アストレス
ペットは禁止だからな
リサ
ペットじゃありませんよ、師匠。これは精霊です
アストレス
まあ、そんなに違いはない。すぐに離してやりなさい
アストレス
はい、わかりました
リサが渋々猫を手放すと、
猫 精霊
ニャー
一声鳴いて地面に座り込んでしまった。
しかし、
僕たちが歩き出すと、後ろからテクテクと猫がついてくるのが分かる。僕がやや早歩きをしても、その猫はしっかりとついてきた。
アストレス
街までついてくるつもりか?困ったな
リサ
可愛いじゃないですか
街の入り口に差し掛かると、不意に猫は足を止めた。背後から猫の甲高い鳴き声が聞こえるが、振り返ることなく、
アストレス
僕はリサの肩を軽く押して前へ進ませる。
アストレス
すまないな、精霊に好かれると大変だ。リサ、お前はどうやら魔力に恵まれているようだ
リサ
え、そうなんですか?てっきり師匠は猫が苦手なんだと思っていました
アストレス
いや、そんなことはない。ただ…危険なことには近づけたくないんだ。それが正直なところだな
街に入ると、
他の街とは違う重々しい雰囲気が漂っていた。活気はなく、人影もまばらだ。
店先に並ぶ商品も、どこか貧相に感じられる。
まずは宿屋を見つけることが最優先だ。
リサ
宿屋と書かれていますが、師匠、どうしましょう?これ、もしかして馬小屋みたいじゃ……
アストレス
あっ!
思わず声が漏れた。
リサが失礼なことを口にしそうだったので、慌ててその言葉を飲み込ませる。幼い子供に馬小屋を宿屋と混同させるわけにはいかない。
僕たちはそのまま古びた宿に足を踏み入れた。
確かに年季の入った建物だが、泊まれないことはない。
ただ、あたりには掃除されていない埃が舞い、壁の隅には蜘蛛やムカデなど、害虫がひっそりと潜んでいた。
店主
宿に泊まるなら一泊、銀貨三枚だ。子連れなら銀貨十枚。どうする?
店主
店主は、太くて整った顎髭を撫でながら、不機嫌そうに言った。
おかしい。完全に子連れ扱いされて、しかも銀貨の値段が倍になっている。