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・登場人物不遇 ・死ネタ ・多少キャラ崩壊
俺が生まれたのは、地図にも載っていないような小さな村だった。
俺は、生まれたときから「災いの子」と呼ばれていた。
俺が生まれたときから不作が続き、 俺が咳をすれば、作物が枯れ、 俺が笑えば村の人間が病気になった。
生きているだけで人を不幸にした。
村人はそんな俺を許さなかった。
両親は皆の前で見せしめのように殺され、 俺は牢に入れられた。
そんな俺でも、唯一の味方がいた。
阿部
夜が更け、村人が寝静まった頃。 食料を持ってきてくれる阿部ちゃん。
目黒
俺は、阿部ちゃんは不幸にしないように。 と、いつも感情を殺して接した。
表情を変えずに、接した。 笑いかけたいのも、必死にこらえて。
そんな日々を過ごしていたある日。 阿部ちゃんはいつもそそくさと帰るのに、 今日は俺と話をしてくれた。
阿部
阿部
目黒
また、味方がいなくなる。 でも、いい。 阿部ちゃんが不幸になるぐらいなら。
阿部
目黒
阿部
牢の隙間から、手を入れて俺の手を握ってくれた。
あぁ…暖かい。離したくない。 初めて人に触れた。 人は、こんなにも暖かいのか。
俺はこのとき、 二人の残された時間を大切にしよう。そう決めた。
だが、運命はそれを許してはくれなかった。
阿部ちゃんは、日に日に痩せていった。
俺と話しているところを村人に見つかり、 俺と同じ牢に入れられた。
また、俺のせいで、人が不幸になる。
もともと阿部ちゃんの体は強くなかった。
栄養が足りない体は、やせ細っていき、 風邪もよく引くようになった。
俺は知っている。 俺のせいで、俺の大切な人が死んでいく。
阿部ちゃんは起き上がることも少なくなっていった。
薄い布団の上で、必死に病気と戦っていた。
おれは、その横で、手を握ることしかできなかった。
目黒
阿部
阿部ちゃんの視力はだんだん落ちていき、 最期の方は虚ろな目になっていた。
呂律もまばらになり、会話も難しくなっていった。
そんな辛い毎日を過ごしていたある日。 星がよく出ている日だった。
阿部
目黒
阿部
そう言って、静かに目を閉じた。
あぁ、俺は君なしで幸せになれない。なりたくない。
阿部ちゃんが冷たくなった日。 俺は1日中、阿部ちゃんの手を握り続けた。
そして、日が明けたとき。 俺はゆっくりと立ち上がって、牢の外に向かって叫んだ。 初めて、俺の感情をぶちまけた。
目黒
目黒
自分の喉から出ていると思えない声だった。
人生でこんなに叫んだのは初めてだ。
目黒
目黒
目黒
その日、村は炎に包まれた。
俺はすべてを燃やし尽くした。 村も、村の人間も、阿部ちゃんも、自分自身も。
愛した人を殺し、 憎んだ村を壊した。
俺は最後まで阿部ちゃんの隣で目を閉じた。
肉が焼ける匂いが充満する。 自分自身に激痛が走る。
目黒
誰にも救われず、誰かも救わず、 世界のどこにも存在しなかったかのように、 俺はこの日、世界から消えた。
阿部