騒々しい蝉声の中、 ササッと筆を動かす。
誰かに見せる訳でもないが、 その漫画を描き続ける
その内容はよくある 恋愛もので、昔好きだった人を モデルに描いている。
…ん〜ここは…
こうがいいな
こうがいいな
エアコンがなければ気絶でも していただろう。暑い中水分補給は 忘れないようにしなければいけない
………
話を描いていくうちに なぜ彼を好きだったのか、 愛を望んでいたのか 思い出せなくなっていく
思い出そうとすると、 遠ざかる記憶は、 まるで春の暖かな温もりの ようだったことだけは 鮮明に思い出せる。
彼が、居なくなった時は まるで……まるで 望んだもの全てが崩れていく ような感覚だった。
うるさいな…
と、蝉声に対し 無意味なことを呟きながら 今はなき彼と私の恋愛物語を 描き続ける。
誰の目にも止まらなければ
いいのだけれど…
いいのだけれど…