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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

太宰治

……大丈夫? 中島くん

宿の中で俺はぐったりとしてしまった。

こんなにも弱々しい姿を見せてしまって、

恥ずかしくて情けなくなる。

あのあと太宰に抱かれ、宿の中でもと移動したのだが、

その前に俺の方が体力が限界を迎えたがために、なぜだか太宰の膝の上で休憩している。

太宰治

……しんどい?

こくりと、頷く。

太宰治

無理させるつもりはなかったんだよ?

太宰治

ただ久しぶりに会えたから、つい……

その申し訳なさそうな顔を見るたびに、こちらが悪いことをしているのではないかと錯覚してしまう。

中島敦

……お前のそういうところ、嫌いだ

太宰治

私はどんな中島くんでも好きだよ

中島敦

簡単に好きとか言うな

太宰治

どうして?

中島敦

俺が惨めになる

太宰治

中島くんはもっと素直になればいいのに

中島敦

お前のような浮気者に、言われたくない

太宰治

……そっか

この日は、これで終わった。

生徒

あ、中島先生! おはようございます!

中島敦

おはよう

中島敦

課題はちゃんと終わらせてきたか?

生徒

もちろんですよ、私、優秀ですから!

中島敦

そうだなあ、なら、楽しみにしているよ

生徒

はあい

今日もいつも通り、教師として生活をする。

女子生徒ばかりに囲まれて生活するのは、かなり厳しいかと思ったが、

そんなこともなく、かなりやりがいのある生活が送れている。

……父には、感謝せねば、と思う。

執筆をする傍ら、こうして自ら学びを教え合える職につけたのは、なんといってもありがたいことだ。

小説家だなんて、太宰のような爆発的な人気がなければ、それ一本では生きられない。

俺のような無名の作家は、こうして違う職について生活しなければならない。

そう思うと、太宰が羨ましくて仕方がなくなってきた。

だが、生活はできているのだ。

人一人の人間として生きながらえているのだ。

持病の関係上、他の人より運命が短いだろうから、

こうして幸せだと思えるだけで光栄なのだ。

中島敦

……ゲホッ

……だんだんと、死神が近づいてくる音が、し続けているのだから。

また今日も太宰は酒を飲み散らかしている。

もう体が壊れてしまいそうなのに、なぜあんなにも愉快な顔ぶりでいるのだろう。

もしかしたら、俺より早く死神が来るのではないか、だなんて柄にもなく思ってしまう。

太宰治

だから、僕は言ったのだ!

太宰治

女なんて所詮、男に敵うはずがないと!

友人

そりゃあ、傑作だ!

友人

お前のようなクズは、この世のどこを探しても見当たらない!

太宰治

僕の右に出る者はいないね! いたとしたら、僕がそいつの尻でも蹴ってやる!

なんていう下品な会話をしているのだろう。

俺は呆れて何も言葉が浮かばなかった。

それでも、もうそろそろ切り上げなければ。

太宰の体が壊れてしまう。

俺は立ち上がり、友人らの間を割って入って、太宰に声をかけた。

中島敦

先生

太宰治

ん? んーん、ん?

太宰治

あれ、中島くん? また今日も私の後ろで飲んでたの?

中島敦

飲んでなんておりません。

中島敦

ほら、さっとさ帰りますよ

太宰治

そんなこと言わないでくれよう

太宰治

今いい感じに酔いが回っているんだ

中島敦

そんなことは知りません。

太宰治

ええー? ひどいなあ

中島敦

いいから、帰りますよ。奥さんも心配していらっしゃる。

太宰治

あいつは心配なんかしないよ。

俺は太宰の首根っこをつかんで、友人らに軽く礼をし、勘定を済ませ、やつを外に放り投げた。

太宰治

いて

太宰治

あーん、中島くんが私にひどいことをする

中島敦

してません

太宰治

……私、人肌が恋しいのだけど

中島敦

ならさっさと家にお帰りください

太宰治

中島くんは、寂しくない?

中島敦

まったく。

太宰治

そっかぁ。教師だから、女子生徒とふれあいし放題だもんね

中島敦

失礼なことを言わないでください。

太宰治

ちぇ

太宰は不貞腐れように俺の方に顎を乗せる。

太宰治

ねえ、中島くん。今日もしない?

中島敦

しません

太宰治

どうして? いい作品が書けそうなんだけど……

太宰治

同じ活動をする仲間じゃないか。

太宰治

私の気持ちがわかるだろう?

中島敦

いいえまったく。

太宰治

即答なの、結構傷つくんだけど

中島敦

ああ、そう

太宰治

でも、君は私のことが好きでしょう?

中島敦

さあ?

太宰治

私は君のことが好きだよ。

太宰治

死ぬ気で、恋、してみない?

もう、腹が立って仕方がなかった。

ヘラヘラし続ける太宰にも、そんな太宰に一縷の希望を抱いている自分自身にも。

中島敦

ハッ……死ぬ気で?

中島敦

死ぬ気で俺がお前みたいなやつと恋をしなくちゃならないのか?

中島敦

莫迦な虚言もいい加減にしろ。
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