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────あれから、1時間…
何とか……職員室まで 逃げ切る事ができた……
ふぅ、と息を漏らす
僕は、壁に背を預けて 膝に手をついた
Lv1で魔王城を突破してきた 勇者の気分だ…
Mr.エックスとの対決より 何倍も、疲れが押し寄せる
呆れと関心が混ざったような 笑みを浮かべながら
そっと、目を閉じる
ほんの、一瞬の静寂────
それだけでも この上ないご褒美だった
────しかし
その静寂は長くは続かなかった
ガララッ、と 職員室の扉を開けると
待っていたかのように 駆け出してくる“影”が、3つ
Mr.赤ちゃんが 全力で突進してきた
僕はその体を 何とか受け止められた
次に駆け寄ってきたのは Mr.ブルーと、Mr.銀さんだ
この間も、Mr.赤ちゃんはグリグリと 胸に額を擦り付けてきて
ちょっと痛い
2人の頭をそっと撫でると
少し、安心したように でも、どこか悔しそうに笑った
その、少し後ろ────
Mr.ブラックとMr.レッドが 俯き加減に、無言で歩いてきた
2人が、ぎゅっと 僕の服の袖を引っ張る
一向に視線を 上げようとしない2人に
僕は小さく笑って、頭を撫でた
更に、その後ろ
無言でジリジリと 距離を詰めてくるのは
Mr.バナナとMr.マネー
ふたりとも さっきまでの攻防の主犯格だ
Mr.バナナは
当てられなかった事実に 悔しさを滲ませながらも
逆に 目をギラつかせていた
Mr.マネーは……いつも通りだ
でも、ここぞと言う タイミング良く邪魔をしてきて
僕も何度か 危なかった事は黙っておこう…
この状況 一言で言うなら、「カオス」だ
どれだけ聞いても
「秘密」「言えません」「国家機密」と 頑なに拒否され
結局 何一つ真相は明かされなかった
僕は深く息を吸って 宣言する
一瞬、場が凍った
突然始まった、鬼ごっこ
廊下に響く、足音と叫び声 僕は、全力で逃げる
────でも、 どこか頬が緩んだ
こんなにも 全力で追いかけてくれる
まるで 僕の無事を確かめるように…
その想いが、胸に沁みた
何だかんだ言っても、僕は────
君たちが 世界で1番、大切なんだ