あの異様な空気には 何となく、気付いていた 「教室を出る」 たったそれだけの事が どうしてこんなにも 骨が折れる任務になってしまったのか…
僕はちょっと職員室に───
そう言って 僕はやんわりと拘束を解いて みんなから1歩、後ろに下がった
────その行動が、地雷だった
空気が張り詰めた 全員の瞳孔が、ギュッと 狭まる音が聞こえた気がした
椅子の軋みも 誰の呼吸音も聞こえない
────ヤバい
と、野生の勘が叫んだ
僕は、ドアが無理なら窓から!と 窓枠を飛び越えて外に飛び出した
振り返る間もなく
Mr.赤ちゃんが奇声と共に 全力タックルを仕掛けてきた
その突進を、ほんの半歩 すり足で避ける
花壇に盛大に突っ込む姿を横目に 僕は校庭側に走り出した
Mr.マネー
Mr.マネー
目の前で、Mr.マネーが 大量の金貨を空中にばら撒いた
────やる気満々だな…
この金貨は目眩しで 恐らく、この中に罠を混ぜたんだろう
靴のグリップを最大限に使い 地面を蹴る角度で進路をずらした
────まぁ…
「事前に注意喚起しちゃ 罠の意味無くないか……?」
とは思ったけど それは黙っておいた
次の瞬間
背後から飛んできたのは ──────……え?……麻酔針!?
“ver3 麻酔銃”じゃないか!!
ウィザー捕獲する時に 使ってたやつだよね!?
カチャリ、と乾いた音
Mr.バナナは僕に銃口を向け 数発、同時に撃ち込んできた
しかし、その弾道は どれも身体を掠りもしない
視線を向けるより早く すまない先生は一歩踏み込み
体を滑らせ、宙を舞い 流体のようにすり抜けていく
Mr.バナナが苦悶の表情を浮かべるが 容赦はしない
物陰や障害物を使って 素早くその場を駆け抜ける
次に待ち構えていたのは Mr.レッドとMr.ブルー兄弟
短剣を構えるMr.レッドに 弓を構えるMr.ブルー────
短剣と矢尻に何か塗ってある
恐らく 麻痺系の薬品だろう
流石のコンビネーションだが
瞬間的に 2人の隙間を抜けて回避する
予想外だったのか 2人は慌てふためきながら追いかけて来た
抜けられた!!
兄貴!!!
職員室行くだけなのに!!!
何とか 別の入口から校内に入り
曲がり角を抜けた瞬間……
────通路が、無い
……え? この先に廊下あったよね……??
……壁??
Mr.銀さん
通行禁止ですよ!
Mr.銀さんがにこり、と 偽壁の裏から顔を覗かせた
作ってるんだ!!!
完璧な偽壁だったが ボゴォンッ!!と
思いっきり素手で殴って 強行突破させて貰った
「え!? 嘘だろ!?」と Mr.銀さんは声を漏らす
偽壁の素材に岩盤が混じってて 凄く手が痛かった
その先はMr.ブラックが仕掛けた トラップの嵐だった
睡眠ガス、落とし穴、束縛トラップ 視線誘導のレーザー光線……
ピタゴラ装置が動くが 僕は的確に、素早く動く
なんでこんなに罠だらけなの!?
すまない先生
……これ、100% リスポーンしたら捕まるな……
いつの間に追いついたのか 生徒たち全員に挟まれる
7人を相手に 何とか攻撃を躱す事ができた
攻防が激しさを増す中 僕は生徒たちに問いかけた
理由を教えてくれ!!
だが、生徒たちは口を開かない
目を合わせても きごちなく逸らされるだけだった
僕は理由を知らない
ただ、彼らが必死に
僕を足止めしようと 必死になっている事だけは分かる
一向に止まない 生徒たちとの攻防
いつまで続くんだ!!!