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放課後の教室は静かだった。
さっきまであった騒がしさは、
嘘みたいに消えている。
机と椅子が並ぶだけの、
空っぽの空間。
この時間が、嫌いじゃない。
むしろ安心する。
……はずだった。
教室の奥
窓際に、誰かが立っている。
見間違いかと思った。
でも、その背中は見慣れている。
白石だった。
声をかけようとして_____
やめる。
何かが、違った。
夕焼けの光に照らされた横顔。
その頬を、
静かに、一本の線が伝っていた。
涙だった。
泣き声はない。
肩も震えていない。
ただ、涙だけが落ちていく。
息が止まる。
あんな顔、見たことがない。
笑っていない白石。
作っていない白石。
赤枝煌 アカシコウ
思わず、名前がこぼれた。
白石の肩が、びくりと揺れる。
慌てて手の甲で目元を拭う。
振り向いた時には、
もう笑おうとしていた。
白石樺伶 シライシカレン
少し掠れた声。
でも、必死に明るさを取り戻そうとしている。
赤枝煌 アカシコウ
そんな質問、意味がないとわかっているのに。
白石樺伶 シライシカレン
笑う。
でも、その目はまだ少し赤い。
沈黙が落ちる。
教室には、僕らしかいない。
誰もいない。
それでも、
白石は泣いていたことを認めない。
赤枝煌 アカシコウ
一歩、近づく。
赤枝煌 アカシコウ
言葉は、思ったより静かに出た。
白石の表情が止まる。
白石樺伶 シライシカレン
即答だった。
でも、その声は震えている。
赤枝煌 アカシコウ
短く、言う。
赤枝煌 アカシコウ
自分でも驚くぐらい、はっきり言えた。
白石の目が大きく揺れる。
何かが、崩れる音がした気がした。
白石樺伶 シライシカレン
小さな声。
白石樺伶 シライシカレン
その言葉は、責めているようで
どこか救いを求めているみたいだった。
沈黙。
白石の目から、また一粒、涙が落ちる。
今度は隠さなかった。
白石樺伶 シライシカレン
ぽつりと、零れる。
白石樺伶 シライシカレン
それが初めての"本音"だった。
胸の奥が、締め付けられる。
まだ全部じゃない。
きっと、ほんの一部。
それでも、
赤枝煌 アカシコウ
根拠なんてない。
でも、そう言いたかった。
白石は、涙をこぼしながら、
ほんの少しだけ笑った。
その笑顔は、
今までで一番、綺麗だった。
"作られていない"笑顔だった。
夕焼けが、静かに差し込む。
騒がしい世界の音は、届かない。
ただ、君の静寂が、ここにあった。
そして、僕は
初めて、
そこに触れた気がした。