河本くん
…ふーん、会長が、か
月
河本くんが話聞いてくれるとは…
河本くん
は?俺をなんだと思ってんの
河本くん
別に興味はないけど
河本くん
河本くん
…ていうか聞けばいーじゃん、会長に
月
え、だって、教えてくれるわけないじゃん
月
わざわざ別れてから引き返したりするくらい…隠したい、ことなのに
河本くん
…慣れてないんじゃないのー
月
え?
河本くん
普段相談とかしない人だから
河本くん
言いたくても、なんて言えばいいかわかんない…とか
河本くん
ぜんぜんあり得ることだと思うけど
月
!
月
た、たしかに…
河本くん
意外
月
え?
河本くん
会長とアンタってお互い、なんでも知ってるのかと思ってた
月
そんなわけないじゃん…
河本くん
だってアンタ、会長と話すときは雰囲気違う
月
あはは、だって幼なじみだし────
河本くん
いつものぶりぶりした感じじゃなくて、さばさばってしてる
月
…え?
河本くん
俺はいつものよりそっちの雰囲気のがマシだと思ってるから
河本くん
会長がすごいのかと思ってた
河本くん
でもまあ…意外と、そういう感じなんだって思った、今
月
…河本、くん…
月
(この人も、意外とわたしのこと…気づいてくれる)
河本くん
…アンタはさー
河本くん
好きなの?会長のこと
月
………え?
唐突だったから、答えられなかった
なんて答えたらいいんだろう、なんてまた正解を探してしまう
月
(わたしの、気持ちは───…)
月
好き────…
月
月
…には、まだ、なりきれてない、と思う
河本くん
!
月
わたしの知らないあの人を知って、どうなるかなんて…分かんないよ
月
(椿ちゃんがわたしのこと、ぜんぶ含めてわたしだって言ってくれても)
月
(わたしは───)
月
まだぜんぶ、陽くんのこと知らないから
河本くん
(…意外と、しっかり……いや、ずっしりしてんだな)
河本くん
(我が強いっつーか)
河本くん
(…やっぱ難航不落じゃんか)
河本くん
(会長がオトせない女なんて誰がオトせんだよ)
月
(好きになりきれてない…か)
月
(自分でもびっくりのセリフだ)
月
(……家族、みたいだった)
月
(うちはお父さんがいないから)
月
(お母さんがずっと働いていて)
月
(その中で、あたたかい幸せをくれたのが────…陽くん)
月
(好き、とかそういう感覚なのかは、分かんない)
月
(陽くんのあざとさにドキドキするのは…これは、恋なのかな)
月
(やっぱまだ、なんも分かんない)
月
…え、椿ちゃん!?
椿ちゃん
夜にごめんねー!
月
ううん、どうしたの?
椿ちゃん
それがさ…うち、思い出したことがあって
月
思い出したこと…?
椿ちゃん
月にどんな月でもいいなんて言ったのに
椿ちゃん
そういえばうち、前にほんとの月じゃない!みたいなこと言ったよね!?
月
ああ…あれ
椿ちゃん
矛盾してんじゃんね!?!?
月
……え?
椿ちゃん
あー…だからっ!気にしなくていーから!
月
う、うん…?いきなりどしたの、そんなこと明日でも───
椿ちゃん
椿ちゃん
…今日言ったこと
月
…うん?
椿ちゃん
こじ開けるためなら、本人にちょっと無理させても、吐かせる
椿ちゃん
だってうちの友達はみんな…そうして仲良くなったら、幸せそうに笑うから…!
月
!
月
(椿ちゃんは何も、ただ仲良くなるためにやってるんじゃない)
月
(みんなを見て、必死で明るくしようとしてる)
椿ちゃん
そう、思ってたの
椿ちゃん
でもうち、いつからか…違った
椿ちゃん
月は月なりにうちのこと好いてくれてるし、これ以上はうちがどうにかしようとするべきじゃなかった
椿ちゃん
たぶん、出しゃばって余計追い詰めたと思った
椿ちゃん
だからもう、嫌だったら詮索しない!言いたいときに言ってくれりゃいいから!
月
…
椿ちゃん
月?
月
ありがとう、椿ちゃん
月
…ほんとにたくさん、私のこと考えてくれて…
月
はじめて、だったの、ちゃんと陽…会長以外の友達ができるの
月
だから心の準備、させてね
月
…ぜったい、椿ちゃんに向き合うから
椿ちゃん
気にしないでよねーっ?
椿ちゃん
うちだって、こんなちゃんとうちのこと見てくれんの初めてでさ
椿ちゃん
だから十分、向き合ってくれてると思ってるから!
月
(…わざわざ、そんなこと言いに来てくれるなんて……)
月
(椿ちゃんはやっぱり、いい子だ)
月
(…でも───)
だからもう、嫌だったら詮索しない!
月
(なんで少しだけ、寂しいような気もしたんだろう)
月
(わたしはどう、なりたいのかな)
好かれていたい
わたしのこともっと知ってほしいし椿ちゃんのことも知りたい
…じゃあ、なんだってはっきり言えばいい、だけなのに