@ 赤
待って!桃くん!!
赤の声は虚しく、 ただ部屋に響くだけだった
赤に掛ける言葉も見つからず 水の口は閉じたまま
赤の目線は段々下がり、 表情は暗くなって言った
@ 赤
…ごめんなさい、っ
@ 赤
桃にも…事情はあって、
@ 水
うぅん、大丈夫だよ
@ 水
…あ、あと…
『僕の名前は水』と付け足し 彼の耳元でこっそり喋る
@ 赤
…水、さん…
@ 水
次からはそう呼んで?
2人だけにしか聞こえない声量で ひっそり喋る
@ 赤
…、でも…あの、っ
@ 赤
……2人の時は、
かみさまって言っていい?
かみさまって言っていい?
少しボソボソと、呟く赤
真っ直ぐとした瞳に、 水の首が横を振る事はなかった
@ 水
そろそろ帰るね、
@ 水
また明日。赤くん
@ 赤
うん、また明日
水は赤に背を向け、襖を開けた
襖を閉めると直ぐに姿を消し、 「桃」という男児を探した
桃は隣の部屋の隅で 体育座りをしていた
@ 桃
ごめんなさいっ、…
@ 桃
何で…っ、何でぇ…、
@ 桃
…っごめんなさいっ、
自分の発言に責めているのか ずっと「ごめんなさい」と謝り続けている
@ 水
…、
幼い子が、あんなに自分を責めて、 苦しめているのに、水の心は 締め付けられている
あの年代の頃は、自分中心で 世界が回っていると思う時期だ
そんな子供が、他人を信じれずに 自分を苦しめている
@ 水
…(ごめんね、今は…)
@ 水
(…まだ救えないんだ、)
自分の道徳心を無理やり抑え 彼から目を逸らした
救いたい本能で、足が 鎖のように重い
神社の方面を向き直し 水は空を飛ぶ
彼の背中が、罪悪感と責任感で どんどん重くなって行った
@ 水
…ごめんね。