救った人（かげよこ）

俺は、いったい何しているんだ

幼少期のあんなトラウマで

あんなことで

逃げてきてしまった

結局俺は

一生あいつらに邪魔されて生きていくのだろうか

だけど

怯えてしまっているのもたしかだ

あの頃より

小さく見えるこの横断歩道では

色々な嫌な思い出がある

影山くんはつよいと言ってくれるけど

俺は弱いよ

弱くて臆病なんだよ、

影山くんが、

もし、覚えていたらどうだっただろう

いや、なに妄想してんだよ

覚えてないことはしょうがないんだから

でも、

影山くん、罪深いよ

あれ覚えていないなんて

ハンカチが横断歩道に落ちてしまった

拾いに行こうとすると

トラックがこっちに来ていた

え、どうすればいい？

俺、死ぬの？

怖い、嫌だ

影山くんの声がした

勢いよく歩道に倒れた

あ、俺、死んでない

いや、

ストレス？

大丈夫だよな横原

俺と同じように忘れないよな、

かげやまくんは笑いかけてくれて

目を合わせてくれた

予想外だった

出逢って少ししか経ってないのに

性別なんてどうでもいい

目を見て話してくれて

笑って、名前を呼んでくれる

かげやまくんしかいないよ

俺とは真反対のキラキラした人だって

悩みだって、辛いことだってある

かげやまくんは

それを教えてくれた大切な人

深く、眠っていた気がする

目を開けると

大切な人がいた

あれ、

名前、なんだっけ

大切な人

俺を助けてくれた人、

だけど、

その概念だけで

この人のこと全然分かんない

彼は驚いた顔をして固まってしまった

大切な人、忘れてはいけない人

忘れられない人、

のはず、

なのに誰だっけ

彼は慌てたように病室を出ていった

なんで、

なんでなんだよ

俺、思い出したのに

嫌だ、絶対に

横原に忘れられたくない

横原、思い出してよ

そうだ

横原はずっとこんな気持ちだったんだ

俺だけ分かんないの、？

こんなにも、苦しいなんて

横原、ごめんな

こんな苦しい想いさせてたんだな、

先生が出ていって

横原と2人きりになった

どう、切り出せばいいのだろう

なんで敬語にしてんだよ、

まるで横原じゃないみたいだ

かげやまたくや、

思い出せない

でも、

黒く覆われているだけで

彼がいるのはわかる

友達、

彼とは友達だったのだろうか

分からない、

思い出せない

頭が痛い、、

影山さんは病室から出ようとして

俺は、何故かこう言っていた

俺の本能が

そう言っていた

深い意味は考えることが出来なかった