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パチパチパチ。

軽快な拍手の音が室内に響く。

アバドン

ご名答。

アバドン

人間の分際でよくわかったなあ。褒めてやろう。

中原の見た目でアバドンはニヤリと笑う。

太宰治

それはどうも。

アバドン

だが、それを私に伝えたとして、何になる?

アバドン

貴様にとって何か有利なことでも?

太宰治

ああ。そうさ。

太宰治

私にとってとっても有利なこと

太宰はアバドンに近づき、胸ぐらをつかんだ。

太宰治

君を完全に殺すこと。

アバドン

……ほう?

アバドンは心底愉快そうに笑った。

アバドン

膨大な時が流れた中で、私を殺す方法をようやく見つけたか。

アバドン

おもしろい。話してみよ。

太宰治

もちろん。

太宰治

君、前に罰が死んだと言っていたよね

アバドン

“言って”はいないが、“伝えた”な

太宰治

私ね、ようやくわかったんだ

太宰治

どうして君が罰が死んだと言ったのか。

太宰治

それは、君の中にいる罰の意識が薄れかかっていることを指すのだろう?

太宰治

お前が何かするたびに、兄はお前に縋ってやめてと懇願したから、兄を罰と呼んだんだ。

太宰治

ちがうか?

アバドン

……長い年月をかけ、ようやくこの体を私のものへと移すことができた。

アバドン

その間、何度殺されただろうか

アバドン

もう覚えてもおらぬな。

太宰治

だから、私は君をあえて殺さなかったよ。

太宰治

私がまだ小説家として生きていた時、私は兄を救う方法を運良く知ることができた。

太宰治

あの“奇跡の子”たちのおかげでね

太宰治

だけど私はそれをすぐには実践しなかった。

太宰治

なぜかって?

太宰治

死ぬのが恐ろしかったのと、兄がまだ君の中で生きていたからだ。

太宰は後ろにいる鏡花の手を強く握る。

太宰治

私の自殺嗜好は君を欺くためでもあり、予行練習でもあった。

太宰治

その間、私はさまざまな葛藤と後悔をしてきたよ。

太宰治

兄を救おうとすればするほど、

太宰治

私が今世大切にしたいと思う人が苦しむんだ。

太宰治

それでもめげなかった。諦めなかった。

太宰治

すべてはこの時のために。

アバドン

……私は、貴様の感動物語などに興味はない。

太宰治

それはよかった

太宰治

じゃあ、答え合わせといくね。

太宰は鏡花の腕をつかみ、夜叉白雪とつぶやく。

鏡花は驚いて太宰を見上げた。

泉鏡花

夜叉、白雪……? いきなり、なぜ……?

太宰は鏡花の問いに答えなかった。

その代わり、少し怪しげな、だが心地の良い笑顔を見せた。

太宰治

君が兄にかけた呪いは単なる気まぐれだ。

太宰治

そして暇つぶしになる遊戯程度のものだったのだろう。

太宰治

このように、人より卓越した能力をもたせ、

太宰治

その能力により狂い狂う人の姿を見て、楽しんでいたのだろう

太宰治

……すべては、神のような存在になりたくて行ったことだ

アバドンの眉がぴくりと動く。

太宰治

それにしても、君は情深いよね。

太宰治

君の劣等感から始まったことだというのに、君は己の殺し方まで丁寧に用意したんだ

太宰治

“私たち”という名の“異能力者”をね。

太宰治

いや、ちがうかな。

太宰治

君が用意したわけではない。

太宰治

君がほしくてほしくてたまらなかった、清い魂が用意したんだ

太宰治

ドーラ。……ドロフェイ・ドストエフスキーが。

アバドン

……

太宰治

あの子は利発的な子だった。そして人を慮れる良い子だった。

太宰治

それなのに、お前のような下劣な存在に魂を売った。
そしてお前はドーラの交渉を承諾した。

太宰治

そこでね、私、ずっと疑問に思っていたのだよ。

太宰治

どうして、己の命が消えるとわかっていて、ドーラと契約を結んだ?

アバドン

……それはな、おもしろかったからだよ

太宰治

ん?

アバドン

私のことなど殺せぬくせに、殺す殺すと言い張る人間どもが愉快でな

アバドン

それに、私を完全に殺すには、フェージャも貴様も死ななくてはならない。

アバドン

それなのに、契約を結ぶシグマが愉快でなあ!

アバドン

あ、あと、誰だったかなあ。

アバドン

ああ、そうだ、ニコライだ。
あいつも変に愉快だったなあ

アバドン

敬愛する先生の意思を継ぐためだって、自身とシグマを不死身にさせて、今もなお家畜のように働いておる。

アバドン

そんなの愉快で愉快で最高にアホらしくて良いじゃないか!

太宰治

……そっか

太宰治

じゃあ、鏡花。夜叉白雪を出してよ

泉鏡花

……え?

この作品はいかがでしたか?

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コメント

8

ユーザー

あぁ……もうなんて言ったらいいのか分からん……でもこれがテラーに居るべきではない神作である事は分かった。

ユーザー

誕生日に見てます… いやーー最高ですね これを見れるのが最高のプレゼント(?

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