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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

その日の放課後

サクラ

うわっ!

サクラ

ま、また……!

サクラ

授業受けてる間に、全部通報されてる!

サクラ

表紙も挿絵も、全部画像無くなってる!

サクラ

誰の仕業!?

サクラ

まさか……大和!?

サクラ

あいつ、私が好きなイラストを使うのが、そんなに気に食わないわけ!?

サクラ

私の努力を無駄にしやがって……

サクラ

許せない!

サクラ

サクラ

ムカつくけど、一旦落ち着こう……

サクラ

愚痴ってても仕方ないし

サクラ

全部元に戻さないと

サクラ

また同じイラスト、貼り付けないと……

サクラ

サクラ

ああもう!

サクラ

面倒なこと、させないで欲しいんだけど!

サクラ

てかさ、無断転載とか一々、構ってられなくない?

サクラ

しつこいんだよバーカ!

サクラ

そんなことで騒ぐなら、ネットに載せるなっつーの!

サクラ

皆が楽しめるような物語を作るために、がんばってるだけの人に、どうしてそんなヒドいことができるんだろう!?

サクラ

私の作品で、喜んでくれる人がいる

サクラ

その人達の為なら、イラストなんて何を使ったっていいでしょ!?

サクラ

あれだけたくさんあるんだから!

サクラ

ひとつくらい、いいじゃん!

サクラ

話の内容に合うような絵を、ブラウザから持ってきてるだけなのにさあ

サクラ

なんで私ばっかり通報されるの!?

サクラ

そんな所にイラストを放り出してる、アイツらが悪いんじゃん!

サクラ

私は悪くない!そうでしょ!?

サクラ

そうにきまってるもん!

サクラ

サクラ

そうだ

サクラ

『通報❌』
『通報禁止』
『運営さん大好き』
『運営さん消さないで』

サクラ

……っと!

サクラ

こうしてタグ付けすれば、普通の人ならやらないよね!

サクラ

せっかく見てくれる人も増えてきたんだから、頑張らないと!

意気込むサクラの耳に、大音量のチャイムが突き刺さる。

椅子から勢いよく立ち上がったサクラは、スマートフォンの画面に映る時計の表示に、目を見開いた。

サクラ

やっば!もうこんな時間!

サクラ

今日は藤見沢付属中学との練習試合じゃん

サクラ

ネット張って、ラケットとシャトル出して、それから……!

サクラ

早く準備しないと!

この時、サクラは知る由もなかった

知らないことを知ろうとする その努力を怠った結果……

自らの輝かしい未来に 暗雲を呼び込んでしまったことを

サクラ

サクラ

お母さん、ただいま!

お母さん

おかえりー!

お母さん

手を洗ってうがいしてらっしゃい

お母さん

あと、サクラ宛に郵便来てるよ

サクラ

へ?郵便?

お母さん

そう!『ミケ出版株式会社』ってところから!

サクラ

出版の会社!?

サクラ

(もしかしたら、私の作品を売り出してくれるとか……かなあ!?)

お母さん

とりあえずお手紙、渡しておくから

お母さん

ちゃんと読むんだよ!

サクラ

分かった!

お母さん

それと、あとちょっとでお夕飯……

バタバタバタ! ……ガチャン!

物々しい音を立てて、サクラは自室へ閉じこもる。

靴を玄関に放り出しっぱなしのままにする、行儀の悪い娘に、思わずため息が出るのは……仕方のないことだと言えよう。

お母さん

やれやれ、片付けは後でしてもらいましょうか

お母さん

お母さん

興味を持ったことがひとつあれば、それに向かって全速力!

お母さん

周りなんて気にしない!

お母さん

猪突猛進もいい所だわ、全く

お母さん

お母さん

そういえば

お母さん

ミケ出版って、確か
漫画やアニメの紹介雑誌だったはず

お母さん

それと前のコレは、関係ない……よね?

母の脳裏にこびり付いている、たったひとつの単語。

発信者情報開示請求

サクラはすっかり忘れているが、彼女に差し向けられた手紙は……

このミケ出版からの郵便だけでは、なかったのである。

お母さん

1ヶ月くらい前だったかな……

お母さん

来たのよね、弁護士から!

お母さん

今でもとってあるもの、あの書類!

お母さん

お母さん

そうそう、これこれ!

お母さん

件名からしてもう……身構えちゃうでしょ

それこそずばり……

『発信者情報開示請求』

厳密には『発信者情報開示に係る意見照会書』という、小難しい封書。

それは1ヶ月ほど前に、見知らぬ弁護士により、サクラの母に届いた。

未成年であるサクラの代理人として、ご丁寧に母親へ宛てて……

お母さん

お母さん

あれって確か、インターネットで、誰かに嫌がらせをした人に届く物でしょ?

