主
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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
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第76話『消えゆく手』
雨の音はまだ続いていた。
窓ガラスを無数の粒が叩き、時折、風に押し流されるようにして震える。
その音を遠くに聞きながら、らんは自室のベッドに腰を下ろしていた。
さっきのいるまの顔が、どうしても頭から離れない。
らん
ぽつりと呟いた声は、湿った空気に吸い込まれていった。
冷たく「平気」と返された時の感触が胸の奥に残っている。
もちろん、しんどい時に素直になれないことくらい分かる。
けれど、あんなに冷たく言われるとは思わなかった。
驚いたし、少しだけ心が痛んだ。
――しんどかったのかもしれない。
そう自分に言い聞かせながらも、らんの心には別の棘が刺さっていた。
自分だって同じだ。
こさめの記憶だけは取り戻せたけれど、他の皆については何も思い出せない。
思い出せた嬉しさと同時に、罪悪感が大きく広がっている。
さめに笑いかけながら、他の五人にどう接すればいいのか分からなくなる瞬間がある。
皆を好きな気持ちは変わらないはずなのに、心のどこかで「思い出せない自分」が壁を作ってしまっている。
そんな時だった。
部屋の隅に淡い影が差す。
らんは驚いて顔を上げた。
見慣れた姿が、暗がりの中に立っていた。
らん
そこにいるのは、自分と同じ輪郭を持つ「らんの影」。
その姿は普段よりも少しだけ薄く見えた。
けれど、らんの視線を引きつけたのは輪郭ではない。
――右手。
影の右手が、まるで煙のように淡く揺れ、消えかけているのが分かった。
らん
気づけば、問いかけていた。
影は一瞬だけ目を伏せ、それから短く答える。
らんの影
即答だった。
迷いを感じさせない声音。だが隠そうとしているのが見え透いていた。
らんはそれ以上問い詰められなかった。
ただ胸に重たい石が落ちてくるような感覚だけが残る。
らん
らんは視線を落とし、膝の上で両手を握りしめた。
らん
らん
らん
影は黙っていた。
その沈黙は責めるものでも、同情するものでもない。
ただ受け止める沈黙だった。
そして次の瞬間、まだ消えていない左手がそっと伸びてきた。
らんの頭に触れ、撫でる。
優しい仕草。
温度はないのに、不思議と温かさを感じた。
らんの影
影は言葉を選ぶように、ゆっくりと微笑んだ。
その微笑みは、らんがずっと欲しかった答えのようだった。
らんの影
それだけ。
余計な説明も、理由もなく、ただ確かな響きだけを残す。
らんの胸の奥がじんわりと熱くなる。
気づけば目頭が少し滲んでいた。
言葉にする代わりに、小さく頷く。
その反応を確かめたかのように、影は微笑んだままスッと輪郭を薄めていく。
淡い光のように揺らめきながら、完全に姿を消した。
残されたのは、らん一人。
ベッドに倒れ込み、天井を見上げる。
目尻から零れる涙は止まらなかった。
らん
嗚咽が混ざる。
声は子供のように弱々しく、頼りなかった。
枕に顔を埋め、涙を隠そうとするように抱きしめる。
罪悪感も、不安も、誰にも見せられない弱さも全部、雨音に溶けていった。
夜はまだ長い。
だがその闇の中で、らんの小さな願いだけが確かに響いていた。
第76話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡40
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コメント
2件
最高かよ……マジで よくこんなに話広げられますね……めっちゃ尊敬*. ゚(*´ω`*)゚ .*
… マジで一気見した… 最高すぎたぁ