テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
546
209
35
#さしすせ組
静かな高専の医務室。 白いカーテンを通り抜ける透き通った秋の陽光が、室内を柔らかく照らしていた。規則正しく鳴り響く心電図の微かな電子音と、時折窓を揺らす心地よい風の音だけが響いている
神代翠
重い瞼を緩やかに開くと、見慣れた天井が視界に飛び込んできた。 神代翠は小さく息を吐き出し、ゆっくりと意識の混濁を晴らしていく
神代翠
体を起こそうと腕に力を入れた瞬間、右手にきゅっと強い温もりと重みを感じて動きを止めた。 視線をベッドの脇へと落とすと、そこにはパイプ椅子を引き寄せ、翠の右手を両手で大切そうに包み込んだまま、突っ伏して眠っている乙骨憂太の姿があった
神代翠
小さく名を呼ぶと、乙骨の肩がピクッと跳ね、即座に体が起き上がった。 浅い眠りから目覚めたばかりの彼の瞳には赤く血走り、くっきりと濃いクマが浮き出ている。どれほどの時間、ここで彼女の手を握りしめたまま祈るように寄り添っていたかが一目で分かった
乙骨憂太
乙骨の顔が一瞬で歓喜に歪み、握られた手にぐっと強い力がこもる
神代翠
乙骨憂太
そう語る乙骨の声は低く沈んでいた。彼は繋いだ手にすがりつくように額を当て、押し殺した声で呟く。
乙骨憂太
神代翠
乙骨憂太
静かな、けれど今まで聞いたどの言葉よりも重い拒絶の言葉が、乙骨の口から漏れ出た
神代翠
乙骨はゆっくりと顔を上げた。その双眸には、いつもの気弱な後輩の面影など微塵も存在しない。 真っ直ぐで、歪なほどに一途で、決して引き下がるつもりのない特級呪術師としての瞳が、翠の顔を捉えて放さなかった
乙骨憂太
乙骨はパイプ椅子から立ち上がると、ベッドの縁に両手をつき、じわじわと翠の顔へと顔を近づけていく。逃がさないと言わんばかりの圧迫感と至近距離。 不意の急接近に、翠の頬がじわじわと赤く熱を帯びていく
乙骨憂太
神代翠
乙骨憂太
乙骨憂太
乙骨憂太
乙骨憂太
神代翠
神代翠
乙骨憂太
神代翠
医務室を包む澄んだ秋の光の中で、二人は確かな温もりを確かめ合っていた。 痛みを肩代わりしてきた『代弁者』は、もう一人で傷を背負う必要はない。背中を託し合える最強のパートナーと共に、新しい明日へと歩み出していく――
コメント
1件
うわあ……めっちゃ良かった……! 乙骨くんの「よくないです」からの一連の告白、ガチで心臓に来たわ。普段あんなに気弱なのに、この場面だけは絶対に引かない“特級呪術師”の目をしてて、そのギャップにやられた。「先輩のこれからの傷も、全部僕に預けてください」って台詞、正直ノックアウト。自分の能力で傷を引き受けてきた翠先輩が、ようやく誰かに甘えていいって思えたところも含めて、関係性の成長が美しいエピソードだった🔥