ここ数日、うちのトランペットの音はどうしても“届かへん”感じがした。
音は出てるのに、胸の奥には響かん。
先輩の前で吹くたびに、どこか息が詰まってしまう。
宮城章広
章広先輩が、隣で静かに言う。
その声は優しいのに、心にはチクッと刺さった。
堀居瑞恵
宮城章広
宮城章広
宮城章広
分かっとる。
頭では分かっとるのに、できへん。
去年と同じ。
あの夏のコンクールのときも、うちは同じ場所でつまずいた。
堀居瑞恵
小さく呟いた声を、春が横から聞いて笑った。
土佐岡春
土佐岡春
堀居瑞恵
土佐岡春
土佐岡春
春のその言葉で少し笑えた。
でも、次の瞬間──
宮城章広
章広の声が飛んできた。
ビクッとして、唇が震える。
堀居瑞恵
宮城章広
その言葉が、心のど真ん中に突き刺さった。
堀居瑞恵
堀居瑞恵
思わず声が大きくなった。
部室の空気が止まる。
章広先輩が少し黙って、ゆっくり息を吐いた。
宮城章広
宮城章広
その言葉が、かえって痛かった。
気まずい沈黙。
春がそっと目で「落ち着き」と伝えてくる。
堀居瑞恵
やっとそれだけ言って、瑞恵はトランペットを抱えたまま部室を出た。
廊下に出た瞬間、涙が止まらんかった。
なんでやろ。
怒られたのが悔しいんやなくて──
先輩に“がっかりされた”と思うのが、一番怖かった。
夕暮れの風が吹いて、音楽室の方から練習の音が聞こえる。
でも、うちのトランペットの音は、もう鳴らへんかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!