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第1話 - あ

2023年09月12日

#恋愛

結城　真矢

サナエ

カナさん、また今日もキャラ弁作ってきたんですって？

サナエ

うちの子から聞いたんですよ

カナ

もしかして、

カナ

「キャラ弁作るのは止めてくださいって言ったことですか？」

カナ

言ったはずですよ

カナ

「サナエさんには私が何を作ろうが、関係ないですって」

カナ

それに、うちの子がキャラ弁を食べたいから作っているんです

カナ

だから、周りに何を言われても、私はやめません

カナ

それに、週に1度のお弁当なんです

カナ

うちの子も楽しみにしていますし、子供の楽しみを取るつもりはありませんよ

サナエ

私がどうしてキャラ弁をつくるのを止めて、って言ったのか、覚えてない？

カナ

「子供たちが食べ物で遊ぶからって言ってたことですか？」

カナ

そもそも、サナエさんはその場面に遭遇したこと、あるんですか？

カナ

私はそんなこと、起きないと思っていますし、

カナ

うちの子はお行儀いいので、保育園の先生から嫌な報告は受けたことないですよ

サナエ

もし、これから何か起きたらどうするのよ？

サナエ

あなた、責任取れるの！？

カナ

そうじゃないです

カナ

私は、信じてるんです

カナ

うちの子はそんな、ケンカなんてする子じゃないですもん

サナエ

あっそ、何か起きてからじゃ、責任取れないくせに

カナ

何で、そこまでして私に突っかかってくるんですか？

カナ

私が作ったお弁当が、みんなにすごく人気で悔しいからですか？

サナエ

そんなわけないでしょ！

カナ

キャラ弁なんて、興味ないし、どうでもいいわよ

カナ

どうでもいいなら、もう口出しするのは止めてください

カナ

何も問題起きてないんですから、止める意味ないですよね？

カナ

あと、これ以上そうやって文句つけてくるようでしたら、

カナ

私、先生に言うので

サナエ

好きにすればいいじゃないの

サナエ

だって、私は間違ったこと言ってるつもりないから

～2日後～

カレン

カナさん、今週のお弁当の日、親子参観でしょ？

カレン

カナさん行くの？

カナ

私、仕事で行けないんですよ

カナ

キャラ弁も、朝から仕事なのでちょっと厳しいかもしれないです...

カレン

そうなのね...残念だわ

カレン

またカナのキャラ弁が見れるかな～って楽しみにしてたんだけど...

カナ

カレンさんにそう言ってもらえること、すごく嬉しいです

カレン

初めてカナさんのキャラ弁見た時、本当にびっくりしたもの～

カレン

こんなもの作れる人いるんだ！って

カレン

うちの子も、すごくびっくりしてたし、

カレン

他の家庭のお子さんも興奮してたもんね～

カナ

うちの子も、すごく自慢げにその日のこと話してくれたんですよ

カナ

「みんなが見せて～って言ってきてくれたって」

カナ

「ママ天才だね～お弁当のプロだよ！って言ってくれて...」

カナ

本当に、嬉しかったんです

カレン

きっと、カナさんのキャラ弁、私以外にも楽しみにしてくれてる人、いると思うけどな～

カナ

そこまで言うなら、ちょっと頑張ってみようかな！

カレン

本当！？

カレン

ごめんね～なんか無理にお願いしたみたいになっちゃって、

カナ

いいですよ！全然、大丈夫です

カレン

最近、仕事はどうなの？

カレン

看護師なんて、残業もあるから大変でしょうに

カナ

えっと...その日の親子参観の日の前日は、夜勤なんです

カナ

それで、当日の朝方に帰ってくる感じですね

カレン

あっ、じゃあ、そんな無理しなくていいわよ！

カナ

いえ！みんなに見てもらいたいので、私作りたいです！

カナ

私がやりたいので、気にしなくていいですよ！

カレン

そう？でも、本当に無理しなくていいからね

カナ

はい、本当にしんどかったら止めるので、大丈夫ですよ！

カナ

心配してくださって、ありがとうございます

カレン

いいえ～

カレン

じゃあ、また親子参観でね

カナ

はい、また

～親子参観の日の16時頃～

カナ

サナエさん！ちょっと、話があるんですけど

サナエ

何？どうしたの？

カナ

どうしたの、って...