お母さん

来たお手紙を見る限り、サクラが何かやったのかと思ったけど……

お母さん

あの子に聞いても

サクラ

そんなの知らない!

サクラ

むしろ嫌がらせされてるのは、私の方!

サクラ

私にしつこく絡んでくる奴がいるの

サクラ

きっとそいつの仕業だよ!

お母さん

なんて言うし

お母さん

お父さんかと思っても、単身赴任してる訳だし知ってるはずもないし?

改めて、かしこまった言葉がずらりと並んでいる書類と、向き合うこと10分。

お母さん

要はこう言うことだもんね?

母は考えすぎで熱くなった頭を擦りながらも、この書類の言わんとしている内容の要約を始めた。

プロバイダー

山岡サクラが使用したイラストの作者が、権利を侵害されたと怒っている

プロバイダー

責任を取らせたいので、サクラの個人情報を、イラストの作者に教えていいだろうか。

プロバイダー

2週間以内に同意するかしないか、またその理由を書いて返信すること。

プロバイダー

ただし、2週間以内に返事がなかった場合

プロバイダー

こちらが法律を確認した上で、裁判所と話し合い、イラストの作者に個人情報を教えることもある。

お母さん

お母さん

一応は開示しないことにして、『当人は身に覚えがないと言っている』って書いたけど

お母さん

何か隠し事があるのは、明らかなのよね

お母さん

やっぱり、厳しく問い詰めた方が良かったのかな

―ところ変わって、サクラの自室―

サクラ

こうなったら宿題なんて後回し!

サクラ

今はこっちが優先、優先!

バリバリと乱雑に封筒を開け、サクラは分厚い紙の束を取り出そうと、指を伸ばす。

サクラ

うわっ、分厚い!

サクラ

封筒から上手く出せないよ!

サクラ

きっとそれだけ、私に書いてほしい小説があるのかな!

サクラ

もしかしたら、もしかしたら……!

サクラ

サクラ

『ちぇりぃさん、君の作品は素晴らしい!』

サクラ

『こんな文章をかけるなんて、まさに天才だ!』

サクラ

『君には是非、うちの会社でクライムロックの小説を書いて欲しい!』

サクラ

サクラ

なんて!

サクラ

クライムロックの公式から、こんなこと、言われちゃったりして!

サクラ

さあて、なんて書いてあるのかな!

サクラ

えっと……

請求書 山岡サクラ様

サクラ

は?

サクラ

なんて読むの、これ?

下記の通り、当社で作成された『クライムロック』のイラストの使用料を、ご請求申し上げます。

サクラ

検索したら、『せいきゅうしょ』って読むらしいけど

サクラ

なんでこんな物が?

サクラ宛に届いた、 出版会社からの手紙。

それはサクラが使い続けたイラストの使用料の請求書だった。

通報を受けてもなお、何度も何度も自分の夢小説に掲載し直した、イラストの……

サクラ

……クライムロックの画像かあ

サクラ

確かに私の夢小説の表紙や、挿絵に使ってるけどさあ

サクラ

ちょっとこれは、よくわかんないよ

30件をゆうに超える請求書は、細かな字で途方もない金額を並べ立てている。

傍から見れば、あまりの金額の高さに腰を抜かすだろう。

だが……

サクラ

このサイトから、イラストなんて買った覚えなんてないんだけどなあ?

サクラ

だって、そんな事しなくても、インターネットにいっぱいあるし

サクラ

あの画像って、そこから『拾った』だけだし

サクラ

間違いで来ちゃったとか?

無断転載の字すら読めないサクラが、正しく内容を理解できるはずもなかった。

サクラ

サクラ

いや、確実に私の名前だ

サクラ

ヤバ、どうしよう!

サクラ

お母さんに聞く?

サクラ

でも、前に来た手紙のことで、しつこいくらい色々聞かれたし……

サクラ

またなにかあったら、ネット禁止になっちゃうかも!

サクラ

それでスマホが使えなくなったら嫌だ!

サクラ

サクラ

きっと間違いに決まってる!

サクラ

無視、無視!

サクラ

お母さんには『イラストの宣伝だった』って言って、誤魔化せばいいよね!

サクラ

うん、ナイス言い訳!

サクラ

ご飯食べに行こうっと!

ゴミ箱に捨てられた請求書の束が、部屋を出ていくサクラを見送る。

無視するな

とでも言うかのように。

バイバイ・ブレザー

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