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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 黄様若干翠様に嫌われ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ パクリ禁止⚠️
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3,静脈に流れる死
まだ夜と呼べるほどの暗さが残る時間だった。
遠くで低い鐘の音が鳴る。
朝ではない。
けれど確かに、今日が始まろうとしていた。
誰かに声を掛けられた。
聞き慣れない声だった。
須智ではない。
美琴は眠たげに目を開け、闇に沈む天井を見上げた。
声の主は、短く名乗った。
背は自分より小さく、制服の襟を少し乱している。
須智や亥留馬のような緊張感のない、どこか砕けた気配だった。
その言葉に、美琴は反射的に頷いた。
夏希はそう言って、鉄格子の鍵を開けた。
金属音が、冷え切った空気を裂く。
鎖が差し出される。
美琴が静かに言うと、夏希は片眉を上げて笑った。
鎖が腕に絡む。
金属の冷たさが皮膚を刺す。
その痛みが、現実を突きつけてくるようだった。
連れて行かれた先は、見たことのない部屋だった。
灰色の監獄とは違い、白を基調とした空間。
壁も、天井も、床さえも、光を反射して眩しい。
冷たい、無菌の世界。
まるで「死」が息を潜めているようだった。
中央には寝台。
その周囲に、三つの影が立っていた。
一人は、資料を静かにめくる亥留馬。
一人は、準備をしている須智。
そしてもう一人、見覚えのない男。
男は、表情を動かさぬまま名乗った。
その声には温度がなかった。
命を扱う場所にいる者とは思えぬほど、淡々としていた。
須智が蘭の方へ向き直る。
短い応答ののち、蘭は美琴の方へと視線を向けた。
命令に逆らう理由はなかった。
足が震えていたが、言われるがままに寝台へ体を預ける。
白いシーツが肌に触れる。
冷たい。
まるで氷の上に寝かされているようだった。
四肢が固定され、袖がめくられる。
露わになった腕には、いくつもの古傷と、細い血管が浮かんでいた。
須智が震える手で注射器を握る。
無色透明の液体が、光を受けてきらめいた。
その光景を、美琴はどこかで見たことがある気がした。
思わず口から漏れた言葉に、亥留馬が眉を動かした。
息を吸う音が聞こえる。
須智の喉が、かすかに鳴った。
蘭が無感情に告げる。
須智は短く頷き、注射針を静脈に当てた。
肌に冷たい金属の感触。
心臓が跳ねる。
やめてくれ
やめてくれ
やめてくれ
叫びたいのに、声が出ない。
液体が体内に流れた瞬間、焼けるような冷たさが走った。
まるで氷の刃が血管を逆流していくようだった。
心臓の鼓動が一度、大きく跳ね上がる。
そのあと、世界が遠のく。
視界の端がぼやける。
音がゆっくりと沈んでいく。
——ここ、どこ。
白い世界の中に、小さな男の子が立っていた。
制服を着た須智。
まだあどけない表情で、それでも冷たい目をしている。
その声が頭の中で響く。
幻覚か、記憶か、分からない。
美琴は、涙を流しながら叫んだ。
その名を呼んだ瞬間、現実の須智の肩がびくりと震えた。
夏希と亥留馬、そして蘭が同時に顔を上げる。
須智は目を見開き、注射器を握る手が震えていた。
声にならない声が漏れる。
夏希が低く呟く。
しかし須智は、震えながらも最後まで注射器を押し込んだ。
全ての液体が注入されたと同時に、カチリと音がした。
息を吸う音、泣くような金属の響き。
美琴の体は微かに跳ね、そのまま沈黙した。
心拍がゆっくりと落ちていく。
体温が下がり、呼吸が薄くなる。
でも、死なない。
死にきれない。
これが……延命、なんだ
どれほどの時間が経ったのか、分からなかった。
まぶたを開けたとき、光が痛かった。
傍らに立つ夏希が、ほっとしたように息をつく。
声が掠れていた。
喉の奥に、氷を詰められたような冷たさが残っている。
夏希は小さく笑って、鎖を外した。
その言葉に、冗談の色はなかった。
牢獄に戻ると、心雨が駆け寄ってきた。
声を出そうとしても、唇が震えるだけだった。
心雨は小さく首を振り、囁くように言う。
その声は、まるで独り言のように静かだった。
美琴の視界の奥には、まだ幼い須智の幻影が残っていた。
蔑むような、悲しむような、複雑な瞳。
ごめん、須智くん
赦してくれ
俺は――生かされてしまった
壁の向こうで、誰かが鐘を鳴らした。
昼を告げる音。
しかしそれは、まるで死者を呼ぶ鐘のように響いた。
3・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡40
主
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コメント
4件
一つ一つの描写が儚くて美しくて...このお話のたくさんある内の一つの魅力だなと思いました!
初コメ失礼します もうめっちゃ好きすぎます!! 呼び捨てになってしまいますが、美琴が須智の名前を読んで、それで須智が動揺?してるのがものすごく好き、!!(語彙力お母さんのお腹の中に置いて行きました)