カナ

私が何を言いたいか、分かってますよね！？

カナ

サナエさんの子と、うちの子のケンカ、

カナ

サナエさんの子の方から一言、言ってきたきたそうじゃないですか

カナ

しかも、サナエさんが自分の子供に

カナ

「あの子のキャラ弁は、ママが料理ヘタだからごまかしてあんなキャラ弁にしてるんだよって...」

カナ

私ならまだしも、うちの子まで泣かせるなんて、最低ですよ！

カナ

子供を利用してまで、そんなに私のキャラ弁、辞めさせたいんですか？

サナエ

別に、そうじゃないわよ

サナエ

事実を言っただけでしょ？

サナエ

実際に、前に私がカナさんが卵焼き余ったから、って言って残った卵焼きを味見したとき、

サナエ

すごくパサパサでまずかったもの

サナエ

あんなの、食べられたものじゃないわ

サナエ

そのことを、うちの子に伝えただけよ

サナエ

周りの子はキャラ弁だから、って味も美味しいと思ってるけど、

サナエ

実際はまずいお弁当、なんて知ったら騙された気分になるでしょう？

サナエ

そんなことになる前に、私が防いであげたんじゃない

カナ

今回のことで、うちの子がどれだけ傷ついたか...

カナ

分かってるんですか？

カナ

周りの子からも、色んな事言われて、泣きじゃくってたんです

サナエ

あら？そんなに泣いちゃっていたの？

サナエ

それは、悪いことしちゃったわね～

サナエ

それじゃあ、今度からは普通のお弁当、作ってあげる方がいいわね

カナ

最初から、それが狙いだったんじゃないですか？

サナエ

え？どういうこと？

カナ

みんなの前で恥をかかせれば、きっと私もキャラ弁作る決心がつくだろう、って...

カナ

仕組んだんですよね？

サナエ

そんなこと、するはずないでしょ？

サナエ

変な言いがかり、つけるの止めてくれるかしら？

カナ

分かりました

カナ

それじゃあ、今度の親子参観では普通の、キャラ弁じゃないお弁当にしますね

サナエ

そ、それが一番よ

サナエ

やっとわかったのね

カナ

じゃあ、今度の親子参観で

サナエ

あっ、今度のお弁当の日の親子参観、私行けないんだったわ

サナエ

夫と出かける予定があって...お弁当作る時間もなくて...

カナ

それは、残念ですね...また、今度

～親子参観の日の16時頃～

サナエ

カナさん！

サナエ

うちの子にキャラ弁渡したんですって！？

サナエ

どうしてそんな勝手なことしたのよ？別に、頼んでないわよ！

サナエ

今日はあまり作る時間なかったから、簡単に作れるオムライスにしたのに...

サナエ

全部残して、あなたが作ったお弁当食べた、って言うじゃないの？

サナエ

しかも、今日もあなたキャラ弁にしたんですって？

サナエ

もう、そんな下品な行動生むようなもの作らないで、って言ったでしょ？

カナ

今回は、サナエさんのお子さんから欲しい、って言われたから渡したんですよ

サナエ

は？どういうこと？

カナ

実は、琴の発端はカレンさんなんですよ

サナエ

え？何でカレンさんなの？

カナ

前に、私の子と、サナエさんの子が私のキャラ弁のことで少しケンカになった時、

カナ

カレンさんの子に、サナエさんの子がこっそり、

カナ

「本当は、美味しいキャラ弁食べたいんだって言っていたそうですよ」

サナエ

は！？

カナ

だから、私今日はうちの子の文と、サナエさんの子に渡すようにキャラ弁を作ってあげたんです

カナ

それで、「キャラ弁が食べたい、って言ってたから作ってみたんだけど、食べてみる？」

カナ

って言って渡したら、迷わず私のキャラ弁の方を選んでくれましたよ

サナエ

そんなこと、あるわけないでしょ！

サナエ

適当なこと、言わないでよ！

カナ

全然、適当じゃないですよ

カナ

自分の子の好みくらい、実の母親なのに把握、していないんですか？

カナ

本当はキャラ弁が食べたかった、ってかなり前から思っていたみたいですよ

サナエ

そんなわけないわよ！

サナエ

だって、一度私が作った時、残して帰ってきてたの

サナエ

そのあと、普通のお弁当作ったら、ちゃんと食べてくれたのよ

カナ

確かに、サナエさんの子、残さず食べてますけど、

カナ

前にサナエさんがキャラ弁を作ったのに、まずくて残したらすごく怒られたそうですね

サナエ

え？そこまで聞いてるの...

