主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
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第75話『雨の檻』
窓を叩く雨粒が、昼間からやむことを知らない。
湿った空気が部屋にこもり、頭の奥をじわじわと締めつける。
いるまはベッドの上で横になり、両腕を額に乗せながら呻くように息を吐いた。
いるま
声にしても和らぐはずがないのに、つい零れてしまう。
偏頭痛はいつも唐突にやって来て、去るのもまた唐突だ。
だが今夜は妙に長い。
低気圧が居座るせいだろうか。
耳鳴りのような雨音が、痛みをさらに煽っている気がした。
ドアがそっと開く気配がした。
振り返るのも億劫で、目だけを動かすと、そこにはらんが立っていた。
らんの表情は柔らかく、しかしどこか心配げに曇っていた。
らん
らん
優しい声。
けれど、その優しさが今のいるまには重く響いた。
――こさめの記憶を取り戻してからのらんに、どう接していいのか分からなくなっている。
自分だけが遠ざけられているような、不可思議な距離感。
苛立ちと不安が混ざり合い、喉の奥で別の言葉に変換される。
いるま
短く、冷たく、突き放すように。
言った瞬間、しまったと思った。
らんがほんの少しだけ悲しそうに目を伏せるのが見えたから。
らん
声も、影も、淡く沈んでいった。
らんはそれ以上何も言わず、静かに部屋を後にした。
閉まるドアの音がやけに重く響き、いるまは胸の奥に苦いものを押し込まれた気がした。
いるま
そう呟いて、額を覆う腕を外す。
痛みは変わらない。
だが頭の内側には、痛み以上に厄介な影が広がっていた。
あの時、聞こえた声。
いるまの影
低く、濁った響き。
耳に届いた瞬間、心が沈むような、溺れるような感覚がした。
気づけば頷きかけていた。
もしあの時、本当に頷いていたら……自分はどうなっていたのだろうか。
額を押さえたまま、いるまは思考をたどる。
――あれは誰の声だ?
敵か、幻聴か、それとも。
いるま
ぽつりと零れた言葉は、湿った空気に吸い込まれていった。
昔から「頭がいい」と言われることはあった。
知識があるから、語彙が多いから、少し冷静だから。
そういう理由で周囲に一歩引かれてきたこともある。
だが、賢いなんて言葉が今の恐怖を救ってはくれない。
影――。
らんは影に乗っ取られた。
自分も同じ道を辿るのかもしれない。
あの声が本当に自分自身の影だとしたら?
もし再び呼ばれたら、今度こそ頷いてしまうのではないか。
そうなったら、自分は自分でなくなる。
六人の輪の中で、刃となって暴れる存在に変わってしまう。
いるま
その言葉は小さな子供のように弱々しかった。
普段の自分なら絶対に吐かない声色。
いるまは顔を両手で覆い、暗闇を無理やりつくる。
外の雨音がさらに強まり、まるで世界が閉じ込められていくようだった。
らんの悲しそうな声が耳に残る。
らん
あれは自分が突き放したせいだ。
分かっている。
だが、近づけば近づくほど恐ろしくなる。
もし影に呑まれたら、自分が最初に傷つけてしまうのは、きっとらんだから。
その想像が胸を抉る。
だから冷たくするしかなかった。
優しくされるほど、怖い。
らんを守りたいのに、突き放すことしかできない。
矛盾が胸を灼く。
いるま
答えは、雨の檻の向こうに隠れている。
偏頭痛の痛みと影の恐怖が混ざり合い、いるまはただベッドに沈み込んでいった。
――まだ、自分は自分でいられるのだろうか。
問いだけが、夜の底に落ちていった。
第75話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡30
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コメント
5件
いつ影に乗っ取られるかわからないから冷たくするしかないって めっちゃ悲しい😭 続きどうなるんだろう?楽しみに待ってます!!!
自分小説をめっちゃ感情込めて朗読するっていうすごい変な楽しみ方をしてるんですけど、このシリーズやっぱ朗読するの楽しすぎる… 要するにめっちゃ面白い今まで出会ってきた二次創作で私の中でかなりティア高い小説です! これからも投稿頑張ってください!