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井上毅
本当にもうダメかと思ったよ…
早坂弘樹
土方さんには感謝の気持ちで一杯だな
早坂弘樹
もし見付けてもらえなかったら
早坂弘樹
俺たち今頃山の中で飢え死にしてたかもしれないな
竹内登
あぁ、かもな
早坂弘樹
確か猟師だって言ってたっけ？
竹内登
ハンター歴10年だからベテランだろう
早坂弘樹
10年か…よかった
井上毅
何故？
早坂弘樹
いや、もし獲物と勘違いされて撃ち殺されてたらって思ってさ(笑)
井上毅
井上毅
ところでこれからどうするんだ？
竹内登
とりあえず今は休ませたもらおう
竹内登
遭難して体力も消耗してるわけだし
井上毅
俺は早く帰りたいんだけど…
早坂弘樹
なにか大事な用事でもあるのか？
井上毅
そういうんじゃないけど、予定外なことは苦手なだけだ
竹内登
現状じゃ無事に下山は出来ないだろう
竹内登
しばらくはここにいよう
こうして、俺たちは土方さんの山小屋で休ませてもらうことになったのだが…
翌日
早坂弘樹
井上を見なかったか？
竹内登
いないの？
早坂弘樹
何処にもいない
竹内登
あいつまさか独りで山を下りたんじゃ…
早坂弘樹
無茶な
土方隆平
土方隆平
二人ともすまない
竹内登
え？
土方隆平
井上さんだが、なにか急いでいたようだったから
土方隆平
妻の縫子に案内させて下山させたよ
竹内登
あぁ、そうでしたか
早坂弘樹
だけど一言くらい俺たちに声を掛けてもなぁ…
土方隆平
申し訳ない
土方隆平
とにかく急いで下りたさそうだったものでね
早坂弘樹
土方さんに文句なんてありませんよ
早坂弘樹
そもそも僕たちが遭難したのが原因ですし(笑)
土方隆平
どういう経緯でS山に？
竹内登
ただの憂さ晴らしです
竹内登
僕たち三人とも日頃の仕事のストレスが溜まって
竹内登
解消としてS山登山が候補に挙がったんです
土方隆平
それにしては随分と軽装な気がするんだが…
竹内登
そうですね(笑)
竹内登
山を甘く見ていたと反省しています
土方隆平
土方隆平
君たちは明日なにか用事があるのか？
竹内登
いえ、特には
早坂弘樹
今は有給消化中です
土方隆平
それなら今日はここで休んでいくといい
土方隆平
実は今日大きな獲物を捕まえてね
土方隆平
家内が料理してくれたんだが大きくてね
竹内登
いいんですか？
土方隆平
もちろん
早坂弘樹
それじゃあお言葉に甘えよう
竹内登
そうだな(笑)
その日の夜 23:30
早坂弘樹
土方夫妻っていい人だな
竹内登
そうだな
竹内登
遭難した俺たちを助けてくれた上に食事まで
早坂弘樹
井上のやつも不運に(笑)
竹内登
え？
早坂弘樹
縫子さんの手料理、すごい美味かっただろ？
早坂弘樹
おまけに豪勢だった
早坂弘樹
それを逃すなんて井上も可哀想なやつと思ってさ(笑)
早坂弘樹
どんな用事か知らないけど焦って下りなくてもよかったのにね
竹内登
まああいつにとっては大切な都合だったんだよ
早坂弘樹
早坂弘樹
ところでなんだと思う？
竹内登
なにが？
早坂弘樹
料理される前のあれの正体、どんな獲物だろう？
竹内登
さあね(笑)
竹内登
なにであれ、美味かったから俺はなんでもいいよ
翌日
早坂弘樹
ちょっと妙だぞ
竹内登
妙？
早坂弘樹
さっき井上の奥さんの眞紀子さんから電話があったんだけど
早坂弘樹
井上のやつ、まだ帰ってないらしいんだ
竹内登
そんなバカな
竹内登
昨日下山したならとっくに着いてる筈だろ？
早坂弘樹
そりゃそうだけど…
00:12
早坂弘樹
おい、竹内
竹内登
……？！
早坂弘樹
起きろ
竹内登
何時だと思ってるんだよ…
早坂弘樹
早くここから出るぞ
竹内登
は？
早坂弘樹
早坂弘樹
ここにいちゃヤバいんだ…！
早坂弘樹
早く逃げないと…
土方隆平
そうはいかないよ
早坂弘樹
！！
竹内登
！！
2日後
柿沼
いやー助かりましたよ
柿沼
急な霧で迷い込んでるところを助けて頂いて
土方隆平
山の気候は変わりやすいからね
土方隆平
ゆっくり休むといい
土方隆平
先日大きな獲物を捕まえてきてね
土方隆平
よかったら今夜の夕食に君も加わるといい
柿沼
よろしいんですか？
縫子
遠慮なさらないで
柿沼
それじゃあお言葉に甘えて…
柿沼
柿沼
随分と沢山の剥製が飾ってありますね
柿沼
これ全て土方さんが仕留めた獲物ですか？
土方隆平
もちろんだよ(笑)
柿沼
最近はなにを捕まえたんですか？
土方隆平
大したものじゃないが苦戦したね
土方隆平
二頭だったんだが中々しぶとい上に鳴き声がうるさい
土方隆平
その代わり我々にとっては希少価値な獲物だ
柿沼
そうなんですか～
土方隆平
ちゃんと別の部屋にそいつの剥製も飾ってあるんだ
土方隆平
生憎見せはできないけどね
土方隆平
その代わり今晩はそれを味わわせて上げよう
縫子
私が調理したのをね
柿沼
楽しみにしてますよ(笑)
2018.08.12 作
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