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救急車の赤色灯が、 夜の街を切り裂いていた。
狭い車内。 酸素マスク。 鳴り続ける機械音。
桃は、 黄の手を握ったまま離せなかった。 冷たい。 まだ冷たい。
救急隊員
救急隊員
専門用語が飛び交う。 でも。
5人の耳には、 ほとんど入ってこなかった。
”死ぬかもしれない” その言葉だけが、 頭の中で響いている。
赫は俯いていた。 拳が震えている。 さっきの黄の言葉が、 離れない。
「卒業までは、 生きるつもりだった」 つまり。
こいつはずっと。 ”卒業したら死ぬ” つもりだった。
どれだけ苦しかったんだ。
どれだけ絶望してたんだ。
赫
ぽつりと零れる。 自分自身への怒り。 もっと早く、 無理矢理にでも踏み込めばよかった。
”嫌がるから” なんて理由で、 見守っていた。 その結果がこれだ。
紫は壁を殴りそうになる衝動を、 必死に抑えていた。
胸の奥が焼ける。 悔しい。 苦しい。 許せない。 何より。
”助けて” と言わせる前に、 ここまで追い込まれていたことが。
病院。 白い廊下。 冷たい匂い。
黄はそのまま、 処置室へ運ばれていった。
扉が閉まる。 静寂。
桃の足から力が抜ける。 床に座り込んだ。
桃
掠れた声。 涙が止まらない。
水も俯いている。 スマホを握る手が震えていた。
画面には、 集めた証拠。 録音。 動画。 写真。
もっと早く動けばよかった。 もっと早く。 もっと。
水
声が震える。 その言葉に、 誰も返事できなかった。
緑は、 ずっと処置室の扉を見ていた。
無表情だった。 でも。 近くにいるだけで分かる。 空気が張り詰めている。
怒っている。 静かに。 深く。
数時間後。 医師が出てきた。
全員が立ち上がる。
医師
その瞬間。 桃が泣き崩れた。
安心と、 恐怖と、 後悔が全部一気に溢れる。 でも。
医師の表情は重かった。
医師
医師
医師
一瞬、 言葉を選ぶように止まる。
医師
空気が止まる。
医師
赫が目を伏せた。
分かっていた。 でも。 医師に言われると、 現実になる。
黄は本当に。 ”死ぬ寸前”だった。
病室に入れるようになったのは、 深夜だった。
薄暗い部屋。
規則正しい機械音。
白いベッド。
黄は眠っていた。
点滴。 包帯。 青白い顔。
桃の喉が詰まる。
あまりにも細い。
あまりにも、 壊れそうだった。
桃
ベッド横に座る。
返事はない。
赫は、 しばらく動けなかった。
こんなの。 見たくなかった。
”守る” そう決めたのに。 結局。
壊れるまで、 間に合わなかった。
紫
誰に向けた言葉か、 全員分かっていた。
加害者。 教師。 見て見ぬ振りをした連中。 そして。
何もできなかった自分達。
コメント
1件
みぅだよ🤍🥀 第11話、読んだよ。 …救急車のシーンからずっと、胸が締め付けられた。 特に「卒業までは生きるつもりだった」って黄の言葉が、めちゃくちゃ重くて…ずっと一人で抱えてたんだなって思うと泣きそうになった。 赫の「気づけよ」も、紫の怒りも、水の後悔も、全部ちゃんと届いたよ。 最後の桃が泣き崩れるところで、私も一緒に泣いた。 愛衣さん、本当にありがとう。続きも読ませてね。