驚いて振り返ると、 先生は あっ と申し訳なさそうに すぐ手を離した。
そして、眉を顰めながら口を開く。
永
悪いが、あれは受け取れない
香織
あれ?...あっ、電話番号のことですか?
香織
全然!無事かどうかがほんとに心配で、
香織
感謝を伝えたくて...
香織
本当にありがとうございました
香織
怖いこととか、無かったですか?
永
ある訳がない
香織
良かった...
永
じゃあ。
香織
はい!じゃあ、失礼します!
こく、と頷いて、 女子達の群れ...いや、校門へと走っていく後ろ姿を見つめながら、
(めっちゃカッコイイ...)
ということだけを考えていた。
香織
ほんとごめん!1人にしちゃって。
咲良
ぜーんぜん!にしても、知り合いなの?
咲良
腕引っ張っていくの、映画のワンシーンかと思ったよ。
香織
だよね、私もキュンキュンしちゃって・・・
香織
ゴホン。
香織
この前道端で会ったことがあってね。
香織
それで久しぶり〜っていう会話を。
咲良
ふうん、、道端で会っただけであんなに激しく引っ張られるもの?
香織
う...ま、まあ...ね、
咲良
ていうか、お巡りさんとか言ってなかった?
香織
(げっ)
香織
あー、、
香織
私の大好きなお巡りさんに顔が似てたの!
咲良
ふうーーん
香織
ほ、ホントだってば!
咲良
ふふ、なら良いわ。
咲良
今日、どこ行く?カラオケ?
香織
カラオケ!いいね!!
その日は遅くまでカラオケで歌い続け、 疲れでぐっすり眠った。
香織
(月、水、金の18時から、、だったよね?一昨日振り...)
怒られそうな気はしたが、 どうしても会いたくて来てしまった。
顔を見るだけで良い。
自分でも気持ち悪いことをしているな、と思いつつ。
香織
居ない...
誰が居ないんです?
香織
きゃっ!!びっくりした、、
誰か探してますか?
香織
あ、はい、永先生を・・・
随分奇抜な服を着ている。 生徒ではないみたいだ。
ああ!今日は農園で水やりをされてますよ。
香織
水やり!
先生が水やりをしているシーンを想像してみると、何となくジワジワきた。
農園はすぐそこです。案内しましょうか?
香織
本当ですか?!
ええ。こちらです。
香織
(優しい人が居て助かった・・・)
学生
ねえせんせえ!
永
はあ...
学生
せんせってば!あの子、一昨日の子じゃない?
学生
あ、ほんとだ。
女子生徒が指さす方向に視線を移す永。
学生
あの子誰と喋ってんの?
学生
え、やば。ヤバい子じゃん
永
・・・?
誰かに笑いかけるようにして、角を曲がっていく香織の姿を 永は不思議そうに見つめていた。