば、深月は愉快そうにその瞳を細めた。
深月
深月が私を上から下まで絡めとるように見つめる。
深月
結
深月
結
深月の歯の浮くような言葉に、思わず言葉を失ってしまう。
冗談のように、けれど、本気で深月はこんなこと言う。
もう90年も一緒にいるので、慣れてしまった。
呆れたように深月に視線を向けていると、馬車はゆっくりと止まった。
どうやら、学院へ着いたようだ。