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嫌いだったあなたへ

1 - 嫌いな先生

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2025年07月19日

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上堀 登代子 (先生)

小斎、また髪が肩についてる。校則、守りなさい!

朝のHR直前、教室に響いたのは甲高い女の声だった。

その声の主は──上堀登代子。

この高校の国語教師で、50代後半のベテランだ。

彼女は、男子生徒には驚くほど優しく、女子生徒には異常なほど厳しい。

中でも、小斎茄奈に対しての当たりは露骨だった。

小斎 茄奈

またって言われても、ちゃんと結んでるのに…

茄奈はうつむきながら、髪ゴムを強く結び直す。

視線の先には、茶髪がふわふわと肩を覆う男子がいる。

上堀先生は、その男子には何も言わない。

男子生徒

俺、今日寝癖すごくてさー。ま、別に注意されないけど?

男子が軽く笑い、茄奈はその横顔に怒りを向けることすらできない。

これがこの学校の“日常”だった。

加柴 沙里

茄奈、大丈夫?

ぽんっと肩を叩いて声をかけてくれたのは、加柴沙里。

茄奈の幼なじみで、誰よりも信頼できる親友だ。

小斎 茄奈

…もうさ、上堀先生にだけ天敵認定されてるって感じ

小斎 茄奈

私、何したんだろ

加柴 沙里

存在してるだけで怒られるタイプだよね…ある意味才能

小斎 茄奈

笑えないし

加柴 沙里

ごめん、ごめん。でもほんとムカつくよ、あの人

沙里のさりげない共感は、茄奈の中の苦さをほんの少しだけ溶かしてくれる。

上堀先生に対する不満は、積もりに積もっていた。

体育祭で応援団に立候補したときは「あなたには向いてない」と冷たく言われ、

提出物が一日遅れただけで放課後に呼び出されて説教。

それでいて、男子生徒の失敗には笑って済ませる。

──そんなに私のことが嫌い?

何度、心の中でつぶやいたか分からない。

茄奈はただの高校生。抗う力なんてなかった。

それから数日後のある放課後。

いつものように教室で沙里とおしゃべりしていた茄奈に、突然の速報がスマホに届く。

画面を見た茄奈の指先が、ふるふると震えた。

小斎 茄奈

…え?これ、うそ…

何かの間違いじゃないかと願った。──いや、違う。

心のどこかで、これを“願っていた自分”に気づいてしまった。

小斎 茄奈

…マジか。死んだの…?

呆然とつぶやくと、沙里がそっと茄奈の手を握った。

加柴 沙里

…大丈夫?

茄奈は答えなかった。ただ──こう思ってしまった。

小斎 茄奈

(…やっと、自由になれる)

罪悪感は、なかった。

むしろ、世界が少し明るくなったような気さえした。

茄奈の高校生活は、そこから変わった。

朝、教室に入っても叱る声はない。

校則チェックも、理不尽な叱責も、影のような圧力も──すべて、消えた。

小斎 茄奈

(生きやすい。めちゃくちゃ、生きやすい…)

初めてそう思えたとき、茄奈は少しだけ笑った。

だが──

そんな“平穏”は、そう長くは続かなかった。

菅岡 奈名子

今日からこちらで教育実習生をさせていただく、菅岡奈名子です

菅岡 奈名子

よろしくお願いします!

そう自己紹介をしたのは、白いブラウスに落ち着いたロングスカートを着た、若い女性だった。

柔らかく笑い、穏やかに言葉を紡ぐ彼女に、教室は一瞬で和んだ空気に包まれた。

小斎 茄奈

(…なんか、いい人そう)

そう思った、その直後──

菅岡奈名子の立ち振る舞い、笑い方、視線の動かし方──

どこか、誰かに“似ている”気がした。

小斎 茄奈

(…いや、そんなわけ…)

茄奈はかすかに首を振った。だが心の奥に、ざわつきが残ったままだった。

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