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莉乃
いつも通り仕事を終えて家に着くとそう言った。 誰も返してくれる人なんかいないのに。 はぁ、今日も疲れたな。 荷物を置くとソファに横になりながら携帯を開いて、LINEを開こうとしたら間違えてニュースを押してしまい、消そうとするとある文字が目に入ってきて。 "FANTOM星谷湊、芸能活動引退" …え?え? FANTOM…星谷…湊…? 見間違いかと思い仕事で疲れた目をこすりもう一度画面を見る。 間違いない、私の好きな湊くんの名前だ。 芸能活動引…退…? しばらく思考が止まりずっと同じところを読んでいた。 …結婚かな。 でも引退ってFANTOMとか事務所やめるどころか、一般人になっちゃうってことだよね? そこまでする? ドラマにも?映画にも?なんにも出ないってこと? はは、そっか。 目から雫がこぼれ落ちる。 ぽたぽたと落ちて止まらない。 誰もいないこの部屋には慣れていたはずなのに急に寂しくてたまらなくなって。 私が泣く音は部屋の中に響いていた。 私、もうどうしたらいいんだろう。 仕事も大して好きなことを出来てない、恋人だっていない、何一つ充実していない私から、湊くんを奪ったら何が残るの? 私の生きがいはなんなの? なんのために生きたらいいの? 頭をぐるぐるとし始め自問自答ばかり。 もし本当に結婚だとしたら、1人の女の人だけのために全てを捨てちゃうのかな。 そんなに大切なんだね。 悲しがっても意味ないのに。 だって私はただのファン。 顔だって、名前だって、何にも知られてない。 私が存在している事だって湊くんは知らないんだから。 そう考えてまた涙が出る。
莉乃
恋人じゃなくていいから。 私を知って欲しい。 あなたの視界に私を入れて欲しい。 これはもう叶わない願いなのかな。 私はその夜、子供のように泣いてそのまま疲れて寝てしまった。