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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 黄様若干翠様に嫌われ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ パクリ禁止⚠️
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8,蝉声の記憶
夜の作業室は、世界の終わりのように静まり返っていた。
蛍光灯の白が紙の上を刺すように照らし、散乱する資料の端をゆらゆらと光らせている。
須智は机に肘をつき、無言のまま書類を見下ろしていた。
《被告人:日向美琴》
――何度も、何度も見た名前。
なのに、目をやるたびに胸の奥が軋んだ。
声は掠れて、自分でも聞き取れないほどだった。
分厚い記録の束。
供述書、目撃証言、鑑識報告書。
どの紙にも、決定的な証拠が並んでいる。
それなのに、心のどこかが叫んでいる――違う、と。
椅子に深く腰を沈め、須智は天井を仰いだ。
白い蛍光灯が目に沁みる。
呼吸を整えようとした瞬間、耳の奥でふと、ジリジリ……と音がした。
――蝉の声。
季節外れのその音に、須智は眉を寄せる。
ここは真冬の拘置所。
窓の外には雪が降っているはずだ。
だが確かに、あの懐かしい音が聴こえた。
手元の資料を閉じた。
静寂の中に、さらに濃い夏の気配が混ざる。
頭の中に、遠い日々の風景が浮かび上がっていった。
――あの日も、蝉の声がうるさいほどに響いていた。
須智の声を振り切って、美琴は細い木の幹にしがみついていた。
笑っている。
自慢げに、眩しいほどの笑顔で。
そして――。
泣きそうな声。
須智はため息をつきながら、ゆっくり木に近づいた。
腕を伸ばし、美琴の身体を受け止める。
軽い体が胸にぶつかり、蝉の声が遠くで響いた。
美琴は須智の服をぎゅっと掴んで泣いた。
その肩を、須智は笑いながらぽんと叩いた。
美琴は嬉しそうに笑った。
その笑顔が、太陽みたいだった。
そのあとも、思い出は次々に溢れ出した。
夏祭りの夜、りんご飴を分け合ったこと。
冬、こたつで宿題を教えたこと。
「わかんないよー!」と唇を尖らせる美琴に、呆れながらも笑って答えた。
――血は繋がっていなくても、家族みたいだった。
弟みたいで、守らなきゃって思ってた。
だけど、いつからだろう。
須智が警察学校に入り、美琴が高校生になってから、会話は少しずつ減っていった。
忙しい。
正義の道を進むためには、感情に流されるな。
そう教え込まれた。
“冷静であれ、感情は判断を狂わせる”
それが、警察官としての在り方だと信じていた。
けれど――。
机の上のスマホが震える。
画面には、もう繋がらない番号。
そこに残されたトーク履歴を、須智は指でなぞった。
——その「いつか」は、二度と来なかった。
目の奥が熱くなる。
呼吸が浅くなっていく。
視界の端で、蛍光灯が滲む。
かすれた声が零れる。
資料の端に、涙が落ちてにじんだ。
正義を信じてここまで来た。
悪を裁き、法に従い、人を守る。
それが須智の生き方だった。
なのに、気づけば――。
守るべき“弟”を、法の名のもとに傷つけていた。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
作業室の時計はいつの間にか止まっていた。
外では雪が静かに降っている。
それなのに、また――あの声が聴こえた。
ジリ……ジリジリ……
今度は、はっきりと。
耳鳴りではない。
確かに、夏の蝉が鳴いている。
須智は立ち上がり、窓際に歩み寄った。
ガラスの向こうは白銀の夜。
だが目を閉じれば、蝉時雨の下に青空が広がる。
木の上で笑う幼い美琴。
それを見上げる自分。
――“すちくん、ずっとお兄ちゃんでいてね!”
記憶の中の声が、耳の奥で反響した。
堪えきれず、須智はその場に膝をついた。
机に額を押しつけ、息を殺して泣いた。
涙が止まらない。
何年も忘れていた感情が、一気に溢れ出した。
警察官としての理性が、兄としての心を押し殺してきた。
だが、その理性の下で、ずっと疼いていた罪悪感が、今ようやく顔を出したのだ。
須智は、震える指で一枚の資料を破った。
《被告人》という文字だけを、そっと破り取る。
代わりに、心の中で呟く。
――俺の弟。
雪の音が遠くで溶け、蝉の声が一瞬、静かになった。
その静けさの中で、須智は目を閉じた。
その声は誰にも届かない。
けれど、確かに胸の奥で何かがほどけた気がした。
涙の跡を残したまま、須智はゆっくりと立ち上がる。
夜明け前の空が、わずかに青く染まり始めていた。
外の雪が光を受けて淡く輝く。
まるで、それが——遠い夏の蝉声を包み込むように。
8・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡90
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コメント
7件
お久しぶりのコメント&別垢でのコメント失礼します!!『しょう みのりす!!!』ってアカウント以前コメントさせて頂きました! ほんとに好きすぎる、🫶🫶子供の頃に見る世間、警察官は正義のヒーロー的な感じに見えるけど、大人になってしっかり見ると、大人の事情や、国の言葉を従わせてるだけに見えるよね....、 冤罪はほんとに悲しい、いつか罪が晴れるといいな、!!
守るべき“弟”を、法の名のもとに傷つけていた。 てところでグッときた、!これからの翠くんの立ち回りが気になります!
みこちゃんとすちくんに縁があったなら、こさちゃんにもなんかありそう……?? 続き待ってる!