カナ

私から聞いたんじゃないですよ

カナ

話してくれたんです

カナ

それで、「本当はママのお弁当、あまりおいしくないんだって...」

カナ

サナエさんも、それはなんとなく分かっていたんじゃないですか？

サナエ

いや、そんなことないわよ...

サナエ

だって、ちゃんとしっかり残さず、食べてくれてたの

カナ

言い聞かせたいのかもしれないですけど、

カナ

サナエさん、初めてキャラ弁を作った時に、

カナ

「こんな気持ち悪いキャラクターのお弁当、みんなに見せたくない！って」

カナ

お子さんに言われたらしいじゃないですか

カナ

それで、いつも周りの園児の子たちが私が作ったキャラ弁に寄ってくるのが、

カナ

羨ましかったんじゃないですか？

サナエ

羨ましいだなんて、そんなこと、一切思ったことないわよ

サナエ

そんなこと言って...本当は、お子さんにそう言われて、かなりショックだったんですよね？

カナ

サナエさんのお子さんが、「ママにそう言ったら、すごく怒られて、

カナ

それで1人で泣いてるの見ちゃったんだって言ってましたよ」

カナ

料理に自信あったのに、子供に結構きついこと言われちゃって...

カナ

ショックで、悔しくて、腹いせに私にも意地悪したくなっちゃった、

カナ

って言う感じですか？

サナエ

別に、そんなことするつもりは一切なかったわよ

サナエ

単に、あなたのキャラ弁づくりなんて、みっともないと思っただけ

カナ

でも、子供はみんな喜んでくれました

カナ

あと、カレンさんが言ってましたが、

カナ

サナエさんが態度を改めようとしないなら、私たちも関わらない方がいいわね、

カナ

って、言ってましたよ

サナエ

え！？それは困るわよ...

サナエ

カレンさんを中心にママ友のグループができてるんだし、

サナエ

私、その仲から外れたりなんかしたら...たまったもんじゃないわよ

カナ

本当に、集団行動が好きなんですね

サナエ

悪い！？園内でママ友の仲良くするのは当然のことでしょ

カナ

そうですよね、じゃあ、仲良くしましょう

カナ

私、ここ最近で今まで話したことなかったママ友とも、結構仲良くなれたんですよ

カナ

この前の親子参観で、数人のママ友とキャラ弁交換会しよう、なんて話しましたし...

サナエ

何よそれ？私、知らないんだけど...

カナ

あれ？サナエさんのことだから、とっくに知ってるものだと思ってましたよ

カナ

模試、来たかったら、グループに招待してあげてもいいですよ？

カナ

私が、みなさんにキャラ弁の作り方も教えるので、ぜひ

サナエ

カナさんに教えてもらうことなんて、別にないわよ

カナ

仲良く、じゃなかったんですか？協調性は、大事ですよね

サナエ

分かったわよ！じゃあ、招待してちょうだい！

カナ

もちろんですよ

カナ

それじゃあ、サナエさんもキャラ弁と、料理のクオリティ、

カナ

頑張って上げてきてくださいね

～後日談～

カナ

その後のキャラ弁交換会で、サナエさんは私に対して物腰柔らかく接してくれるようになりました

カナ

キャラ弁交換会を定期的に開催するようになってから、今では私がママ友にキャラん弁を教える、

カナ

中心的存在になっています

カナ

今まで散々私のキャラ弁を馬鹿にしてきたサナエさんも、私の交換会に来ていて、

カナ

私が料理を教えているのが信じられません

カナ

立場が逆転した気がして、スッキリしました

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結城　真矢

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