湊
母さんは、昔作家だったんだよね?
母さん
ええ、まあ一応ね
母さん
物書きみたいに見えるかしら?
湊
いいや、モデルと言われた方がしっくりくるね
母さん
ふふっ、お世辞が上手くなったのね
湊
それなりに有名だったんでしょ?もう、書かないの?
前から疑問に思っていた。 母である清水未鈴はそれなりに知られた作家だった。 だが、何故か突然表舞台から姿を消したのだ。
母さん
そうねえ、もう書く気は無いわ
湊
僕、読んだよ。母さんの作品
母さん
あら、恥ずかしいわ
湊
どうしてもう書かないの?
母さん
母さん
創作意欲が湧かないのよ。それに、小説はもう私を許してはくれないわ、きっと。
湊
湊
許す?
母さん
父さん
まあまあ、湊もそう急かすなって、母さんにも色々あるんだよ
父さんが書斎からでてくる。彼は現役の作家だ。
湊
父さんは、理由を知ってるの?
湊は必死だった。母の小説に惚れ込んでしまったのだ。
父さん
父さん
そうだなあ、まあ、想像は出来るぞ
湊
じゃあ、教えてよ
父が微笑む
父さん
少し、昔話をしようか。いいだろう?未鈴さん
母さん
母さん
はあ…そうね、分かったわ。コーヒーでも入れましょうか?お父さん
父さん
あぁ、僕が淹れよう。母さんはホットでいいかい?
珍しく、父さんがそう言う
母さん
ええ、そうするわ
ポットがお湯を沸かす音だけが響く。 湊は期待していた。 偉大な小説家が紡ぐ物語に興味があった。 そして同じくらい、父と母の物語が聞きたかった。 コーヒーの香りが広がる。
父さん
さて、どこから話そうか







